DECEMBER . 2013

国交省が、国土のグランドデザインを描く長期計画の策定に乗り出した。かつては四全総、五全総と呼ばれた長期計画に相当するもので、ようやく日本の国土と社会の新たな将来像が描き出されることになる。

 この長期計画は、2008年に策定された国土形成計画を最後に、見直しも更新もされないまま今日に至っている。小泉政権による聖域なき規制緩和と構造改革によって、公共投資が激減されて以来、その路線を引き継いだ後続内閣には計画を推進する姿勢は見られなかった。さらに民主政権に交代してからは、「コンクリートから人へ」とのスローガンで、公共投資そのものを廃絶せんばかりの路線転換に至り、計画は事実上、頓挫した状況に置かれ、国土の全体像を俯瞰する視点は失われた。

 これに困惑したのは全国の自治体である。都道府県も市町村も、みな無計画にまちづくりを進めているわけではなく、独自の長期計画に基づいているが、それらの計画は政府の国土計画に整合性を持たせた内容で策定されている。概ね10年を計画年限とし、それを3年から5年のサイクルで見直し、修正する中期計画によって具体化する。いわば計画経済の手法だが、政府の長期計画が頓挫状態で棚上げとなっていたため、自治体も長期計画の停止、棚上げを余儀なくされる事態となった。

 そして、これでさらに困ったのは国土づくりに直接携わり、ものづくり大国・日本の経済を支えてきた建設業や製造業である。国も自治体も向こう10年の計画が示されないため、今後の公共投資の総量が展望できず、予算総額や需要が試算できないために経営計画が立てられない状況に追い込まれていた。

 今回、計画策定に向けて「新たな国土のグランドデザイン構築に関する有識者懇談会」の初会合を主催した国交省の考えでは、2014年春までに内容をまとめる方針だ。計画の目標は「人口減少・高齢化社会においても持続可能な世界最高水準のゆたかさと安心の確保」と設定しており、国土政策によって少子化に歯止めをかける狙いだ。

 そして、今後のまちづくりは、人口減少によって人口密度の低下と地域的偏在が同時進行する情勢を踏まえ、コンパクトシティとしての拠点づくりを中心に、情報通信と交通のネットワーク化を進めて、国際的にも埋没しない新たな価値を生み出すことをポイントとしている。

 建設業は構造改革以来、「コンクリートから人へ」を経て、アベノミクスに至るまでの8年間に及ぶ弾圧により、経営者らは深いトラウマを抱え、今後の建設需要には懐疑的となり、人員・機材の拡充など経営規模の拡大や設備投資には、いまだ二の足を踏んでいる状況だ。これが今日の建設需要に反して人員・機材の不足というミスマッチの原因となっているが、こうした長期計画による将来展望が彼らの背中を押すことで、本来あるべき適正な業界規模へと再生していくことを望みたい。




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