May.2008

 聖火ランナーが危ない。倉庫に隠れ、バスで移動し、厳重な警備に守られ、怯える眼差しで辺りを窺いながら聖火台を目指している。いまだかつて、このように溌剌としない聖火リレーを見たことがない。中国のチベット弾圧に対する国際的反感の結果であり、政治とスポーツは一線を画すべきという主張も霞んでしまっている。ハリウッド俳優までが五輪反対に動き出すなど、国際イベントを狙ったチベットのアピール戦略は、見事に適中した恰好で、この成功からさらに来年の上海万博では何が起こるのか、今から予断を許さない情勢だ。

 日本から得た円借款で核開発を行い、台湾をミサイルで脅し、チベットを弾圧し、反日教育を続けて我が国の歴史教科書に難癖をつけ、靖国参拝に口を挟み、尖閣諸島を不法占領する。中国は、古の春秋・戦国に培った六韜・三略、孫子の兵法にみる狡猾な戦略を地で行くような外交戦術を駆使し、まさにやりたい放題の感がある。

 円借款を停止した今日では、北京五輪、上海万博への先行投資に伴う資金流入と内需拡大から、年間7パーセントの経済成長率を背景に、資金力にものを言わせてアフリカ、インド、中東、南米にまで版図を広げて植民化をもくろむ。上海の租界のみならず、沿海部は急激な都市開発に伴って、近代的な超高層ビルが立ち並ぶ反面、内陸部の黄砂は都市部の光化学スモッグを含んで日本に押し寄せ、殺虫剤入りの有害食品が輸入される一方、著作権侵害までやってのける。そして、政権に批判的な報道関係者を閉め出し、あるいは拘束し、他国の報道内容にも圧力をかけてねじ曲げる。これが民主的先進国家のあり方なのかと、いまさらにして呆れる。

 北京五輪はチベット問題に限らず、中国が国際社会にもたらす弊害を通じて、共産政権と市場経済という異例なねじれ国体の正当性が、国際社会の中で問われる切っ掛けともなるだろう。


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