FEBRUARY . 2014

 地方自治体の公共施設建設工事の入札不調が目立ち始めたため、国交省は予定価格の設定についての対策案をまとめ、全国自治体の積算に反映するよう呼びかけている。

 国交省の建設工事受注動態統計調査報告によると、昨年11月の公共機関からの建設工事受注総額は7.6%増の1兆1,049億円となったが、国が46.9%増の3,550億円に増えた反面、地方は入札不調などの理由から4.5%減の7,499億円となっている。

 このため国交省では、予定価格の設定に当たっては最新単価を使用し、実勢価格と乖離する可能性がある場合は、施工業者やメーカーから集めた見積もりや、過去の工事実績などを反映させ、それでも入札不調・不落となった場合は、逆に入札参加者から見積もりを提出させるなどの対策を自治体に呼びかけている。

 これまでのデフレが色濃く影響してきた結果であることは言うまでもないが、財政難を口実に、施工業者に無理な条件を飲ませてきた発注者側の甘えもあっただろう。その一方で、財政難ではありながらも、一件でも管内業者の倒産を防ごうと、小規模工事でも工区を細分化し、一社でも多く入札参加させてきた結果、採算度外視の契約が当たり前のようになり、いつしか実勢価格に対する感覚が麻痺していたのではないだろうか。

 それほどまでに建設市場は厳しい冬の時代が続いたが、しかしながら近況は情勢が反転している。震災復興需要に加えて昨年来の景気対策により、建設市場は売り手市場から買い手市場へ逆転している。

 しかも、折からの円安で輸入エネルギーや資材高騰、賃金上昇などにより建設コストが上昇している上に、新年度から消費税率が8%に増加することから、業界側としては採算性の見込めない工事にまで対応することは不可能になっている。いきおい直轄事業に比べて規模が小さく、収益性も低い自治体工事までは手が回らず、入札参加を辞退せざるを得ない。この結果、入札を何度公告しても参加業者が集まらず、やむなく設計段階から見直し、積算の上方修正を余儀なくされるケースが見られた。

 全国のグランドデザインとして、国交省は都市の市域を拡大せず、集約するコンパクトシティのコンセプトを提唱しているが、それを各地で具体的に形にするのは自治体であり、街づくりに直接携わる立場であるから、入札不調を繰り返していたのでは、市民はいつまでも恩恵を受けることができない。施設の老朽化・耐震化対策や、首長公約に基づく施設整備も含めると、どこの自治体も着手しなければならない事業計画を多く抱えているだろうが、多少の負担増にはなっても一点豪華主義の覚悟で臨む必要がありそうだ。




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