SEPTEMBER.2012

 竹島への韓国大統領による不法入国に次いで、尖閣諸島に香港人の反日活動家が不法侵入するなど、領土問題が激化している。それに先んじて、北方四島はロシアの政府閣僚やメドベージェフ首相自らも2度にわたって不法入国するなど、三ヵ国の連携共闘が鮮やかに見て取れる。

 これらを別々の問題として捉えようとする見方もあるが、すでに実効支配という既成事実を作り上げているロシアが先陣を切り、それに倣って韓国も自国議員に次いで大統領自らが乗り出したのは、既成事実が作れないまま尖閣諸島の侵略に手を焼いている中国への助け船であることは、誰が見ても明らかである。

 しかも、日本国内では民主政権が「近いうちに国民の信を問う」とのあやふやな政治取り引きで、消費税増税法案と特例公債法案の可決には成功したものの、造反者や離党者が相次ぎ、支持率はさらに20%を切った政権与党としての弱体化につけ込んだ動向とも見られる。

 その一方では、日米同盟を弱体化させるなど、ロシア、中国、韓国には好都合な外交環境を作りだした民主政権が、いよいよ解散時期に話題の焦点が移るタイミングに合わせて、騒動を起こしたとの見方もできる。つまり、日本国民の関心を外交問題に逸らし、そこで政権として外交得点を挙げて、延命に結びつけることも不可能ではない。

 また、ロシアではすでに反米主義のプーチン体制が再構築されたが、中韓の首脳交代はこれからであるため、国民の反日愛国主義のナショナリズムを追い風にしようとする狙いがあることは、以前から指摘されてきた通りだ。とりわけ、韓国は李大統領の親族による贈収賄事件が発覚しており、もしも大統領選に落選した場合は、下手をすれば歴代大統領と同じく本人が被告の立場ともなりかねない。国民の注目を避けるには、過激な反日的言行で気を逸らすしかないのだろう。

 中国ではタカ派とされる江沢民派の習金平副主席の就任が確実視されているが、国内は企業家のみならず、国家運営の任に当たる党幹部までが、様々な手法で蓄積した個人資産をEU、カナダ、北米などに移して国外脱出を図るなど、独裁政権への不満と不信感は天安門を例に引くまでもない。このため人民の支持と忠誠を得るには、反日感情を利用するしかない。

 このように、内政における実績と実力のアピールではなく、仮想敵国への国民の憎悪を支持率に結びつける特異な伝統的手法は、国際標準たるフェアプレイの精神を前提とする日本にはない発想だが、それが現実であることを日本国民は覚悟するしかない。「近いうちに国民の信を問う」とは言いつつ、舌の根も乾かないうちに景気対策と補正予算、新年度予算などに言及する民主政権を、まともに信じて倒閣の機を逃した野党自民党のようなお人好しでは、外交問題は乗り切れない。




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