October . 2019

新たな第4次改造内閣が、9月11日に発足した。野党からは「お友達内閣」と揶揄されるが、「安定と挑戦」をキーワードに、政権の安定化を図る一方で、景気対策、社会制度改革のほか、特に目玉となる憲法改正といった、政権党として長きに渡って着手できなかった難題に挑戦していこうという意欲の伺える布陣だ。

 今回の組閣では、麻生財務大臣と菅官房長官を除いて17人が交代。全国女性のアイドルである小泉進次郎氏の環境相就任が目を引く一方で、国会答弁で野党に「恥を知りなさい」と、不甲斐なかった民主政権の体たらくを一喝する剛胆さを見せた三原順子氏の入閣が見送られるなど、話題性の多い組閣となった。

 派閥別では無派閥が6人、細田派と麻生派は3人、竹下派と岸田派、二階派は2人だが、石破派は0人となり、改造前の1ポストを追われた格好となった。野党が批判する所以はここにあり、政敵を追い出してYesマンばかりで固めたという意味合いで「お友達内閣」とのロジックとなった。

 だが、政権の安定化を考える場合、政敵を近傍に配すれば、それが「獅子身中の虫」となり、いつ謀反を起こすか分からない不安要素と不安定感を常に抱えることになる。歴史を紐解けば、本能寺の変にて倒れた信長の訃報を知り、悲嘆に暮れた秀吉は「むしろ、今こそ天下採りの好機」と耳打ちする軍師・黒田官兵衛の計算高さに不信感を抱き、終生にわたって九州を所領として追いやり、幕府から遠ざけた史実がある。

 また三国志では、劉備が漢中太守に任命しようとした魏延について、諸葛亮孔明は「反骨の相あり」と危惧を抱き、重用を控えるよう諫言した。しかし、劉備は魏延の語った抱負に純朴に感動し、任命してしまう。果たして劉備、諸葛亮の没後に、魏延は北伐の最中に反逆し、斬首されてしまう。

 しかし、デモクラシーの国体にあっては、政敵を中枢から除外するのは当然ながら、完全排除するのではなく、政権の衛星として、声は聞こえるところに配置するのが賢明な布陣というものだろう。政敵を粛清するのは、旧ソ連、中国、北朝鮮といった、デモクラシーに背を向けた、国民の信任を得ない独裁政権のやることである。

 そして、9月に行われたNHK世論調査では、第二次安倍内閣の支持率は48%で、不支持率33%を上回る。野党もマスコミも、死に物狂いで重箱の隅を突いたあら探しに躍起だが、決め手に欠ける様子が伺える。

 さらに、安倍首相が悲願とする憲法改正については、日経新聞とテレビ東京が8月30日から9月1日にかけて行った共同世論調査によると、改憲に向けて各党が国会で具体的な議論をすべきとする回答は77%、対して議論の必要はないとする回答は16%で、圧倒的な差である。奇しくも、米トランプ大統領は、日韓に対して「米軍駐留費をもっと負担しろ」と、クレームをつけている。これは裏を返せば、早く自立しろという要求と解釈できる。つまり、改憲は自国内のみならず、同盟国からも後押しされている課題と言えよう。

 世論の中には「GHQの制定した押しつけ憲法」との批判から、いきなり新憲法の制定を主張する声も聞かれるが、さすがにそれはハードルが高すぎるだろう。米政府高官の中には「いまだに、あんな欠陥だらけの憲法を守っているのですか」と、驚く声もあるとのことだが、まずは地道に改憲から着手しつつ、防衛力を含め国体が十分に確立され、機が熟すのを待つのが無難な選択ではないだろうか。




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