November.2006

世界の不良児・北朝鮮が核実験を強行し、国際社会を震撼させた。7月のミサイル実験発射に対する国連安保理決議も何のそので、友好国・ロシアが議長を務めたG8での非難声明もどこ吹く風。友好国・中国の実験中止勧告と、六カ国協議への復帰要請などもほとんど無視。まして日朝平壌宣言など、くそくらえといわんばかりの態度で、ひたすら孤立化の道を歩んでいる。
 一部には、NPT脱退のみに止まらず、国連からの脱退の可能性を指摘する見方もあるが、仮に反米主義のイランとでも手を組み、ともに国連から脱退すれば、いわゆるかつての「日独伊三国同盟」と似た状況である。当時は、「ゼロ戦」に始まり「核」で終わった。だが、今回はいきなり「核」に始まる。終わりは何になるのかを考えると、世の終末しか見えない。それゆえに、米政府はじめ各国とも、この不良児の扱いに手を焼いてきた。
 北朝鮮の当面の狙いは、突き詰めれば金正日政権の維持と、そのために米政府によるマカオの銀行の口座凍結解除だろう。したがって、金正日総書記の目には、後見人であり六カ国協議議長国である中国も、政権誕生の源となったロシアも、太陽政策でご機嫌を取ってきた韓国も、拉致問題を追及する日本もほとんど眼中にはないのではないか。ゆえにヨーロッパ、ロシア、日中韓など国際社会が、いかに連携を強めて包囲しようとも動じる気配を見せず、またブッシュ大統領がいかに中国を前面に立てようとも、究極的には核を突きつけて脅迫する金総書記と、強固派のブッシュ大統領との二者対決の形へ収斂させようとしている。
 金総書記は悲願達成に向けて、今後はさらにどんな態度を示すのか。ミサイル発射〜核実験とくれば、次は核弾頭のミサイルへの搭載ではないのか。例えばミサイルへの搭載、燃料注入など、核ミサイル発射に至るまでの手順を逐一宣伝しながら実践し、その行為を意図的にアピールするというデモンストレーションに打って出るのではないか。そして、その都度、米政府の反応を観察し、対応を試すのだろう。
 したがって見方を変えれば、これはまさにテロリストと、テロに屈しないアメリカとの、ギリギリの攻防という図式である。まさかとは思うが、各国の経済制裁が、金政権の核武装維持を不可能な状況に追い込むまでに実効を上げるものとならない限りは、金総書記が核ミサイルの発射ボタンに手を置くまで、ブッシュ大統領との攻防が続いていくのではないかとも思える。こうなれば、冷戦時代のキューバ危機どころの話ではなくなる。
 もっとも、大統領改選によるブッシュ後の米政権が鳩派となることを見越し、それまでのやせ我慢であるとする見方もあるが、経済制裁による包囲網の中で、それまで領民の生活が保つのかどうかが問題だ。もっとも、自分の権力体制を護るためには、領民の飢餓状況を恥とも思わず、むしろ国際社会にアピールして人道に訴えるなど、困窮をも逆手に取り、各国のマスコミや世論の情動に訴えるしたたかさもあるので、厄介な相手だ。
 こんなとき、映画007の世界であれば、スパイを送り込み、内部崩壊の秘密工作を仕掛けるところだろうが、現実はそうもいくまい。


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