1月17日に自民党の国土強靭化総合調査会の会合が行われ、公共工事の契約において問題となっていた、低価格入札を防止する法整備に取りかかることが確認された。これは全国の工事業者にとっては、明るいニュースである。
公共事業の激減による受給ギャップは、当然ながら建設市場に過剰競争をもたらし、地方自治体で発注される工事にすらも大手ゼネコンが参入し、地元建設業者ともども入り交じっての熾烈な価格競争を展開してきた。そのため落札結果を見ると、発注者側が提示した見積価格の70%から、酷いケースでは60%を下回る不当廉売とも言うべき無謀なダンピング契約を結んでいるケースも見られた。工事業者にとって最低限の採算ラインは85%以上であるから、もはや採算度外視のボランティア施工である。
このため、施工においての安全管理や施工結果に懸念が持たれ、中には契約後に受注業者が倒産し、入札をやり直す事態も発生した。しかしその場合でも、建設事業は様々な政策とリンクするため、工期の延伸も容易ではなく、受注業者は短期間の無理な施工を強いられることになる。
発注者側は工事の監督、検査を厳格化するなどで対処してきたが、反面では過剰な予算削減と経費節減への要求圧力から、見積価格にも実勢価格にそぐわない無理があったと言わざるを得まい。「発注者から“今度の工事は利益なしで泣いてくれ"と言われた」とする建設業者の証言も聞かれた。
この問題を解決すべく、政府をはじめ地方自治体も最低制限価格を設定し、それを下回る入札はやり直すなどの対策は講じてきたが、そもそも受注ギャップが埋められていない現況では、根本的な解決には至っていないのが現実だ。
こうした動勢は、構造改革のために公共投資を大幅に削減した小泉政権から目立ち始め、15年にわたって続いている。このため、建設業界はもとより資材・重機なども含む関連産業は疲弊を極め、災害時に現地対応に当たる地元建設業者も、作業に必要な重機・資材、人員までもが消滅の一途を辿っている。
安倍政権では、減災・防災と景気対策を合わせて「国土強靱化基本法」を制定し、本格的な国土整備と産業の建て直しに乗り出すことにしており、そのために設置されたのが、国土強靱化総合調査会である。
17日の会合では、政府の補正予算案と、国土強靱化に関する新年度予算案についてのヒアリングが行われた。その際、出席した議員からは、低入札が建設業の経営不安の原因となっている現状や、新卒者の就労希望がない現状打開に向けて、労務単価の引き上げなどの課題が提起され、ダンピングの早急な防止策が要望された。これに対し、調査会副会長の脇参議は公共調達の適正化を図る新法を制定すべく、新たに議連を発足させることを表明した。
これによって建設業界の適正利潤が確保されれば、産業として再建への道筋が拓かれる。建設工事は、土木も建築も全てがオーダーメイドの特注品であって、工場で大量生産できる規格品のようなスケールメリットは期待できない。簡単に返品や交換もできない高価な不動産であることを、国民も理解する必要があるだろう。
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