December.2010


 11月14日投票の地方自治体首長選挙が、福岡市、新潟市、東京都新宿区など各地で行われ、自公推薦、場所によっては民主も相乗りした現職または新人が勝利する一方、政権与党である民主と、かつて連立のパートナーだった社民が支援する候補は軒並み総崩れの結果となった。これはまさに来春の統一地方選の行方と、政権運営の未来像を予言するものと言えよう。
 各地の首長選で特に印象深かったのは福岡市で、政権与党である民主をはじめ、国民新と社民が支持する現職の吉田宏氏を、 自公が支援した高島宗一郎氏が6万票もの大差で下したことである。
 首長の平均的な在任期間といえば、3期12年というのが通例で、それ以上になると多選批判が出始める。逆にそれ以下の場合は、公約の成果がまだ見られないため、地域の有権者も腰を据えて注視している最中であるから、よほどの失政や不正、背信行為がない限りは見限られることもなく、選挙となると現職の強味を発揮するのが通常だ。実際に吉田市長はまだ1期目が満了したばかりであり、公約と政策の真価はこれから発揮されるところであるから、通常であれば「まさかの敗北」と評されるところ。
 直接的な敗因となった争点は、こども病院の人工島移転計画で、これによる通院の利便性をめぐって賛否が二分し、推進派の吉田氏は移転候補地となる東区で辛うじて票を伸ばしたのみで、それ以外の選挙区は軒並み票を失い、計画の見直しを訴える高島氏へと流れてしまったことは大きかった。
 さらに吉田氏にとって痛手だったのは、民主支持層での得票率が52%でしかなく、同じく支持を受けた社民でも、得票率は50%と半分に止まったことだろう。つまり、身内からも見放されたと言うべき結果である。
 これは、先の尖閣諸島を巡る対中外交と、北方四島を巡る対ロ外交の拙さを露呈し、党内外で支持を失った現政権の現況とも合致しているのではないだろうか。韓国G20と横浜APECと、2つの国際会議のために世界の首脳が極東地域に集会するという、イヤでも目立つ国際舞台の上で、醜態をさらけ出してしまったのである。支持率27%は、それに対する失望と、その責任を一職員の映像流出問題にかまけて注意を逸らそうとする姑息な姿勢への批判の表れと言えるだろう。
 さらに言えば、警視庁から流出したテロ捜査情報の流出事件も手つかずのままで、世界にとっては二国間問題である尖閣諸島問題よりは、こちらの方が重要な関心事となるはずだ。しかし、現政権はそれには頬かぶりをしたままで、かつて首相自らが「官僚はバカだ。政治主導だ」と大言壮語しながら、自分の失政を棚に上げて、行政官たる海保長官と、流出させた海上保安官にのみ責任を押しつけて済ませようとしたのである。
 これほどの無責任な軽挙妄動を見せつけて、国民の支持率が上がる道理はない。現政権はすでに夏の参院選の審判により、衆参ねじれ状況におかれている。一方、国と地方もすでにねじれているが、それは中途で政権交代したための結果論でしかなかった。本来ならば、国策のほとんどは自治体の協力なくして完遂できないのであるから、民主政権を選んだ国民は地元首長も民主候補を選択し、国と地方とが足並みを揃えて進める体制を選ぶところである。しかし、来年はいよいよ国民の民意が鮮明に反映した形でのねじれ構造となるだろう。
 よって、民主政権は国会運営のみならず、地域対策においても四面楚歌を突き進む格好となり、国政も地方対策もともに遅延、遅滞が予測される。民主が省庁を解体し、地方分権を進めたがる真意は、実はその事態回避にあるのではないかとも勘ぐられそうだ。


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