JUNE . 2016

パナマ文書の漏洩で世界中が揺れている。大企業や資産家がタックスヘイブンを利用し、納税回避をしていたことが明らかとなったためで、我が国を代表する大企業も多数、含まれている。

 日本語に翻訳されているリストを見ると、伊藤忠、丸紅、ライブドア、ソフトバンク、電通、NHK、セコム、大日本印刷、NTTドコモ、マルハニチロ、ロッテ、オリックス、コナミ、ソニー、三菱、東レ、ニッサン、豊田通商…と、特定の業界ではなく、ほぼ全業種にまたがっているのは驚きである。

 リストアップされているのは、法人ばかりでなく個人も対象とされており、我が国の政界関係者も含まれているという。もっとも、中には巨万の富とは縁遠いと思われる小売店の店主も含まれ、本人は「なぜ自分が?」と首を傾げるといった、疑わしいケースもあるという。

 また、記者会見に臨んだ企業は、ペーパーカンパニーではなく、正規の合弁事業であり、問題はないとして、課税逃れを否定する発表もある。

 その一方で、アイスランド首相が辞任し、イギリス首相も国会で厳しい追及を受けている。そして、EU、米司法省、シンガポール政府などは徹底調査の意向を表明し、厳正に対処する姿勢を示した。

 違法行為ではないとは言いつつも、オバマ大統領は「これが合法であることの方が異常だ」と批判したという。本来なら政府として得られるはずの財源が、消失してきたのであるから、一国を与り運営に苦慮する立場としては、納得がいかないのも無理はない。

 我が国は菅官房長官が「敢えて調査はしない」と、記者会見で不審な回答をしているが、来年度を想定していた消費増税は、やりにくくなったのではないか。

 データ容量が2.6Tbに及ぶという前例のない最大の流出事件で、一説にはAIIBで、欧米の金融システムに挑戦した中国による陰謀との憶測もあるようだが、AIIBにはイギリスをはじめ欧州各国も参加しているので考えにくい。

 告発目的だったのか、万国共通の税システムへの疑問提起だったのか、誰が何の目的なのかは測り知れないが、世界を跨いで公平な課税、執行に対する監査など「税」のあり方を巡る国際的な論争が起きる切っ掛けとなるのではないか。各国の国民は、課税回避のしわ寄せを受けて増税に耐えているのであるから、これを合法とする金融資本のシステム自体に、不信感と憤懣を抱くことだろう。場合によっては、納税をボイコットする国民が現れるかも知れない。違法でないとはいえ、各国民の税に対する不信感と不公平感と、課税回避者への反感はかなり根深いものと思われる。

 この問題について、安倍首相をはじめ各国首脳らは伊勢志摩サミットで、どう言及するのか興味深い。課税はデモクラシーの基本であるから、混乱回避に向けて、各国のリーダー達の叡智で、世界の国民が納得できる対策と、改善への決意を示して欲しいところである。




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