APRIL . 2014

 戦後レジームの終了を目指す安倍政権として、画期的な取り組みが始まろうとしている。菅官房長官は、旧日本軍の慰安婦問題に関する 93年当時の河野官房長官談話について、日韓両政府で行われたことが公表された文言調整に焦点を当てて、学術的な視点で検証することを発表した。

 この問題については、談話の作成に当たった当時の石原元官房副長官が、2月の衆院予算委で、談話の根拠となった元慰安婦らの証言について、十分な裏付け調査がなく、元慰安婦に対する聞き取り調査の手法も内容もずさんだったことを明らかにしている。  しかも、軍部による強制連行や強制徴用を示す記録や史料が皆無である一方、慰安婦が自ら志願したり、債務返済のために身売りさせられた実態などを示す、当時の米軍調書が発見されるなど、韓国側の主張の根拠は大きく揺らいでいる。

 また、元陸軍軍人だった作家・吉田清治氏が著書『私の戦争犯罪』で告白した慰安婦の強制連行や虐待は、単なる創作だったことを認めている。ところが、朝日新聞はこれを題材にスクープ報道したことから慰安婦問題が燃焼。これに不信感を抱いた済州新聞記者と、現地の歴史家が現地調査を行ったところ、強制連行の事実が全くなかったことが判明したため、「軽薄な商魂の産物」と痛烈に批判された経緯もある。

 このように、信憑性において極めて疑問のある慰安婦問題だが、執拗に謝罪と賠償の繰り返しを要求する韓国側は、再検証を「時計の針を逆進させる行為」と反対を表明している。しかし、あくまで学術的な再検証であるから、反対する理由もないはずである。

 安倍首相は、現段階では談話の見直しまでは踏み込まない意向を表明しているが、検証で不適切な作成過程が明るみに出れば、その結果をどうするのかという問題が生じる。不適切な手法で作成されたいかがわしい談話を、そのまま踏襲することの不合理性が問われる可能性もあるだろう。さらに真実を究明すれば、強制性が誤謬であることに辿り着く可能性は十分にある。

 しかし、反日を国策とする韓国側が検証結果を認め、従来の主張と要求を撤回することは考えづらい。世界中でこの問題を触れ回り、不必要に認知度を高めてしまった今となっては、引っ込みがつかないだろう。

 その時に世界は、どんな感想を抱くだろうか。合理主義によって世界秩序を構築、維持してきた西洋社会においては、事実を認めない不合理な姿勢は、決定的な不信感を抱かせる原因にしかならないだろう。

 転じて、すでに日本への非難決議を可決した国連や米議会などの議決機関は、その決議が正しかったのか、再検証の必要に迫られるだろう。

 その過程で誤謬が広く再確認され、認識された時、日本は「敗戦国だからとて、誤った歴史主張に基づく理不尽な処遇が許されて良いのか」との問いかけを世界に発信し、各国が史実の修正に合意せざるを得ない状況を作ることが可能となる。かくして、不合理な戦後レジームの終了への一歩を踏み出すことができるだろう。それは、偏ったイデオロギーに基づき意図的に歪められた自虐史観の誘導で、不当に貶められてきた日本国民の名誉回復の一歩である。




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