December.2009


 前原国土交通大臣の強引な公共事業打ち切り、予算編成作業からの新人議員閉め出し、財務官僚のお膳立てで行われた事業仕分け、普天間基地移転に関する政府関係者のちぐはぐな見解、日米首脳会談の合意を翻す首相発言など、民主政権は紆余曲折と混乱のカオス状態にあり、発足してからものの半年で支持率は10%も下がっている。そこに亀井国民新党の保守連合の策動が持ち上がったことで、政界は早くも地殻変動の兆しが見え始めた。
 閣内不一致の言行は、まさに保守、中道、左派の三派連合によるひずみが露呈した結果だが、その上にマニュフェストありきの原理主義に凝り固まり、地域の要望も関係省庁の説明も聞く耳持たずという融通性の乏しさを見るにつけ、政権運営の先行きが思いやられる。党名こそ“民主”を標榜し、国家理念は“友愛”を掲げながらも、現実にやっていることは非民主的な独裁政治である。ここまでマニュフェストにこだわるのは、達成度の低さが批判対象となり、次期参院選での争点にされることへの強迫観念があるからだろう。
 民主党の大勝と政権誕生の立役者となった小沢幹事長は、引き続き来夏の参院選でも陣頭指揮を執る予定で、すでに下準備を進めている。狙いは次期参院選でも単独過半数を確保することで、政権基盤を安定させることだが、同時に政権内での自らの影響力をさらに強化する狙いもあるだろう。そして次期統一地方選で、大多数の首長と地方議会与党が民主党に交代すれば、国政と地方のねじれ現象は解消され、国内における民主勢力は津々浦々にまで浸透し、盤石なものとなる。
 こうなると、三派寄り合いの仲良しクラブであった民主党は、事実上は小沢独裁政党へと豹変し、誰が代表に就任しようとも、その政策・人事などの全権を陰で支配する独裁体制が出来上がる。しかし、それを菅、岡田、前原の三氏をはじめ、党内主要グループが容認し、大人しく従うとは思われない。そのため閣僚人事で露見した権力抗争が再燃し、激化することが考えられる。それによって、反小沢勢力の離反による党分裂の危機も生じてくるだろう。
 そうした将来像を見越したかのように、連立与党である亀井国民新党の保守連合構想が持ち上がった。民主党は、党外にあっては公共事業の執行が見送られたり、公共事業費補助を打ち切られた地方の怨嗟が高まりつつある。とりわけ、前原大臣の手法は全国の地方を真っ向から敵に回すやり方で、地方票を自ら投げ捨てているようなものだ。
 一方、党内にあっては、選挙区の信任を得て当選しながら、予算編成への関与を拒絶された新人議員と、それを支持した選挙民の反発も大きい。単なる議席要員として利用されているだけの新人を、地元選挙民がそれでも支持するのか、そうした民主党のやり方に賛同し得るのか、甚だ疑問である。
 そして経済界は、内需も官需も創り出す気がなく、ひたすら外需依存の民主党の無策に当初から不満を募らせている。そこに現実味ある経済政策や景気対策を行う政党が出現すれば、そちらに靡くのは自明だ。
 民主党を取り巻く諸情勢を見る限りは件の如しで、出来損ないのマニュフェストにしがみつき、曖昧な友愛思想で誤魔化しつつがむしゃらに突っ走れば突っ走るほど、蟻地獄にハマッていく様が見えてくる。転じて、その窮状を尻目に、保守連合という新勢力の台頭により、政界地図が再び塗り替えられていく将来像も見えてくる。
 ちなみに自民については、すでに政権が転覆し、党財政も巨額の選挙資金借り入れで転覆しかけている上に、党首までが自転車行脚などと軽薄な自虐的貧乏自慢の果てに、転倒しているような軽率政党には、明るい未来は感じられない。



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