JUNE.2012

 国会の東京電力福島第 1 原発事故調査委員会に、海江田前経済産業相が参考人招致され、事故当時の官邸内の混乱ぶりを証言した。情報が決定的に不足し、官邸、経産省、東電の三者による伝言ゲームという極めてあやふやな状況だったことを明かし、菅直人前首相の不必要な現場への介入についても批判。この体制はダメだと焦燥感を抱いていたことを明言した。

 これは世界を巻き込んだ原発事故の被害拡大は、菅直人前首相による人災だったことが白日の下に暴露されたようなものである。 海江田前経産相は、事故直後に原子力災害対策特別措置法に基づく「原子力緊急事態宣言」の発令と、原子力災害対策本部の設置を菅前首相に求めたが、その法的根拠がどこにあるのかを反問されたため、それを探ること 1 時間。首相を説得し、理解を得るのに時間がかかったために対応が遅れたという。

 つまり菅前首相は関係法令に無知だったわけだが、にも関わらず「私は原子力にメチャクチャ詳しいんだ」と豪語し、15 日には早朝から東電本店に乗り込んで関係者を激しく叱責。不必要に対応を遅らせたこの軽率な行動について、東電側は違和感を覚えたと証言していたが、海江田前経産相も「初めて菅氏の演説を聞く人が違和感を持つのは当然だ」と批判。

 また、現場での采配に追われていた福島第 1 原発吉田昌郎所長 ( 当時 ) に、菅前首相がわざわざ直接連絡し、要らざる干渉をした行為についても「行き過ぎだった」と指摘。現場の最前線にいる責任者が指揮を執るべきなのに、首相の質問で時間がとられるのは芳しくないと批判。

 そして、玄海原発の再稼働延期の原因についは、菅前首相が再稼働の条件として、前後の脈絡もなく唐突にストレステストの導入を表明したことにあると明言。この決定によって、全国の原発の再稼働も困難となり、全国民と企業が節電を余儀なくされ、生産活動の停滞が懸念されている。

 国難に当たる一国のトップリーダーとして、またその解決に当たる政権として、いかに人も体制もお粗末だったかは、これを見れば明白である。しかも、その後には国際会議の場で「ソーラーパネルを 150 万世帯に設置します」などと、裏付けもない無意味な宣言をして実務者を慌てさせるなど、気まぐれの思いつきと口先だけの宣伝だけで政務を遂行してきた無責任さが露呈した。

 そうした人物が、資源・エネルギー問題のエキスパートと崇められ、党最高顧問に迎えられていることを、国民はどう解釈したら良いのだろうか。その人事を発令し任命した野田首相の思念を、国民はどう理解したら良いのだろうか。

 今年は沖縄返還 40 周年の年だが、沖縄基地移転問題で県民とアメリカ政府を騙し、イラン封鎖に日本を含めて世界が協力している国際情勢に反して、イランを単独訪問し顰蹙を買うなど、外交で失点だらけだった鳩山元首相が返還記念式典に出席。なおも県外移設を口にしたが、担保無き「トラスト・ミー」発言の無責任な言動は、菅前首相と共通している。このように外交センスがゼロと思われる鳩山元首相が、外交のエキスパートと崇められ、党最高顧問に迎えられていることを、国民はどう解釈したら良いのだろうか。その人事を発令し任命した野田首相の思念を、国民はどう理解したら良いのだろうか。

 そして、円高デフレで企業収益も個人所得も回復できない現状にありながら、消費税増税に盲進し、経済政策の基本中の基本に真っ向から逆行する野田政権を、国民はどのように解釈すべきなのだろうか。




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