January.2010


 「友愛」を国是としてスタートした鳩山新政権だが、事実上は小沢独裁政権の様相が強まり、中国の習近平国家副主席と天皇との拙速な会見を強引に強行するなど、迷走を極め、混迷を深めつつある。
 友愛の理念は、過度の拝金主義とそれを求めて争う過剰な競争主義に陥った英米式経済システムから脱却し、共同体での相互扶助によって互いに生かし合いながら、日本人が持っていた「人生に対する美観」を取り戻そうという原点回帰の発想と解釈される。軍備費負担から逃れるために、アメリカ隷属主義に突き進み、国内の経済と社会秩序を壊滅させた小泉構造改革の軌道修正としては、間違った方向性ではない。
 普天間基地移転問題において、煮え切らない態度で米政権を振り回す外交戦術も、その延長線上で見れば不合理とは言えない。沖縄県内の広大な開発地を占拠された上に、毎年5,000億円の思いやり予算を投じて米軍の核傘下にあり続ける日米安保体制も、戦後60年を過ぎて、国際社会の地図が塗り変わりつつある情勢から、そろそろ見直す時期を迎えたとも言えるだろう。
 これまで、敵対政策を採ってきた北朝鮮はもとより、反日教育と領土問題で緊張状態にある中韓との確執が、東アジア共同体構想によって解消し、その中で安全保障も確保されるならば、米軍による核保護の必要はなくなる。その構図を鳩山政権は描いているのだろう。
 しかし、本当にそうなるだろうか。かつての東アジア共栄圏構想は、欧米列強やロシアによるアジアの植民化を、日本主導で軍事的に排除する構想だったが、これから直面する東アジア共同体は、ユーロ圏のアジア版のような性格が強く、しかも6カ国協議でアメリカのお膳立てにより議長国となった中国が、そのポジションを維持したままであるところに大きな違いがある。
 中国の高度経済成長は今なお続いており、一人っ子政策による人口抑制策を見直す余力も見込まれている。対して、日本国民は出生率がわずか1.37で、人口は高齢化する一方、生活苦などを理由に年間3万人が首を吊っている。米ドルが衰退する反面、中国元は強くなり、中国マネーは行き場を模索し、その一部は日本の不動産市場に流入している。内需が弱く、デフレスパイラルで消費経済が衰弱の一途にある日本市場で、中国人観光客の消費は旺盛であり、さらに就業目的での入植者も増加するなど、ただの消費者に留まる気配はない。中国のGDPは、来年には日本を越えると予測される一方で、日本では景気対策もろくに行われず、失業率も貧困率も過去最高記録を保持したままだ。
 つまり、日本と中国の現状は明暗が鮮明であり、日本はまさに「20年後に消滅する」であろう国家として衰退の道を辿っている。しかも、まともな軍備を持たないばかりか、外国人参政権を容認することで、民族自決の原則をも放棄する方向に進んでいる。
 600人もの国政関係者を引き連れ、天皇までも外交の場に呼びつける小沢幹事長の振る舞いは、権勢示威が目的などとする報道もあるが、この現実を直視する限りは見当違いも甚だしい。単なる地方大名の参勤交代でしかなく、日出ずる国として始まった外交が、いままさに日沈む国としての隷属外交に突き進む行軍でしかない。かくして、日本は東アジア共同体によって、かつてのアメリカ合衆国日本州から中華人民共和国日本省へとそのポジションを変えつつあり、「友愛」を以て隣国支配を受け入れようとしているのが真実の姿ではないか。



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