AUGUST . 2017

かつて支持率50%を越え、一強と評されてきた安倍内閣の支持率が、7月に行われた時事通信の世論調査では29.9%に下がり、危険水域と指摘されている。調査によると、不支持率は48.6で、政権発足以来、最高であるという。しかし、各党の支持率を見ると、自民党が21.1%、民進党は3.8%。公明党は3.2%、共産党は2.1%、日本維新の会は1.1%で、野党の支持率が上昇しているわけでもない。むしろ、支持政党なしが65.3%で、最高となっている。森友・加計学園問題で倒閣を目指す野党も、保身を計りたい与党も、そしてセンセーショナリズムに傾倒するマスコミも、本来注目すべき点はここだろう。

 安倍内閣の支持率急落の原因は、森友・加計学園疑惑に対する説明不足とされている。だが、これによって政権交代できる政党があるかといえば、追及する野党にもまるで期待できず、そのために国民が政治に希望を失った結果が「支持政党なし65.3%」だろう。

 支持率が3割を切れば危険水域とはいうものの、倒閣の気勢を上げる野党の支持率は3割どころか、いずれも5%以下で、かつての森内閣レベルである。倒閣に成功したところで、政権運営を託せる状況には到底ない。かつては自民への批判票が、共産党へ流れた時期もあったが、今はその兆候すらもない。しかも、二大政党制に可能性を見出そうとして選択された旧民主党の現在は、民進党(旧民主党)党首の国籍問題もあって風前の灯火である。

 一方、政権の介入と、それに基づく行政の不公平な忖度を疑惑視する野党・マスコミの追及に、安倍首相は政権のリーダーらしからぬ投げやりな姿勢や、感情的なリアクションも見られ、誠実な答弁が見られなかった。これに国民が違和感と不信感を覚え、不自然な尊大さを感じたのも事実だろう。庶民感覚としては、問題がないなら、野党・マスコミが持ち出す怪しげな証言や、かつての偽メール事件を彷彿とさせるメール問題に、反証を示したり、関連資料を全て開示すれば良いのではないかと感じるだろう。

 そしてマスコミは連日、この学園問題で大騒ぎし、挙げ句にはかつて従軍慰安婦捏造報道を認め、国民の批判を浴びた朝日新聞などは、7月19日に日本ジャーナリスト会議(JCJ)から「JCJ大賞」まで受賞している。

 こうした真偽が危うく胡散臭い問題を、確定的事実であるかのように報じ、中立であるべきマスコミでありながら、倒閣目的が露骨に感じられる報道姿勢には、かつての「椿事件」の異臭も漂う。これはテレビ朝日の椿貞良取締役報道局長が、民放連の会合で「自民党政権の存続を絶対に阻止し、反自民の連立政権を成立させる手助けになる報道を」と提唱し、意図的な偏向報道に猛進したため、放送法違反で放送免許取消し処分が検討された事件である。

 第一次安倍内閣の退陣理由も、疾病だけでなく、こうしたマスコミの偏向報道が強く影響していたとも見られている。安倍首相の当初の投げやりな対応は、その記憶から「またか」というウンザリ感と、時折見せた直情的な答弁は、退陣当時の立腹が胸中によみがえったためではないかとも思える。

 我が国は国外にあっては、我が国にミサイルを向けながら、アメリカをはじめ世界を脅迫する北朝鮮と、我が国を含む周辺国への侵略を目指す中国の脅威に晒されている。国内にあってはいまだワーキングプアと格差解消が進まないといった、景気の根底を揺るがす問題を抱えており、内憂外患である。それから見れば、国内外にともに何らの影響力もない、卑小なローカルの問題で、国会を振り回して政争に明け暮れている場合ではないのではないか。国会は政治家のオモチャではないのである。「支持政党なし65.3%」の結果からは、そうした有権者の声が聞こえてきそうだ。




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