MAY . 2020

 新型コロナウィルスによるパンデミックで、企業・国民の疲弊は色濃くなってきた。日本だけでなく世界共通の現象で、そのためかナイジェリアでは、100台を超えるバイク集団が村を襲撃、47人を殺害するといった映画「マッドマックス」や漫画「北斗の拳」さながらの事件が発生している。アメリカでは感染源となった中国を訴えると息巻く国民も現れ始め、訴訟沙汰に発展する兆候を見せている。

 このように世界が混迷を深める中で、感染源は何だったのかについて、ミステリー小説めいた分析も見られ始めた。それによると、今回のパンデミックは米中貿易戦争の延長に起きた陰謀であるという。一帯一路構想でG2体制への台頭を目指す中国の経済成長と国力を、以前から危険視していたアメリカが阻止するために兵器使用したという陰謀説である。その視点で見れば、確かにポンペイ国務長官が意図的に「武漢ウィルス」の名を強調したり、トランプ大統領が、演説原稿をわざわざ書き換えて「チャイナウィルス」と繰り返したのは、印象工作と見ることもできる。

 当然ながら、中国共産党はこれに反発し、むしろ米軍が持ち込んだと反駁した。その角逐の中で、ナノテクノロジーの権威であるハーバード大学科学部長のチャールズリーバー博士の逮捕は、アメリカの疑惑を深める一大事となった。逮捕理由は、同博士が米国立衛生研究所から150万ドル以上の助成金を受けながらも、一方では武漢理工大の戦略科学者として就任し、千才能計画に参画して、そこからも報酬を得ていたことが発覚したためで、これが二重スパイだったのではないかとの憶測を呼ぶ。

 それによれば、同博士は武漢研究所で細菌兵器として開発されたコロナウィルスのデータを持ち出し、それを基に米国内で生産されたウィルスが、逆に武漢で兵器使用されたのではないかという疑惑である。

 確かに、いくらやることなすこと万事が杜撰な中国とは言え、人命を奪う兵器の研究所が、流出のミスを犯すような杜撰管理をするとは考えづらい。また、アメリカを相手に戦争状態にあった中国が、わざわざパンデミックを引き起こして、自分の首を絞める理由も見当たらない。

 しかし、感染発覚直後に見せた中国共産党による隠蔽工作や、汚染されたマスクの大量輸出、欠陥品の検査キット輸出など、一貫した人道軽視、人権無視の未熟な体制には、世界からの非難が集中し、毛沢東に心酔して独裁体制を築いてきた習近平主席は、求心力が急降下しているという。そこに便乗して批判するアメリカには、疑念の目は向けられまい。

 そうした中国共産党の体制的未熟さを見越しての戦略と考えるなら、あながち不合理とも思えない。というのも、その手法はかつて日本を極悪な戦争犯罪国に仕立て上げた東京裁判と、それを根拠に印象工作による国際的プロパガンダや、世論操作や教育により日本国民の精神的弱体化を徹底したGHQの占領政策さながらだからである。


 一方、視点を転じて、この惨状の渦中にある我が国を見ると、パンデミックとは比較的無縁に見えた建設業にも、その影響は顕在化した。清水建設で3人が感染し1人が死亡したため、政府の緊急事態宣言指定区域の現場を閉鎖した。これに先んじて、西松建設がすでに現場封鎖に踏み切っていたが、現在は主要ゼネコンもこれに続いている。

 ネットでは「建設業までが崩壊したら、日本は立ち直れなくなる」「潰れると、他の業界よりも影響力の大きい業界だから、建設業だけは守れ」といった、支援的な書き込みが多く見られ、かつての理不尽で蒙昧な公共事業批判のムードは、すっかり影を潜めていた。公共事業と建設業を取り巻く世論も、今日では大きく変化したと見ることができる。




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