February.2011


 昨年から日本列島は大寒波に覆われ、全国各地で前代未聞の大豪雪に見舞われた。福島県では、国道の除雪が追いつかずに300台の自動車が立ち往生し、ドライバーたちはクリスマスの聖夜を家族とともに過ごすことも出来ず、車内で一夜を明かす羽目になった。鳥取では積雪の重量によって電線が切断、道路の除雪も追いつかずに集落が孤立。住民はロウソク生活を強いられる事態となった。
 100年前ならいざ知らず、ITによるグローバル世界の現代にあって、ロウソク生活を強いられるなど誰が予測しただろうか。福島で車内泊を強いられたドライバー達も、一様に疲労の色は隠せず、世間がまばゆいネオンに囲まれ浮かれているときに、殺風景な雪景色の中で空腹を抱え、下手をすればガス欠で凍死するか、あるいは排気ガスの逆流による中毒死の危険と隣り合わせに過ごした一夜を、恨めしそうに振り返っていた。
 大寒波の猛威は、その後も弱まるどころか勢力を増大し、従来は積雪とは縁の薄かった九州、沖縄、四国までが積雪に見舞われ、都市交通機能は麻痺し、多くの人々が足を奪われたのみならず、氷雪に足をすくわれて病院に搬送される事態となっている。
 こうしたとき、とかく問題視されるのは、道路管理者の道路維持管理体制だが、小泉政権に始まり民主政権に継承されている露骨な建設業壊滅政策により、2010年度予算はおよそ19%、2011年度予算案では実質20%に届く予算カットであるから、現地事情を把握し、現場対策に当たる各地の国交省河川国道事務所が、いかに躍起となったところで追いつかないのは無理からぬところである。非は政治にあって行政にはない。
 かくして、建設業排斥政策の効果は覿面で、再投資、再生産、再雇用を生まない、民主党の独善的な福祉浪費政策のために、国内の物流は滞り、国民は時代に逆行した「かまくら」生活を強いられるといった有り様である。
 こうした異常気象によるインフラ障害は、国内に限った話ではない。昨年末にはモスクワで、豪雪によって電線が切断されたことから4,000世帯が停電。グロモフ州知事は直ちに復旧させると楽観的に大見得を切ったものの、現実は深刻で事態は好転せず、激怒したプーチン大統領からは「年始は停電家庭で迎えろ」と厳命され、側近と手分けをして停電世帯を訪問しながら元日を迎える憂き目にあっている。年が明けて復旧を完了させた際に、大統領からは「普段からもっと現場に足を踏み入れ、現地状況を把握しろ」と叱責されたという。沖縄米軍基地問題にしろ尖閣諸島問題にしろ、とかく現地入りを避けて現場を無視し、机上の空論に明け暮れる我が国の政権にも聞かせたい言葉である。社会党・村山内閣の時代に発生した阪神淡路大震災から16年。自衛隊の出動に二の足を踏んで、二次被害が拡大したが、我が国はそこから何を学び、そしていまどんな教訓を生かしていると言えるだろうか。
 さらに、自然現象の異常な猛威は豪雪だけではない。最近ではブラジルやオーストラリア、その他東南アジアで集中豪雨が発生し、人的被害だけでなく農業被害も拡大している。夏にはシベリアで40度に至る高温となり、カナダ、アメリカ、中国では干ばつが発生したため、世界的に穀物不足の不安が論議されてきている折柄でもある。食糧自給率が40%にも満たない我が国にとって、これらは重要な食糧の輸入先であるが、農業生産を上げるための農業基盤整備費を、逆に60%も削減して米農家にだけ生活保護を与える民主党は、TPP加盟によってさらに自国農業の命脈を根底から断ちきろうとしている。この6月には国内農政を含めて加盟に向けての方向性を決めるというが、その方向性とは、本当に国が栄え、国民が安心できる方向性と言えるのだろうか。


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