JUNE . 2020

 新型コロナをめぐる米中の確執が激 化し、世界の対中批判が高まる中で、 Google 傘下の巨大動画共有サイトであ るYouTube が、中国を批判する動画や コメントを即座に削除している問題が 複数のメディアで報じられ、疑問視さ れている。

 報道によると、中国共産党とそれを ネットでプロパガンダする「五毛党」に 言及した動画や、その動画のコメント欄 に投稿されたコメントなどが、瞬時に 削除されているという。たとえ両者を 賞賛するコメントであっても削除され ているというから、明らかに異常事態 であり、作為を感じさせる。この事態は、 コロナウィルスを巡る中国への世界的 批判と、アメリカとの対立が強まった5 月から顕著になっているという。  アメリカで中国共産党への反対運動 を展開する曾錚氏は「15 秒足らずで共 匪(共産党ゲリラ)というコメントが 削除された」と、自身のツイッターで 公表したことから、明るみに出た。

 これに続いて、VR 企業のオキュラス 社と自動警備システム会社アンドリル 社の創業者であるパルマー・ラッキー氏 も「五毛党について書いた私のコメン トが、すべて削除された。Google の誰が、 中国で禁じられている米国のYouTube に投稿された米国の動画に対する米国 人のコメントの検閲をしようと決めた のか」と、批判を込めて疑問を呈して いる。

 YouTube のこうした不審な運営は、 実は日本では数年前からネットユー ザーの間では報告されていた。特にヘ イトスピーチ対策と思われる検閲削除 が頻繁に見られ、中国や韓国の抗日、 反日政策を批判する配信者の動画単体 だけでなく、アカウントそのものが削 除されたユーザーも少なくない。また、 動画に配信された広告がはく奪された ために、収益を奪われた配信者もいる。 さらには、一時期は「コロナ」と発音 しただけで削除されたり、近代史を紹 介したドキュメンタリーまでもが削除 されたという。

 ところが、一方の韓国人ユーザーに よる反日動画などは野放しであるから、 日本人ユーザーの怒りは収まらない。こ のため、利用歴の長いユーザーなどは、 アカウントを複数に分けたり、発言に 当たっては「コロナ」を信号音で隠す など、一般的なニュース解説に等しい 動画においても表現に苦慮している。

 これに対して、Google 側は「規約違 反を審査して削除する自動化モデレー ションシステムのエラーによるもの」 と、曖昧な弁解で濁している。同社の スポークスマンによると、「感染拡大 が本格化した2020 年3 月から、一部 を除く北米の全従業員の勤務態勢をリ モートワークに切り替えたため、コン テンツの監視もAI のモデレーションへ の依存度が高くなっている。その結果、 人間による監視が減ることで、誤って 削除されるコンテンツが増えることは 承知しており、間違ったポリシー違反 の判断が増えることも予想されていた」 として、悪びれる様子もなく語ってお り、中国だけを優遇するかのような対 処への疑問は解消されていない。

 目下のところ、中国に対しては世界 がパンデミックの法的責任を追及する 姿勢で、すでに損害賠償額は1 京1,000 兆円を超えている。中国政府としては、 何としても批判と引責をかわしたいと ころで、特にネットでの風評には神経 を尖らせている。そうしたところへ、 YouTube による中国への忖度が露呈し ている運営から、「コロナに付け込んで、 再び中国市場への参入を狙っているの ではないか」と見られている。

 YouTube は、いまや全世界での月間 利用者数が20 億人を数える最大のSNS となっている。だが、こうしたユーザー の不利益をもたらしたり、その正当性 が不審視される運営が続けば、トラン プ氏が中国寄りのWHO を批判して脱退 を示唆したように、世界中のユーザー が不信感を抱いて、他のSNS へと流出 することも考えられるだろう。




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