建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2011年4月号〉

基調講演(平成23年3月7日)

地域再生フォーラムZ ―― 社団法人 空知建設業協会

基調講演 公共事業が地域を救う

講師:京都大学 都市社会工学専攻 教授 藤井 聡


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 ちなみに、調べる過程でいろんな方にヒアリングを行いました。全建(全国建設業協会)、土工協(日本土木工業協会)、建コン協(建設コンサルタンツ協会)とか、その他、私の個人的知り合いであるスーパーゼネコンの国際担当の方とか、知り合いの社長さんとか、日米構造協議の時に交渉していた方などにヒアリングをしました。そうすると、皆さんが一様に仰ったのは「いや、考えてない。TPPに入っても関係ないのではないか」と、十中八九がそうした反応でした。「そんなものなのかなぁ」と、いろいろ調べたのですが、グローバルな状況が変わっているのですね。
 アメリカが「輸入したい」という状況から「輸出したい」という状況へと、リーマンショック以降の世界経済が大きく変わっていて、その流れの中でアメリカは輸出を増やしたいと思っていて、その中でTPPを持ってきたのだから、我々はソニーやトヨタのものを買ってくれるためにTPPに入るのではなくて、いろいろなものを買わされるためにTPPに入ろうとしているのですね。米とかジャガイモとか肉とか、それだけでなくアメリカが作るいろいろなものを、日本人に買わせてやろうと、そのためにTPPに入ろうとしている状況が見て取れたわけです。
 さて、次に建設産業に直接、どんな影響があるのかということを調べていった結果を、少しお話したいと思います。まず、これは菅内閣の元農水大臣の山田さんという小沢系の方が、このように発言しています。「TPPの参加で公共事業への参入を自由にすれば、地方の土木会社は致命的な打撃を受けます」との断言です。この山田さんというのは、日本で一番最初にTPPの情報を掴んだ方の一人です。閣僚ですから。初めて耳にしたのは2010年の夏ですからね。我々がそれを聞いたのは秋ですから、一般国民に知らされたのは秋ですから、一番最初に情報を掴んで、相当、一般国民に開示されていない情報に目を通していたはずですから。TPPとはどんなものか、公表されていないですが、おそらく彼は見ているのですね。それを見た上での、彼の発言です。「地方の土木会社は致命的な打撃を受けます」と。なぜなのかと言えば、彼はこんなことを言っています。「労働について言えば、平均賃金1万5,000円(1ヶ月)のベトナム人労働者が自由に来られるようになったら、日本の雇用状況はどう変化していきますか?」と。
 これは何を言っているのかといえば、ベトナムというのはTPPに加盟している国なのですね。それで、折しも蓮舫さんが今日(3月7日)も規制仕分けをやっていますね。規制仕分けというのは、アメリカの通商代表・USTRという、日本の市場開放の圧力をずっとかけ続けている団体で正規の機関でありますが、彼らの書く報告書はすごいもので「農業にはこんな規制があるので撤廃しろ」とか、「通信産業のこれは撤廃しろ」とか、非常に細かく書いてあるのです。我々建設産業に関して言えば、「外環」と、「品川ルート」というのが出てくるのですが、「これにアメリカ企業が参入できるかどうか、僕らはウォッチしている」と書いてあるのです。
 ちなみに「DANGO」という言葉も出てくるのです。これは何かと言えば、「談合」ですね。「日本の談合をもっと解体せよ」と。さらに「AMAKUDARI」。天下りですね。天下りや談合を解体せよと書いてあるのです。ちなみに、10年前の彼らの報告書にも、談合とか天下りを解体しろと書いてあるのですね。それで、今年の報告書を見ると、「談合とか天下りが大分、公正取引委員会の規制がきつくなってきたので、僕らの思った通りになってきて、なかなか日本政府も初き奴よのぅ」的に書いてあるのですね(笑)。ちなみに、これらは全部、インターネットに載っている情報なのです。何もアメリカは隠していないのです。隠していないのに、マスコミと政府はあまり言っていないですね。
 しかしながら、アメリカの要求通りに、日本で何が起こっているかというと分からないのです。ちなみにUSTRのこの報告書を見ておくと、腹の立つ話ですが、日本の今後3、4年後に、何が起こるかが大体分かるようになったのです。それで、このUSTRの代表の方が、いま日本に来ているのです。事務レベルの会合のために。これは外務省のホームページに載っているのですね。皆さん、お分かりですか?いま規制仕分けをやっているその時に、わざわざ来ているのです。ですから、今の政府が、アメリカ政府のUSTRが言っているような規制緩和を、ちゃんとやるかどうかを指南をしに来て下さっているわけですね、おそらく。恐ろしいですね。
 それを外務省に問い合わせると、「USTRの会合と規制仕分けとは、何の関係もありません」とか、しかも「TPPとも何の関係もありません」と言うのですが、「え”−−−まじですか??私も40年は生きているのだから、子どもじゃないんですけど。。。。」というようなものですね(笑)。完全にこれらはつながっているのです。情けないですね。
 それで、ほとんど情報開示されていないですが、情報をよく見ているこの山田さんは小沢系ですから、今の政府の筋とはまた別なのですね(笑)。で、山田さんなどはTPPの加入に慎重に考えなければならないと言っているのですね。
 しかし、1万5,000円の労働者がいて、労働の自由化を規制仕分けでやっているわけです。TPPの24の重要項目の一つが、労働の自由化です。労働の自由化が規制仕分けの対象になっていると。労働の自由化とは何かと言うと、外国人労働者の受け入れです。今の政権は外国人労働者に…、政治献金はもらってはならないと書いてあったのに、もらった人がいましたが、政治献金はさておいて、参政権まで認めて上げようという政権ですからね。それは労働者くらいは、いくらでも受け入れるでしょうね、今の政権は。で、ちなみに想像して下さい。1万5,000円の方々が、大きな船に何千人も乗ってくる。例えば、日本のあらゆる建設工事において、1万5,000円で働かされるのですよ。日本人というのは、そういう阿漕なことをなかなかしたがらないので、そんな感覚はないですが。


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