MARCH . 2018

路地裏問答

 中国の各種メディアの記事を紹介する「サーチナ」は2月16日に、香港の大手メディアである「今日頭条」が2月13日付で公開した記事を紹介した。内容は日本の建築技術に関するもので、日本の建設関係者にとっては気になる内容である。

 中国メディアといえば、歴史を政治利用する中国政府と日本との葛藤から、とかく日本を敵視したり、ライバル視する記事が多いが、その一方で日本と中国の違いを比較論評する記事も見られる。

 その記事は、日本の建築工事の工期が長い理由について考察したもので、筆者は実際に日本の建築現場に従事する中国人労働者であるという。それによると、日本の工期の長さの原因は型枠工法にあると指摘している。中国のようにフレームを先に組み立て、後から壁をレンガで構築する工法よりも、型枠にコンクリートを流し込む日本の工法の方が、強度や耐震性が高くなるが、その分、時間がかかるのだという。

 その型枠の表面には、コンクリートが付着しないよう特殊加工が施されており、何度も使用できるように工夫されているため、使用による経年劣化が見られないことや、コンクリートの壁面もタイルのように滑らかであることを紹介。

 そして筆者が驚嘆するのは、せっかく滑らかで美しく仕上がった壁面の上からは石膏ボードが貼られてしまうので、人からは見えなくなるにも関わらず、そうした人目につかないところまでも手を抜かない日本人技術者の丁寧な仕事ぶりに、深く感心している。

 東日本大震災や熊本震災の際には、中国人のみならず各国の国民が、ビルが倒壊しなかったことを称賛したネットでの書き込みが相次いだが、これも日本の優れた建築工法や、使用する資材の品質、そしてそれらをいかんなく発揮する職人の技術力の賜と言えよう。また、人の集まる駅で地震が発生した際に、多くの日本人乗客が騒ぐことなく落ち着いている様子に驚嘆するとともに、それもこれも構造物の耐震性能への絶大な信頼感が反映しているのだとする感想も見られた。諸国民が称賛する我が国の建設技術の水準の高さは、建設に携わらない者も、同じ日本人として純粋に誇りを持って良いだろう。






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