建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2003年8月号〉

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神奈川地域で果してきた役割と今後の展望

都市基盤整備公団 神奈川地域支社

都市基盤整備公団は、「特殊法人等整理合理化計画」において、都市再生に民間を誘導するための新たな独立行政法人へと移行することになった。これを受け、「平成16年度に新たな独立行政法人を設立するための法案(独立行政法人都市再生機構法案)」が、通常国会で、審議中だ。この動向を踏まえながら神奈川地域支社の取り組みについて特集した。

法案によれば、都市再生機構の主な事業は、(1)都市再生への民間の誘導、(2)賃貸住宅の管理など、(3)国家プロジェクト等への対応となる。
また、郊外ニュータウン開発事業については、新規着手せず、事業中地区については計画の見直しを行った上で、責任をもって早期に完了させることになる。
現都市公団の前身である日本住宅公団、宅地開発公団、そして住宅・都市整備公団を通じて、神奈川県下において、賃貸、分譲住宅建設やニュータウン整備により、約60万人の生活基盤を提供してきた。
これらの事業のノウハウを活かし、ますます地元や自治体との連携をとりつつ都市再生に取り組む。

(H15.3末)
  神奈川県下  (シェア) 全国
再開発事業等 23地区   188地区  
都市整備事業 26地区 3300ha (8.7%) 272地区 38000ha
賃貸住宅の管理 209団地 7.4万戸 (9.7%) 1755団地 76万戸
賃貸住宅の建替え 31団地 1.4万戸 (14.3%) 188団地 9.8万戸
土地有効利用事業
(土地取得)
10地区 46ha (40.0%) 115地区 115ha
■神奈川県における都市再生等に向けた試み
神奈川地域支社は、都市再生機構への移行も踏まえ、県下において都市再生等にかかるさまざまな取り組みを実施してきた。

