MAY . 2014

韓国南西部の珍島で、修学旅行生らを含む475人が乗船した韓国船「セウォル号」が沈没した。この事故で179人は救助されたが、それ以外は安否不明で、死者は日々増加している。

 この事故原因については、午後6時30分の出港予定が濃霧のために遅れ、午後9時頃に出港したことから、この遅れと濃霧が事故につながったのではないかとの指摘や、建造から20年近くが過ぎた中古客船を、10時間以上にもわたって長時間運航させたためなど様々な憶測がある。

 国交省の調査によれば、このセウォル号は1994年6月に日本林兼造船所が建造し、総トン数5,997トン、定員804人の規模で、18年にわたり日本国内で無事故で運航された。その後、2011年10月に韓国に導入されたが、新造時から6,825トンに改造され、800トン以上も重量が増えた上に、定員も921人に増員されていたことが判明。このため、重心が高くなり、横転しやすい構造になっていたといえる。

 しかも、事故時に指揮を執っていたのは、未熟な3等航海士だったという。実際に、事故時は不自然な急旋回の航跡が確認されており、しかも船底には座礁跡のような損傷も見られる。構造的な問題として見るならば、こうした無謀な改造の上に航海技術の未熟が重なったと考える方が自然だろう。

 さらに構造的問題だけでなく、被害を拡大した要因としては備品のメンテナンスや、緊急時の危機管理体制の不備も看過できまい。事故時に船に備え付けられた救命ボートは、1台しか機能しなかったという。全てが正常に機能していたなら、全ての乗客を乗せることができたと見られる。また、救命胴衣も270個あまりが船尾に保管されていたため、横倒しになって浸水し始めた船内では、身動きが取れず救命胴衣を確保できなかった乗客もいたと見られる。

 緊急時の避難誘導体制も看過できまい。救助された乗客の証言では、遭難信号が確認されてから沈没するまで約1時間30分の間、避難を呼びかけずに「救命胴衣を着用し、そのまま動かないように」とのアナウンスが流されていたという。これが避難の遅れにつながったことは確かだろう。

 そして、あり得ないことだが、乗客に避難誘導をすべき船長と機関士が、あろうことか乗客よりも先に脱出し、救助されていたことが明らかとなったのである。警備艇に救助された乗客によると「警備艇のレスキュー隊から、船長が私よりも先に乗ったことを知らされた」と証言し、別の乗客も「私より先に船長が救助船に乗っていた」と明かしたという。このため、海洋警察庁は、この船長を船員法違反の容疑で逮捕する方針だ。

 これだけの過失が揃ってしまうと、もはや不運な事故というよりも、人災と言わねばなるまい。アシアナ航空事故の時もそうだったが、航空機メーカーに責任を転嫁しようとしたり、米当局による事故調査結果の公開を阻止しようとするなど、韓国の対応はとかく人道的に問題を感じざるを得ない場面が見られるが、主権を持って独立国として運営し、国際社会においても種々の国際機関の要職に同国人が就任している立場を自覚し、国際社会が納得できるような責任感ある対処を望みたい。




過去の路地裏問答