MAY.2013

帝国データバンクが発表した4月の景気動向に関する調査結果によると、建設業の景気動向指数は46.4ポイントとなり、前月に比べると1.1ポイント改善したという。また、国交省による大手建設業の売上げ調査では、国内売上総額が12兆3,339億円で前年比3.2%増となり、2007年以来5年ぶりの増加であるという。こうした動向を反映してか、総務省の調査では、前年度の建設業就業者数は505万人で、2011年度より7万人増加したという。公共事業の乗数効果を狙ったアベノミクスの効果は、着実に現れていると言える。

 帝国データバンクの景気動向調査は、50ポイントを分岐点に0から100ポイントまでの数値評価で判断する手法で、不動産業では2ポイント増の48.8ポイントになったという。これは5カ月連続の改善とのことで、公共事業用地の活発な取得と流動化への期待感が反映していると見られている。

 実際に、住宅着工戸数に関する国交省の調査発表では、前年度の新設着工数は6.2%増の89万3.002戸となり、3年連続で増加しているとのことで、建設・不動産関連は堅調な回復軌道に乗っている様子が窺える。

 この動向は大手建設業界の売上げに反映しており、2012年度の土木建築工事関連の売上げ総額は9兆2.762億円で、前年度比4.3%の増加となった。公共工事と民間工事の比率では、公共工事は2兆125億円で6.4%の減少に対し、民間工事は7兆2.637億円で7.7%と大幅な増加を示した。

 背景としては、大幅な金融緩和と住宅・不動産に対する消費税増税前の駆け込み需要が反映しているものと見られる。

 こうした動向を受けて、建設業従業者数も500万人台へ回復した。従業者数は、小泉政権の構造改革で大幅な公共事業予算の削減が始まった1997年以来、減少傾向を辿り続け、平成11年度には498万人と、500万人を下回っていたが、12年度は505万人へと回復。これによって、完全失業率は4.5%から4.3%へと、0.2%改善した。

 アベノミクス効果が着実に成果を上げていることは、これらの数値が示している。今後はさらに、大手ゼネコンだけでなく、地方建設業者への波及効果を高めるため、与党自民党は「国等が行う公共工事についての地元建設業者の受注の確保等に関する法律案」を議員立法で成立させる方針だ。

 この法案は国や自治体、団体などが発注する1億円以下の工事契約は、施工地区に本店、本社機能を持つ地場建設業者に特別の配慮をすべきという努力義務を事業発注者に課すもので、ゼネコンに対しても地元建設業者との下請け契約や、地元企業からの資材・機械器具調達に努めるよう求めることが規定されている。

 アベノミクスが放った2本目の矢は、ゼネコンから地方の中小地場建設業まで、幅広くセーフティネットが張り巡らされ、さらに国土強靱化法により、向こう10年の公共需要も約束している。後はゼネコンや地場企業、関連産業がそれにどう応えていくかが問題で、安倍政権が目指すデフレ不況の脱却に、公共事業が役割を果たせるかどうかはそれで決まるだろう。




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