JUNE.2011


 東北大震災は、いまなお復旧と犠牲者の捜索が続く一方で、政府は復興を模索する段階に入ったが、福島原発核燃料棒のメルトダウンが発覚したことを契機に、倒閣に向けての動きが活発化し、煮え切らない与野党首脳部を見切るような形で、若手議員らによって政界再編を模索する動きが表面化してきた。しかし、そうした動乱は諸外国の狙い目となることを警戒すべきだろう。
 震災直後は、与野党とも復旧に向けて挙党態勢での協力関係を以て臨んできたが、震災での初動対応や原発対策を巡って、国内外から批判と不信感が高まり始めていたところに、4月の統一地方選での与党惨敗により、菅政権への不満は一気に急騰した。一時的には、中部電力浜岡原発の稼動停止措置によって、世論の支持は若干持ち直したものの、野党からは関係機関との審議を経ずに決定したスタンドプレーが疑問視され、その一方で福島原発のメルトダウンの発覚により、いよいよ内閣不信任案に向けての動きが加速した格好だ。
 すでに自民、公明との連立が破綻していた上に、以前から菅政権に批判的だった小沢グループのほか、最近では民主の西岡参院議長が、公然と菅政権批判を繰り返している。自民も谷垣総裁が、第二次補正予算案を見送ったまま国会を閉会すれば、不信任案の提案は不可避と言明するに至ったが、現実には倒閣という事態までには至っていない。
 そうした情勢下で、5月17日に民主の樽床伸二元国対委員長と自民の菅義偉元総務相らが主導する形で、民主、自民両党の中堅109人による「国難対処のために行動する民主・自民中堅若手議員連合」が発足。党派を超えた中立的立場の議員らによる一大勢力となっており、政局に与える影響は大きいものと注目されている。
 この他にも民主、自民両党の衆参議員11人による超党派の「日本の復興と未来を実現する議員連盟」の発足準備が進められているほか、民主の松原仁衆院議、自民の小池百合子総務会長、公明の坂口力元厚生労働相らが中心となった「道州制懇話会」も設立されるなど、超党派の議連が続々と発足している。
 この動きは、政権トップである菅首相、反菅勢力の小沢元幹事長、最大野党・自民の谷垣総裁など、膠着状態の政局を打開できない既存勢力に業を煮やし、その枠組みから外れる形で政界再編を模索する動きと見られる。
 しかし、見方を変えれば、いまだに基盤が定まらない政権と政局の不安定さの現れと見るべきで、そうした内政における混迷につけ込むようにして、ロシアでは北方四島への閣僚訪問、軍備増強、中韓企業の投資誘致といった侵略政策が再開されている。
 日本が隣国との間に抱える領土的確執は、北方四島だけでなく竹島、尖閣諸島もあることを考えると、今後は竹島支配のために韓国が中ロと手を結んだり、尖閣諸島の実効支配に向けて、中国が韓ロを呼び込む戦略に出ないとも限らない。外交は待った無しで、日本国民の世界的評価が高い反面、日本政府への信用が失墜してしまっている現状では、世界からの信用と尊敬を回復し、不当な領土的野心を持つ他国の野望を、毅然として跳ね返し、国民生活にとって真にプラスとなる政府の確立が、一刻も早く望まれる。




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