September.2009

 今夏は梅雨が長引いて天候不順が続き、全国各地で「百年に一度」と言われる100mmはおろか、500mmを越える異例の豪雨によって、洪水や土砂流出が多数発生した。このため、九州自動車道が通行止めになったり、東名高速自動車道の路肩が崩落するなどの自然災害が相次いだ上に、静岡地震の発生である。ついに、かねてから警告されてきた東海大地震の発生か、と肝を冷やされた。幸いにして、地震慣れしている市民の対策は万全で、大惨事には至らなかったが、その後も地震は全国で散発的に発生している上に台風の時期到来で、日本列島は泣き面に蜂である。
 日本の地理的位置と、山勝ちで平野の少ない国土、そして活断層だらけの地盤のゆえに、豪雨や地震による自然災害が多く、そこに住む人々の生活基盤はかくも弱くて脆いことを改めて世界に見せつけた。我々の祖先は、細く小さな山脈列島のわずかな盆地や平地を開拓し、治山・治水のためのあらゆる智恵を総動員しながら住み成してきたが、アジア、ヨーロッパ、アメリカなどの広大な大陸から見れば、やはり住環境としては極めて劣悪である。
 それでも日本人の祖国であるから、国土を放棄するわけにはいかない。一説には、中国にとって、台湾併合後の次にある国家などという不穏な言説も聞かれるが、実際に国内インフラの荒廃は、居住者を遠ざけエイリアンの侵入を許しかねない。尖閣諸島や竹島が良い例である。
 次期総選挙では、民主党政権への交代がほぼ確実視されているが、果たしてこうした脆く危うい国土と、そこに暮らす国民を守り抜いていけるのか。阪神淡路大震災では、瓦礫に閉じこめられた被災者が、一刻も早い救出を望んでいるのに、村山社会党政権は、党が違憲とする自衛隊の出動を渋った挙げ句に、政権党としての経験不足から有事慣れしていないこともあって、早々と到着した国外からの救援隊の手配にまごつき、ついに見かねた地元広域暴力団がボランティアに乗り出す始末であった。
 日本特有の国土構造と経済構造を理解しない人々による一部の世論と、日本の社会主義化を狙ったようなマスコミの世論操作に乗せられて、とかく公共事業を廃止したがる風潮があるが、土砂に埋まった中国地方の介護付き老人マンシオンの悲劇は、決して他人事ではなく、明日の我が身かも知れないのである。
 9月1日は防災の日で、各地で防災訓練が行われ、国民は防災意識と備えを新たにするが、天災はそんなときだけに都合良く発生してくれるわけではない。日頃からの備えが必要で、それは個人だけの話ではなく、インフラも含めて安全度を高めておくことは、政府や自治体の責任でもある。財政難を理由に予算を出し惜しんだ結果、かえって納税者を失うような愚は、避けねばなるまい。



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