September.2010


 8月24日の日経平均株価が9,000円を割って、昨年5月以来の最安値となった。それに続いて、為替レートは1ドル83円を割り込んだ。日本企業の経営が信頼されない反面、円だけが買い続けられて高止まりという状況は、どう考えても不自然で、そこには「資本の悪意」が感じられて仕方がない。
 単純に考えれば、円高によって日本の輸出関連企業の業績に期待が持てないから、資本が離れている構造と見るべきだろうが、我が国の国内経済がデフレスパイラルで、内需までもが崩壊し、国内企業経済の先行きに展望がなくなっているのに、円だけが買い支えられるというのは異様な光景で、かつてのアジア通貨危機が想起される。
 マスコミ報道などでは、単にドル安の反動である反面、900兆円に及ぶ国債の担保となる国民総貯蓄を資金資源として見込んでおり、さらに政府の無策につけ込んでいるとの分析も見られる。視点を変えれば、英米投機筋による嫌がらせ的投機との印象も拭えない。のみならず、最近は台頭著しい中国資本や韓国資本による日本の不動産や企業買収の話も聞かれるようになっている。彼らの場合は、かつての植民地支配への恨みと報復という底意があるので、その敵意は日本だけでなく欧米にも向けられている。
 とりわけ中国としては、太平洋利権の拡大と防衛ラインの拡張を目指しているため、そのラインに含まれる沖縄など日本の南部を併呑したい意向を持っているはずである。日本経済の弱体化を進めて侵略しようとの野心がないとは言えまい。
 一方、アメリカはかつてのIMFを盾にした資本による世界支配から、多極化路線へ転換していると見られており、ドル安はその有効策となるのは確かだろう。
 そしてヨーロッパでは、財政破綻したアイスランドに続いてギリシャ、スペイン、オランダなどのEU諸国の危機が懸念され、それらを支援してきたドイツ、フランスが巻き込まれて内政問題にまで発展している。
 そうした各ブロックの情勢と思惑を見れば、各国が自国の産業経済保護や、国策実現に向けて、輸出に頼り過ぎる日本経済の弱点を突いた資本戦略を取っていると考えるのは、あながち筋違いではないだろう。
 これに対抗するために必要なことは何か。9月の代表選に気を取られている菅政権は、遅かれ早かれ日銀と協調して為替介入に乗り出すことになるだろうが、小手先の金利操作だけで乗り切れるのだろうか。外貨獲得なくして経済成長はあり得ないが、これまでの輸出依存型経済から内需自立型経済への転換によって防衛することが必要ではないだろうか。
 この9月を以て自動車に対するエコカー減税が期限切れとなるが、これを景気対策のための公共投資と見た場合に、大切なことは消費支出増加、関連産業の二次需要創出、雇用創出、資金の流動化、個人所得増加、消費支出増加、そして地方税収・政府歳入の増加へと自転できる経済循環を生み出し得るのかどうかである。これは家電エコポイント制度や住宅ポイント制度についても同様で、そうした循環が実現しているかどうかによって、政策の成否が判明する。
 しかし、総額220兆円の留保を溜め込む大企業群が、その財源によって自主的な「公共投資」をするとは思えない。特に海外資本に支配されている場合は、それは配当の担保にしかならないと思われる。その結果、国民が納税した公費による公共投資の結果、それら大企業の経営陣と、海外資本家だけが利得を得ただけで終わるのでは何の意味もない。
 それならば、もっと広範な効果が望めるニューディール政策にこそ、公共投資する方が賢明ではないだろうか。


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