MAY . 2017

日本と韓国を人質にする形でアメリカを挑発する北朝鮮との緊張関係が、前例がないほどに高まっている。これまでは、軍事的拡大主義で、近海へ侵出を図ってきた中国が脅威だったが、今や米中が連携して北朝鮮を抑制しなければならない情勢となった。

 これまでは、日米豪印の4カ国によるダイヤモンド構想で中国を牽制してきたが、金正恩主席が政権安定のために側近や異母兄を殺害した上に、国際社会での政権公認を目指して核開発を加速し、暴走し始めたことから、対中関係を緊張させている場合ではなくなった。

 米中首脳会談で、トランプ大統領は北朝鮮の保護国である中国に抑止力となることを求めたが、実効性が見られない場合は先制攻撃も辞さない構えを見せ、シリア空爆を以て見せしめとした。

 通常は「報復」という名目を用意するアメリカにしては、珍しい姿勢だが、北朝鮮がワシントンにまで届くミサイル開発に成功しているだけに、後手に回るわけにはいかない事情がある。また、かつての朝鮮戦争では、中国の参戦によって双方に被害が拡大した苦い体験から、その二の舞を避けるべく、中国とは対立しているわけにはいかない。

 しかし、中国にとっては国境を守る上での緩衝帯として、北朝鮮を存続させる必要があるため、決定打は期待できないとの見方が有力だ。このため、米軍による先制攻撃は現実味を帯びている。

 韓国のネットでは、「4月27日」をXデーとする噂が飛び交っており、戦々恐々の様子だ。かつて、クリントン大統領が空爆に乗りだそうとした時は、巻き添えを恐れた日韓両政府が、中止を要請して事なきを得た。だが、危機が永久に去ったわけではなく、韓国は北朝鮮にほど近いソウル市が脅威に曝されており、日本では朝鮮戦争時に在日米軍の出撃拠点となった厚木基地や、ベースキャンプである横田基地が狙われる可能性が高い。

 だが、現実的に脅威を取り除くには、自主的に核武装を解除させるか、核施設を破壊するしかないため、六者協議の再開を模索する動きもあるが、今のところ前者に期待は持てそうもない。また、一方では政権の解体に向けて、金主席の斬首作戦も準備されているという。

 かつて日本が原爆の犠牲となった時は、米五元帥が「敗戦準備をしているのに、わざわざ原爆を使用する必要はない」と揃って反対したが、敢えて投下したのは臨床実験データの採取と同時に、東西冷戦に備え、旧ソ連に威力を示して誇示することも目的だったと言われる。そのため、被害は大きければ大きいほど見せしめ効果が高いため、赤十字の救出を禁じて意図的に被害を拡大させたとされる。

 どんな場合でも、犠牲者は罪無き人民である。皮膚が溶けた無惨な人の姿は、二度と見たくない。米ソの緊張が高まったキューバ危機は、両首脳のぎりぎりの交渉で回避された。今回も理性的な解決を望みたい。




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