APRIL.2012

記録的な豪雪により、東北、北陸は地すべりによる土砂災害が発生している。東北大震災から1年が経過し、新年度を迎えて被災地はいよいよ本格な復旧に向かおうとしているが、この1年間を振り返れば震災、津波、台風、豪雪、土砂災害と、日本列島は天災による苦難の連続だった。そして、それによって浮き彫りとなったのは、公共投資の過剰な削減が招いたソフト、ハード両面おける体制の不備である。

 東北震災の発生直後は、国交省東北地方整備局が全力で道路の復旧・啓開に当たったため、迅速に緊急輸送路が確保された。その陰には、地域建設業の活躍があったのだが、大衆マスコミは「震災で稼ぐ建設業者」の宣伝PRに加担しないとの見地から、強いて黙殺していた。このため、国民はその実態を知らされないままであった。

 その後、政府は第四次補正まで編成し、国会承認を得たが、国も自治体も職員削減を進めてきたため、肝心なときに発注業務に当たる職員が不足。一方、業務を受注するはずの建設業界も、折からの公共投資削減により、地場業者は相次ぐ倒産や廃業で激減。建設重機も不足し、従事者は四散し、技能者の確保もままならない状態だ。その結果、補正予算執行率は、なおも50%に到達しない。

 そして冬を迎えると、史上最高の記録的な豪雪である。思い出されるのは、豪雪地帯である新潟を襲った中越地震で、震動に辛うじて耐えた木造民家が、今度は豪雪の重圧に押し潰された。東北震災の沿岸部被災地では、津波が根こそぎさらってしまったので、同じケースとはいえないが、広域的な豪雪は日本海側全域を襲い、全国で孤立する集落が続出した。家屋は老朽家屋が多く、屋根の圧雪を放置できないため、高齢化した住人が自力で雪下ろしに当たったが、作業中の落雪などによっておよそ800人が命を落とした。また、地域の除雪作業も追いつかず、ここでも地場建設会社の不足、重機の不足、技能者や作業員の不足が足枷となった。

 いよいよ融雪時期となる春になってからは、粘土層に積もった雪が地盤ごと地すべりを起こして崩落し、民家を押し潰す事態が発生している。まさに、砂防対策の不備が露呈した結果といえよう。昨年の夏に、道都札幌市では熊が住宅地に出没して騒ぎになったが、これなどは治山を怠り、里山が荒れ、餌に窮した結果である。

 かくして、全国で国土整備を怠ったツケが、ソフト面でもハード面でも顕在化する形となり、このために地域を知り地域を護ってきた建設業者が消滅することの意味と現実を、思い知らされた1年となった。これを思うにつけ、上辺の公共事業批判に流され、挙国体制で公共投資を削減し続けたこの20年は、果たして正しい選択だったといえるのかどうか、いよいよ答えは見えてきたのではないだろうか。




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