FEBRUARY . 2018

路地裏問答

 いよいよ平和の祭典である平昌冬季五輪の開催日が迫ってきた。盛大な開会式が行われるものと期待されるが、海外メディアの報道によると、開催国である韓国の文在寅大統領は、政治的にも地理的にも重要である日・米・中・ロの4カ国の首脳に、早々と招待状を出していたものの、どの国からも快諾を得ておらず、政府として描いている4カ国首脳の平昌五輪出席の構想が危ぶまれているという。

 記事によれば、アメリカは制裁圧力を強めている北朝鮮の参加表明により、トランプ大統領が金正恩主席と肩を並べるわけにはいかず、ペンス副大統領の派遣を決定しているという。日本は、韓国が変更しようとしている慰安婦合意に対し、1oも動かさないとの強い姿勢から、安倍首相の出席については検討中として、態度を明確にしていない。ロシアはドーピング問題により、国としての参加が禁止されている。中国は「高高度防衛ミサイル」(THAAD)がネックとなり、習金平主席の出席は微妙とされる。

 せっかくの平和の祭典であるから、政治抜きでと行きたいところだが、各国とも手放しでは祝えない複雑な事情があるようだ。

 韓国が主催した国際大会といえば、直近では2014年の仁川アジア大会だったが、残念ながら後味の良いものだったとは言い難い。審判への買収疑惑が持ち上がったほか、選手のプレーには不正行為も見られ、敗北した時には競技場に居座り抗議を続けるなど、スポーツマンシップとは背反するような見苦しい醜態が見られた。女子ボクシングでは、インドの選手が判定基準に抗議し、銅メダルを返上するという前代未聞の事態が起きた。

 ロシアのソチ五輪でも、対戦国の選手への侮辱や、開会国であるロシアのプーチン大統領までをもネットで侮辱するといった有様で、大会終了後にはロシア軍の戦闘機が韓国領空へ飛来した。

 アメリカについては、対北制裁の強化を呼びかけた時に、人道支援と称して8億円を支援し、国際社会の世論に背く振る舞いを見せた。のみならず、米韓軍事協定を通じて得た機密を、中国と北朝鮮に漏洩してしまうといった背信行為も見られた。

 しかも、アメリカが進めるTHAAD配備については、これを事実上骨抜きにするような約束を中国と結ぶなど、アメリカの意向に真っ向から背いてきた。

 そして日本との慰安婦合意においては、基金財源として日本側が提供した10億円を受け取りながらも、本来の目的に使用せず、独自の国家予算を充当し、さらに合意に対する新方針を一方的に発表した。当初の合意事項は一切、履行する様子はなく、日本政府がウィーン条約に基づいて要請している慰安婦像の撤去には応じず、むしろ民間団体による慰安婦像の増設を黙認するなど、国家間の合意を覆すような動勢である。

 日本への不義はそればかりではない。五輪準備においては、大会を紹介する公式ホームページで、世界地図から日本を三度も抹消した。組織委員会からは「単純なミス」との説明があったが、三度も単純ミスをするだろうか。

 しかも、先に来日した丁世均国会議長は、大島理森衆院議長らとの会談で、平昌五輪に日本人観光客をたくさん来させるよう努力を求め、少なかった場合は、東京五輪に1人の韓国人も行かせないなどと、公人とも思えぬ耳を疑うような非常識発言である。

 大会を成功させようとしているのか、台無しになろうとも政治の具として利用したいだけなのか、真意が不明である。韓国の外交といえば、とかく「ゴールを勝手に動かす」などと批判されるが、せっかくの平和の祭典であるから政治的な雑念は払い、スポーツマンシップの基本精神に立ち返るべきではないだろうか。でなければ、このために日夜精進してきた選手らが気の毒である。






過去の路地裏問答