November.2008

 読売新聞社が10月4、5日にかけて全国の3,000人の有権者を対象に行った世論調査によると、民主党に政権を任せても良いとの回答が58%に上ったという。その中でも特に興味深いのは、自民党支持者でありながら民主党政権を容認する回答が38%だったことだ。
 調査は3,000人を対象に面接方式で行われ、うち回答を得たのは1,787人。それによると、民主党に「政権を任せてもよい」とする回答は58%で、「そうは思わない」との回答は38%だったという。さらに詳細を見ると、民主党支持層の95%が民主党に政権を任せても良いと回答。これは、支持者として当たり前だが、無党派層61%のほか、さらに自民党支持層の38%までが「任せてもよい」と回答したのは注目に値する。
 この数字は誤った構造改革を強引に進めて、国民経済を疲弊させた小泉政権以降の自民党の経済政策に対する、経済界の批判と離反の現れと見ることができるのではないか。幾つかの経済団体関係者らは、「緊縮財政で業界が疲弊しているのに、前回参院選では強圧的に選挙協力を求められ、その理不尽な要求に業界内での反発が一気に強まった」と口を揃えた。景気対策を行うどころか、スペシャル301に堀してアメリカンスタンダードに迎合し、競争する必要のない業種までが不必要な国際競争を強いられている上に、政府の支援策は打ち切られて見捨てられたとの憤懣の現れだろう。
 もちろん、社保庁批判や、民主党が争点として指摘した特別会計に対する不満、その他食品衛生問題への対応に対する庶民の批判も反映しているだろう。その上にリーマンブラザーズ破綻と、それに伴う株価暴落による国際金融不安が追い討ちをかけた。それらの事情も含めて、自民党と二人三脚であったはずの経済界までが、自民党には政権を一度降りてもらうのもやむなしとして、距離を置く姿勢に傾いているものと思われる。
 しかしながら、それに代わる与党としての民主党に政権担当能力があるのかといえば、「ある」との回答は46%で、「ない」との回答は47%と拮抗している。無党派層でも「ある」との回答46%に対し、「ない」との回答は44%で、やはり評価は分かれた。
 つまり政権交代の結果、民主党が政権党となることは容認するが、その政権能力については未知数で、半信半疑ということだろう。それに対し、自民党の政権能力については「ある」との回答が67%となっていたというから、やはり基本的には政権党としての実力は認めているようだ。
 そして、麻生首相に対する感想については「良い印象」とする回答が57%で、「悪い印象」との回答は36%に留まっている。反面、民主党主の小沢氏については、「良い印象」はわずか35%で、「悪い」は59%にも上っている。
 自民党には嫌気が注したが、麻生氏は憎からず。さりとて、民主党に政権を任せても良いが、実力のほどはあまり期待できず。まして、小沢氏が党首ではイメージが悪い。それでも自民党政権よりはマシといった、消極的な評価が伺われる。
 わずか2,000人足らずの回答であるから、それほど深刻に捉える必要はないかも知れないが、さらに分母を増やして再調査したところで、結果に大きな変化が見られる保証もない。
 野党各党は、11月2日を投票日とする選挙日程を前提として、すでに事実上の選挙活動を開始しているが、自民党内では今なお解散時期について、追加補正予算の成立後や、新年度予算成立後などと諸説が聞かれる。読売新聞の調査結果を見る限り、自民党の不人気に反し、個人的に人気がある麻生氏としては、補正予算と追加の景気対策の効果が現われ、これによって有権者の自民党への評価が回復し、期待感が高まる一方、野党の選挙資金の枯渇も狙って、時間を稼ぎたいとの思いがあるかも知れない。(10月10日)


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