JANUARY.2012

 国交省関東地方整備局が建設を継続するとの方針を示し、一都三県の自治体も早期完成を求めてきた八ッ場ダムについて、前国交省大臣として建設を強引に中止した前原政調会長は、今なお頑なに反対を表明している。

 民主党の国土交通部門会議が、ダムの建設継続に対する疑問点などを指摘した意見書を、政調役員会に提出し了承されたことから、これに対する政府としての明確な回答が得られない限りは、ダムの本体着工は容認できないとしている。しかし、これは民主党内における身内の手続きでしかない。

 こうしたダム建設を含め、公共投資といえば大衆迎合マスコミと、その寵児となって売名し、講演料と出版物の印税を稼ぎたい曲学阿世学者によって、無駄の象徴として印象操作され今日に至っているが、世界恐慌への対策として、アメリカで行われたニューディール政策の結果、不毛の砂漠にラスベガスという有数の一大カジノ都市が誕生し、繁栄していることを考えれば、公共投資がもたらす波及効果はいまさら多言を弄するまでもない。

 それでも合理的な根拠を示すことなく、頑なに反対し続ける前原政調会長の胸中にあるのは、今や面子と意地だけではないのだろうか。かつて党代表だった当時に、偽メール事件に翻弄され、党の面子を潰した前歴があるだけに、政策判断のミスをこれ以上、認めたくないとの思いがあるのではないか。

 しかし、これによって得たものは何かといえば、地域住民の混乱と当惑、支出削減による資金循環の停滞、首都圏への渇水対策の後れ、治水対策の後れでしかない。財源的裏付けや政策的根拠のない空想的マニュフェストに拘って、得たものが損害であるならば、損害賠償を求めなければならない話である。

 かくして、民主政権となって2年が経過し、その間に首相は2人が辞任し3人目となるが、この間に自公政権時代の2倍の国債を発行しながら、円高対策も景気対策も満足に行わず、成果も得ていない。内需は冷え込み、庶民の所得も企業収益も激減する一方である。

 反面、英米のハゲタカファンドや中国の俄か資産家らの投資家によって作られた、国際競争において最も不利な歴史的円高の渦中に、TPP参加で国内企業に国際競争を強いるこの政権は、本気で国家経済を再生する気があるのだろうか。

 しかも、内政においては、消費税増税、年金支給開始年齢引き上げ、医療費窓口負担など、国民から搾取し消費を抑制するという不思議な「景気対策」に猛進しようとしている。

 東北震災の復興対策にしても、5全総に続く新たな国土総合計画が提示されないために、全国の自治体が地域計画を策定できず、被災地の復興計画もいまだに決定できないまま年を越してしまった。被災者の一部は、自国内の技術力あるハウスメーカーや建築業者でなく、他国の建築会社が施工した、建て付けが悪く防寒対策も施されていない仮設住宅で、凍えながら正月を迎えている。

 先に国王、王妃夫妻が新婚旅行で訪日したブータン国に2億円を援助し、彼国の政策を真似て、政府は国民の幸福度指標を作成することを発表したが、年間に3万人が人生に絶望して自殺する国家の国民の幸福度指標とはどんなものになるのか、予測の付かない人はいないのではないだろうか。




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