May.2010


 渡辺元行革大臣の「みんなの党」に続いて、新党結成を目指した鳩山元総務相の離党や、平沼元経産相の「たちあがれ日本」、杉並区の山田区長の「日本創新党」など、夏の参院選に向けて新党設立の動きが活発になってきた。地方政治では、大阪都構想を掲げた橋下大阪府知事を党首とする「大阪維新の会」が結党した。
 さらに国外に目を向けると、近代デモクラシーの祖であるイギリス政界でも、第三極にあった自由民主党の支持率が、伝統的な2大政党を抑えてトップに躍り出るなど、政界の地殻変動は日本だけに止まらない模様だ。
 我が国の新党ブームは民主、自民ともに支持率が3割以下という体たらくの政治情勢下で、出口の見えないトンネルに入った我が国の政治・経済社会に突破口を見出さんと、起こるべくして起こった動勢と言える。
 新党ブームで思い出されるのは、1989年や1992年の参院選で、UFO党だの平民党だのモーター新党など、意味不明なミニ新党が30党以上も乱立した時代があったが、半ばお祭り気分で騒いでいるようにしか見えない側面があり、有識者の不興を買う場面もあった。つまり、それほど経済的な余力のあった時代で、今から見ればのどかだったとも言える。
 それに比べると、今回の新党ブームは、絶望的な経済状況にあって破滅的な政策に猛進する民主政権や、その糸口を作ってしまった小泉−竹中構造改革への怒りと、現実的な危機感がバックボーンにあるため、各党のスタンスは明確であり、主張も理解しやすい。
 渡辺、平沼両氏の場合は、およそ6割の浮動票に目がくらみ、自民党という沈み行く泥舟から逃避しただけとの意地悪い見方もできるが、日本はイギリスの保守党VS労働党や、アメリカの民主党VS共和党といった二大政党制による対決型よりも、ドイツのような三党体制を基本に、2対1の組み合わせによって政権交代していく政治モデルの方が、狩猟漁労経済から農耕牧畜経済へ転換した国民性と風土に適しているとの見解もある。
 とりわけ、タイのように現政権への不満が暴動に結びつかないのは、政治的熟度の違いなのか、単に国民が大人しいからなのか、それとも暴れる気力もないほど疲弊しているのかは分からないが、政治問題はあくまで政治で決着させようという人知であると解釈したい。
 発足したばかりのミニ政党であるから、連立でもしない限りは政権与党の位置からはほど遠いが、当面重要なことは、政権奪取を目指して、選挙で無謀な背伸びをすることではない。政策論争や批判を通じて、現与党の狂ったマニュフェストを軌道修正させ、予算配分を正常化し、日本経済の再生によって自然に財政再建が果たされていく方向へと、政策誘導していくことである。



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