建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2011年4月号〉

基調講演(平成23年3月7日)

地域再生フォーラムZ ―― 社団法人 空知建設業協会

基調講演 公共事業が地域を救う

講師:京都大学 都市社会工学専攻 教授 藤井 聡


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 おかしいといえば、先ほどの菅直人と同じですが、完全におかしいのか、何か別の意図があるかですよ。二つに一つしかありません。とにかく道路行政をぶっ潰したいという邪心を持っているか、単なる頭がお悪い方なのかのどちらかですよ。しかし、一応、彼は大手新聞の入社試験に合格しているし、大学の教授をやっているのですから、あながち頭がお悪いというわけではないのだとしたら、可能性は一つしかないですよね、知りませんけど。
 可住面積は滅茶苦茶に狭いのです。ところが、ヨーロッパやアメリカは可住面積が広いのです。アイオワなどは見渡す限りコーン畑で、いくらでも作れるわけです。可住面積だらけですよ。したがって、分母が日本は滅茶苦茶少ないのです。アメリカやヨーロッパは大きいのです。だから分母の大きなヨーロッパ、アメリカでは数値が小さくなり、分母の小さな日本は数値が大きくなるのは当たり前ですね。このように、かなり意図的に作られたグラフで。
 普通は道路を何の延長で比べるかといえば、クルマの多い国には道路は必要ですよね。逆にクルマが全く無い国であれば、道路などは要りませんね。というわけで、クルマの保有台数当たりの道路の長さで比較するのが、非常に合理的な比較方法なのです。これは道路交通工学では北大でも東大でも行政でも、資料には自動車1万台当たりの道路の長さで国際比較しているグラフが載っているのです。
 それで見ると、ご覧の通りで日本は全然、道路がないということです。クルマは滅茶苦茶に多いのに、道がないという国なのですよ。いまさっきの先生などは「日本は道路があって、道路王国だ」と言いますが、どこが道路王国なのか。道路無い王国ではないですか。本当にもう無茶苦茶なのですよ。
 日本は道路が短いし、短いだけじゃなく細いのです。2車線の割合が、日本は滅茶苦茶高くて、6車線の割合は滅茶苦茶に少ないのです。これはもう韓国にすら負けているのですね、道路の太さでは。ですから、先進国の中でも、一番、道路が脆弱な道路無い王国なのです。
 クルマは多いのに道路が短いと、何が起こるかといえば渋滞ですよ。これは平均速度ですが、20kmから30kmぐらいで走れるのですが、東京では19kmなのです。だから渋滞なのです。全然道路が足りないということです。にも関わらず、こんなグラフばかり掲げて「道路は要らない」と言われているのです。
 小泉純一郎さんは、そもそも田中派に苛められてウジウジ思っていたので、どうやって報復しようかと思っていたわけで、ものすごい戦略家ですからね。
 それで、徹底して公共事業は悪いという意見で政策を行ったわけです。その利害がメディア側と合ったのですよ。メディア側もとにかく政府批判が大好きですからね。政府批判をすればするほど売れますから。それでメディアと結託して、国民全体が踊ってしまったのです。バブルは終わって踊るところがなくなったところに公共事業不要論が出たので、取りあえず踊っておこうという感じで。それで国中が小泉先生の意図だけとは言いませんが、全国で道路が要らんということになったわけです。そんな時に、科学者然とした輩がこんなグラフを出したとしたら、失礼ですね。そうしたらますます「やっぱり道路は要らない、要らない」ということになったわけです。
 それでその時にボーッと見ていた民主党が、「早く政権が欲しいな、欲しいな。あ、そうか、いま国民がみんなこれで踊っているから、コンクリートから人へと言えば、たくさん票がもらえるのじゃないだろうか」とやってみたら、本当に大量に票を取ってしまった。「僕は政権とってしまったし、コンクリートから人へと言ってしまったから、予算は18%削減」ということで、去年は18%削減になってしまったのです。その時の約束が、18%の削減はするけれども3年間は据え置くということだったのに、「やっぱり、もう10%削減」という結果で、「お前、話が違うだろう」というべきもので、もう滅茶苦茶なんですね。これはもう、いま話したことでどなたかに分かりやすいマンガを書いて頂ければ、すぐに分かると思います。これらは合理性も何もあったものじゃないですよ。ただのギャグですよ。松本人志の「大日本人」級のギャグですよ(笑)。要するに吉本新喜劇級なのですよ、いまの日本政府のやっている話は。
 それで、僕としては「お前、ちょっといい加減にしろ」という話ですよ。建設会社の方が言えば「どうせ金を儲けたいんだろうから」とか、国交省の人が言えば「天下り先が欲しいからだろう」と言われますが、僕は大学の人間ですから関係ないですからね。建設産業が栄えようが廃れようが、潰されたらあれですが、大学関係ですから、わけの分からない世に役立たないような数式や公式でも教えていれば良いわけですからね。世間の寄生虫として生きていけば良いわけですから(笑)。だから関係ないわけですよ、建設産業が死のうが生きようが。そういう立場である人間がいますか?建設関係者の中で。大学関係者の中にしかいないのですね。だからみんな「誰か喧嘩を売ってくれよ」と思っているわけですよ。そうしたら誰がといえば「俺が?」というような感じで、「先生、言って下さい、いろいろと」という感じで「仕方ない、俺が言っておくか」という感じですね(笑)。そういうことで、こんなワケの分からない本をブチ切れて出版したという次第です。
 ですから、こんな批判をしている人は、今までいなかったのです。そして、いろいろあってようやく出版できたのが「公共事業は日本を救う」だったのです。
 それで今は2冊目を書いています。2冊目は「平成ニューディール」というタイトルにするか、あるいは「列島リニューアルプラン」にするか、どちらにしようかと思っているのですが、もっとより具体的に、後でまた申し上げますが、日本を救う道はいろんな意味で公共事業を滅茶苦茶に大量にやるしかないのです。今の日本を救うには。それで、昨日「Will」という雑誌の方が来まして、「あれを読んで感銘を受けました。僕らもずっと道路や公共事業はいらないと思っていましたけど、先生の本を読んで、目から鱗でした。なので、書いて下さい」と言うので、「分かりました、書きましょう」と回答しましたが、「でも、“公共事業が日本を救う”では退屈だから、“コンクリートから人へで国滅ぶ”にしよう」と、要するに「そんな政策が、国を滅ぼしているのだ」というちょっとある意味「刺激的」なタイトルにしたわけです(笑)。
 いずれにしても要するに何と言いますか、喧嘩まがいのことをしているというような話ですね。我々学者は喧嘩をしてはいけない、特に我々は建設産業を「男は黙ってサッポロビール」的に黙っておくものだ、それが美徳として、私もそのように教えて頂きましたし、先輩方にも。我々の先輩方というのは、大学の先輩だけでなく、建設産業に行かれている先輩方もたくさんおられますから、その方々から我々は黙っておくものだと教えられてきたのですが、ここまでも蹂躙されていたら黙っておくわけにもいかない。


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