June.2009


 内閣府が5月に発表した4月の景気ウオッチャー調査の結果によると、現状判断DIは3月の28.2から、5.8ポイント上昇して34.2となっている。最低は、原油高と穀物相場高騰にみまわれた昨年12月の15.9で、11月の21.0から5.1ポイントも低下したが、1月からはサービス関連や飲食業を除いて、全般に着実な伸びを示している。大和総研では、在庫調整の進展による生産計画の改善、中国の電力生産量の底入れ、我が国政府による景気対策の策定などによって、景気回復のための下地が出来上がってきた結果と分析している。
 問題は今後の動向だが、2〜3ヶ月後の判断DIは、3月の35.8から3.9ポイント上昇し、39.7となった。1月と2月の現状判断でやや足踏みをしたサービス関連や飲食業も含めて、全てのDIが上昇を示している。これを以て将来を楽観するのも早計だが、景気対策の効果は地道に現れ、人々の展望を明るくしていると見て良いだろう。
 このように、やや明るい展望が見え始めている一方で、新型インフルエンザの世界的蔓延にともなう商店やレストランの休業、イベントの中止や渡航中止といった停滞が、ボディーブローとして効いてくることも予測される。弱毒性で症状が軽く、すでに回復に向かっている人々もいるため、地域によっては早々と回復宣言し、こぞってマスクを外してしまう国もあるが、フェイズ5が引き下げられたわけではなく、死亡者がいるのも現実で、本格的な回復宣言の見通しは立っていない。このため、個人消費の本格的な回復の見通しも不透明で、懸念材料にはなるだろう。
 それでも、企業の経済・生産活動を合わせたGDPベースで見た場合、大和総研の観測によると本年4〜6月期以降からプラスに転換し、下期以降からは公共投資による下支え効果も見込まれるため、今年度はプラス成長が続くという。そして、来年度以降からは本格的な景気回復が期待できると結論している。
 とかく政府の景気対策については、否定的で悲観的なあら探し報道が目立つが、景気は世論のムードや印象にも影響されるため、強いて水を注すような論調は控えるべきだろう。
 年内に予定される衆院選では、民主党の小沢代表と自民党の鴻池官房副長官の辞任により、与野党ともに変な意味で五分五分の瑕疵状態であるから、一時は射程外へ逸れたと思われた政権交代も、再び射程内へ入ってきた。景況の好転と、その勢いに乗じた政権交代のドラマが見られれば、政府の人員だけでなく国民のマインドもさらに刷新されるだろう。
 そこで重要なのは、大規模な公共投資の受け皿となる建設業界のマインドである。過去の不当廉売のツケを口実に、世間の気運や潮流を無視して、いつまでも不況風を吹かし続けるなら、下期以降に期待されている下支え効果も期待できなくなる。それによって経済の歯車が大きく狂うことにもなれば、今度こそこの業界は景気対策の受け皿ではなく、不況の元凶と判定されることになるだろう。



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