DECEMBER . 2018

 2025年に予定されている国際博覧会(万博)が、大阪で開催されることが11月24日に決定した。東京五輪に次ぐ快挙で、我が国経済への強大なインパクトを持つイベントが目白押しである。

 万博は1851年にロンドンで始まった。大阪は1970年に日本初の万博として開催され、今回で二度目となる。当時は「人類の進歩と調和」がメインテーマとなっていたが、折しもアポロ計画で月面への有人探査に成功し、人類は宇宙開発の進歩に大きな希望を抱いた時期でもあった。

 今回は「いのち輝く未来社会のデザイン」がメインテーマで、サブテーマは「多様で心身ともに健康な生き方、持続可能な社会・経済システム」となっている。近年はDNA解析が完了し、遺伝子治療やIps細胞による再生治療の研究が進む時勢から、世界的に難病治療への期待と健康志向が高まっている。

 そうした時に注目を集めているのが、日本国民の長寿で、その理由に関心が持たれているが、近年になってようやく日本食との因果関係が理解され始めた。その結果「日本食はヘルシーで美味」と、世界的に高評価を得ており、ブームにまでなっている。国民の健康は、健全な経済・社会の基礎であることを考えれば、このテーマはタイムリーといえよう。

 一方で、会場建設費が1,250億円に上ることから、疑問視する声もある。「無駄な施設が増える一方」、「また税金が増える」、「被災地の復興が進んでいないのだから、そちらへ財源を回すべき」といった意見がネットに見られる。

 しかしながら、その経済効果は2兆円と試算され、投資費用をはるかに凌駕している。以前の万博では、国民歌手三波春夫が「世界の国から、こんにちは」と唄っていたが、まさに世界から日本を訪れる外国人観光客は、毎年増加している。そして、それを機に日本人の誠実な国民性、どんな時も秩序を乱さない日本人の冷静な強さと治安の高さ、さらには先進的技術大国である一方で、古い伝統も共存する文化的エキゾチシズムが、世界で評価されている。誘致委員会は来場者を2,800万〜3,000万人と見込んでいるが、政府も観光立国を目指して後押ししていることから、この試算はあながち非現実的な楽観的展望とも言えず、可能性のある試算と言えよう。

 もちろん、復興を急ぐことも必須の命題ではあるが、経済的恩恵を被災地に還元することも、復興を促す強力な原動力となる。また、会場となる埋め立て地の人口島である夢洲は、開発が進まずに放置され、利用価値の低い遊休資産となっていたが、この万博によって有効利用が進むことも期待できる。

 実際に前回の万博では、過剰投資で経済が失速することはなく、むしろ弾丸列車と呼ばれた世界初の新幹線が開通し、陸路は高速道路が主要都市に張り巡らされ、日本は高度経済成長へと向かい、格差の少ない高度社会の実現を果たしたのである。

 大阪にとって、そして日本国にとって、せっかく与えられたビッグチャンスである。その経済効果を無駄にせず、未来への有効投資につなげ、活かしていくことを考えたい。




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