May.2011


 震災から1ヶ月が過ぎた。いまだに余震の懸念を抱えつつも、道路、鉄道、空港など交通インフラの復旧が見られたのは、明るいニュースだ。わづか1ヶ月で、ここまでこぎ着ける日本の技術力と再生力に、世界の評価は改めて高まっている。しかし、そうした評価とは裏腹に、こと経済となると別物というシビアな現実も、国内外のマスコミ報道を通じて浮き彫りになっている。
 インフラの迅速な復旧は、自衛隊、消防、警察など有事対策の専門機関による協力もさることながら、それを造り、護る専門機関である国交省東北地方整備局と、それに協力する建設業界の献身的な努力も忘れてはなるまい。
 建設業界は、業界団体である東北建設業協会連合会と東北地方整備局が「災害応急対策業務に関する協定」を結び、その傘下にある各県の建設業協会は、地元各県と同様の災害協定を結び、さらに各協会の支部は地元市町村と防災協定を結ぶなど、国から市町村レベルに至るまで、緊密な協力関係を結んでいる。これによって、災害時には必要な人員、資材や機材などを確保し、間髪を入れずして応急的な復旧活動に当たっている。これは地域の地形、地質などの状況を熟知した地場建設業だからこそ可能であり、そうした技術集団による迅速な初動体制が確立されているお陰で、素早い復旧を見たと言える。
 ところが、国外に生産拠点を移し、国外の安い人員を雇用し、国外市場で収益を上げ、国内の優秀な人員を解雇して失業率を上げてきた大企業をスポンサーとし、これに資本支配される大衆マスコミは、とかく政官業の癒着構造ばかりを喧伝してきた。さすがに、この災害協定までをも、癒着構造などと批判することはないが、その代わりに、こうした地場建設業と建設行政による地道な努力・貢献からは、ひたすら目を背け続ける報道姿勢である。
 ネット普及による双方向の情報ネットワークが発達した今日、大衆はそうしたマスコミの恣意的偏向報道に気づいており、それがマスコミ離れの一因になっている現実からも目を背けているようである。
 一方、国外マスコミといえば、日本国民の精神的な強靱さを評価する反面、原発対応で不手際を続ける東電と政府に対して厳しい目を向ける。自力で対処できず、国外に助力を請うならば、最初から原発先進国である米仏の対策チームによる助力の申し出を受け入れておけばよかったのだが、それを拒んだことで、製造元が指定した管理マニュアルや使用法に即した運用をしていなかった実態の発覚を恐れたのではないか、との疑念を与える結果となった。果たして、対策チームを受け入れた後になってから、政府は事故レベルを5から7に変更したのであるから、各国とも「日本政府に騙された」と怒り心頭で、日本バッシングが起こるのも不思議ではない。
 しかも、G7による円高抑止のための為替介入を、G20でも継続する方向で確認されたことから、今後も円安基調は維持される見通しだ。これにともない、日本製品の価格競争力の高まりが見込まれ、それに対する各国の警戒心が強まっている。その反面で、震災による日本国内の物資不足と復興需要を見込んで、他国企業は自国商品を高く売りさばくチャンスでもある。その気運を高める上では、原発事故と放射能汚染は、日本製品への不買運動を正当化するための、恰好の材料となるだろう。
 被災地では、宮城県知事が、過度な自粛をやめて経済消費を増やし、東北にも波及効果をもたらすべく国民生活・経済の平常運転を首相に要望し、岩手では地元造り酒屋が、花見の自粛をやめて、岩手産地酒の消費を全国にアピールするなど、経済復興に向かうべく前向きな姿勢を見せている。したがって日本は、国内外のマスコミ報道に振り回されず、国内の地産地消気運を高めて、20位にまで落ち込んだ経済力の再建を目指す決意が必要だろう。




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