JULY . 2015

 (財)建設経済研究所は、6月に主要建設会社40社の2015 年3月期決算(2014 年度)について、分析結果を発表した。それによると、工事契約も売り上げもリーマンショック以前の水準にまで戻り、建設業界の順調な再興と明るい将来展望が示された。

 同研究所は1997年以来、主要建設会社の財務内容を階層別に経年比較分析することで、建設業の置かれた経済状況と、それに対する財務戦略の方向性について継続的に調査している。

 調査対象は、3年間の連結売上基準の平均が1兆円を超える鹿島建設、大林組、大成建設、清水建設、竹中工務店の5社を「大手」。2,000億円を超える長谷工コーポレーション、戸田建設、安藤・間、前田建設工業、五洋建設、三井住友建設、熊谷組、西松建設、東急建設の9社を「準大手」。

 2,000億円以下となる奥村組、東亜建設工業、淺沼組、鉄建建設、東洋建設、錢高組、ナカノフドー建設、福田組、大豊建設、飛島建設、青木あすなろ建設、ピーエス三菱、東鉄工業、大本組、名工建設、松井建設、矢作建設工業、大和小田急建設、若築建設、北野建設、新日本建設、不動テトラ、第一建設工業、大末建設、徳倉建設、植木組の26社を「中堅」として3階層に分類。

 各階層ごとに、受注高、売上高、売り上げ総利益、販売費及び一般管理費、営業利益、経常利益、特別利益・特別損失、当期純利益、有利子負債、自己資本比率・デットエクイティレシオ、キャッシュフローといった項目について、過去5年間の推移を比較・分析。これに基づき2015年度の数値を予測している。

 受注高は、大幅な増加となった2013年度に引き続き、全階層で増加。建築は消費税増税前の駆け込み需要があった2013年度比でも増加し、土木部門は大型公共工事が寄与して大幅に増加。総計では、リーマンショック前の水準に匹敵。売上高は、好調な受注を背景に手持ち工事が増加したことにより、全階層で増加。売上総利益は、利益額・利益率ともに全階層で増加・上昇。営業利益は、利益額・利益率ともに全階層で増加・上昇し、全40社が営業黒字を確保。当期純利益は、利益額・利益率ともに全階層で増加・上昇し、全40 社が最終黒字を確保したと結論づけている。

 小泉構造改革から民主政権に至るまで、建設産業は政府から自治体、団体に至るまで、極端で不自然といえる予算削減により、政策的に崩壊へと誘導されてきた。その結果、東北大震災では災害時の緊急体制の脆弱さが露呈し、さらには震災後も水害、雪害、噴火などが続きながら、歪められた建設産業と公共投資のイメージから企業数、従事者数などの体制再建には至っていない。このため国交省は、ダンピングの防止や作業員の社会保障、待遇改善などを進めるよう、自らも率先垂範しつつ自治体や事業団体にも改善を呼びかけてきた。主要企業の業績回復は、こうした努力が実った結果と言えよう。

 高齢化が進行するこれからの時代は、地域に医師も介護士もいないのでは、高齢者は生活不安を抱えることになる。同じく建設業は国土の医師であるから、災害大国の我が国にあって、非常時に存在しないのでは心細い限りだ。かつての誤った建設叩きの愚策を反省し、全国から無医村を無くす努力を継続することが必要だ。




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