臨海部における都市再生の取り組み
京浜臨海部は、かつて日本の高度経済成長を支えた重厚長大産業が集積しているが、産業構造の転換や国際経済環境の変化により空洞化が目立ってきてた。このため、新たな機能導入や産業高度化の動きに直面している。
そこでその、臨海部の活性化のために、内閣に設置された都市再生本部による都市再生予定地域(4,400ha)が指定され、関連省庁間の連携のもと、地元自治体も参画し活性化の方向性を検討している。
同支社では、広域インフラ計画や産業再生、都市開発等の民間の都市再生事業を誘導するべく、既に南渡田周辺地区、塩浜周辺地区、東神奈川臨海部周辺地区(いずれも都市再生総合整備事業の特定地区)の3地区で、市から要請を受け、各関係者の調整や整備計画の作成などのコーディネートを実施している。
また、大規模な工場跡地などを自ら取得し、街区再編、土地利用転換、道路、公園などの必要な公共施設を整備した上で、民間に譲渡する「土地有効利用事業」についても、当該エリアで積極的に取り組んでいるところ。
この事業で取得済みの、「大師河原・殿町地域※」の殿町三丁目地区(18.6ha)や大師河原一丁目地区(5.6ha)、「浜川崎周辺地域※」の小田栄ニ丁目地区(4.7ha)や池上新町三丁目地区、生麦二丁目地区などは、京浜臨海部全体の再生のシナリオやプログラムに沿って整備・開発していく。
また、大師河原一丁目地区(5.6ha)の一部は、平成14年度末河川防災ステーション用地として国へ譲渡するとともに、小田栄ニ丁目地区(4.7ha)の一部については、15年度早々に一般公募により民間事業者に譲渡済である。
▲みなとみらい21
都心部(横浜・川崎)活性化への取り組み
横浜みなとみらい21地区(都市再生緊急整備地域)では、公団施行の都市機能更新型土地区画整理事業(101ha、昭和58年事業認可)により、都心部の拠点づくりを推進。基盤整備は約7割が完了。約4割がビルドアップ。平成15年2月には民間超高層分譲住宅入居開始、業務ビル4棟が建築中だ。
今年度も市街化促進に向けて、住宅用地や業務施設用地を供給予定。また、横浜関内地区においては、公有地を活用し、新しい都心軸の構築を提案し、soho(在宅ワーク支援型住宅、小規模オフィス)など新たな先導的な街づくりを推進中だ。中心市街地活性化への試みとして、横浜tmo(タウン・マネージメント・オーガニゼーション)へも参画している。
川崎駅西口地区においては、官民との役割分担と連携の下に、西口大宮町地区の全体の協議会運営や事業調整など全体のコーディネートを実施し、市民文化ホールを含む西口市街地再開発事業や公団大宮団地の建替事業を実施している。
また、川崎第三都心である、武蔵小杉駅周辺地区は、都市再生総合整備事業による都市再生に向けたコーディネートを予定。取得済みの中丸子地区(約2.7ha)の事業化を含め、官公民の協働事業を推進中だ。
川崎駅西口地区市街地再開発事業は平15.12完成予定で、大宮団地建替え事業は、平16.2完成予定だ。
A:アーベインビオ川崎3号棟
B:業務棟
C:音楽ホール棟
▲川崎駅西口地区市街地再開発事業(平15.12完成予定)
大宮団地建替え事業(平16.2完成予定)
郊外部における都市整備
郊外部においては、港北ニュータウン(横浜市)、青葉山の手台(横浜市)、黒川はるひ野(川崎市)他、現在7地区、総開発面積1,709haでニュータウン開発事業を実施中。
黒川はるひ野(約80ha)では、環境共生の街づくりを進めるため、川崎市や土地所有者である地元農家、市民と協力し、「くろかわグリーンネットワーク」を発足。緑に親しみながら里山や田園を守る新郊外居住のモデルとして新たなライフスタイルを提案している。
民間活力を活用した賃貸住宅の供給促進
公団は、県下において現在までに約7.4万戸の賃貸住宅を供給してきた。(分譲住宅は161団地、約4.5万戸供給)
今後は、民間による賃貸住宅などの供給を支援することとし、平成14年度に民間供給支援型賃貸住宅制度を創設したところ。これは、公団が賃貸住宅用の敷地を整備し、民間事業者に定期借地で提供し、良好なファミリー向け賃貸住宅等を供給してもらうもの。県下においては、横浜関内地区において、先行的に定期借地方式の民間賃貸住宅供給事業に着手した。
■神奈川地域支社における既存賃貸住宅のストック再生・活用について
都市基盤整備公団では、平成15年3月末現在で約76万戸の賃貸住宅を管理し、四大都市圏において、賃貸住宅の約7%、公的賃貸住宅ストックの約40%を占めており、全国で約200万人の居住者が生活している。
この既存賃貸住宅ストック約76万戸については、その適切な活用を図るため、「ストック再生・活用計画」を平成13年4月に策定(平成15年3月に「ストック総合活用計画」に名称変更)した。安全・安心・快適な生活環境を確保するため、適切な維持管理を行なうとともに、建設時期、地域の整備課題、賃貸住宅の需要動向、ライフサイクルコスト、事業の採算性などを踏まえ、都心居住・職住接近の実現に留意し、適切な事業手法を活用することにより、団地の総合的な再生・活用を図るものである。
特に、昭和30年代から50年代前半に供給された賃貸住宅約54万戸については、敷地の適正利用を図る建替事業及び既存の建物を有効に活用して行うリニューアルなどのストック改善事業を重点的に実施し、その他については、地域の実情に応じ、必要な改善などを適宜実施することとしている。
また、賃貸住宅の建替えに当っては、従前居住者の居住の安定に配慮しつつ土地の適正利用を図り、さらに地方公共団体と協力し、公営住宅、社会福祉施設などの併設・連携を進めるとともに、多様な住宅供給を図るなど、地域の整備課題に対応しつつ周辺も含めた良好な住宅市街地の形成の促進に努めていく。
県下においては、良好な居住環境を備えた賃貸住宅の安定的な確保を図るため、209団地、約7.4万戸の管理を行なっている。また、良好なストック形成のため、うち31団地、1.4万戸の建替事業を実施中。一部では、公営住宅と公団住宅の建替え連携(公共賃貸住宅総合再生事業)により、ソーシャルミックスされた街づくりを展開している。
■神奈川地域支社における取り組み
昭和30年代に管理開始した団地を対象とした公団賃貸住宅の建替事業は、昭和61年度の小杉御殿団地の着手を皮切りに平成14年度の仏向町団地まで、表1のとおりの事業実施状況となっている。事業実施に当たっては、地域の整備課題等を整理した上で土地の適正利用を図り、良質なストック形成やバランスのとれた市街地の整備を行っている。
建替事業
表1
建替対象戸数
(37団地)
事業着手戸数
(31団地)
発注戸数 供給戸数 事業完了戸数
(19団地)
21,410戸 14,232戸 12,694戸 11,151戸 7,156戸

ストック改善事業
表2
年度 11年度 12年度 13年度 14年度 合計
発注戸数 422戸 1,641戸 1,727戸 1,917戸 5,707戸
昭和40年代から昭和50年代前半までに供給された住宅を中心として、土地の高度利用がすでに図られているもの、建替えまでに相当の期間を要するものなどについて、居住ニーズの多様化に対応するため、既存の建物を有効に活用して行うストック改善事業を実施する。
事業の実施に当たっては、集中的、効率的な投資により、整備効果の高い事業手法を複合的に活用し実施するとともに、住環境のアメニティの向上に資する住棟共用部分、屋外環境の改善並びに施設の活性化等も適宜計画的に実施する。
リニューアル
LDK化・洋室化といった間取り改善、バリアフリー化などの住宅性能の向上を図るため、改善を空家発生時に行っている。
主な改善内容の概要は、台所設備の改善(キッチンセット、レンジフード型給湯器)、浴室設備の改善(大型浴槽化、給湯器の設置)、居室の床段差解消、二重天井化などだ。
平成15年3月末時点において、34団地(南神大寺、西ひかりが丘、善行、上和田、本郷台駅前など)でリニューアルを実施しており、発注実績戸数は表2のとおりとなっている。
ライフアップ
住戸内設備水準の向上を図るため、キッチンシステム、大型浴槽および洗面化粧台の設置を推進する。
平成15年3月末時点において、85団地(本郷町、峰沢町、すすき野、奈良北、洋光台西など)でライフアップを実施している。(表3)
表3
設置
年度
シャワー
付き
ふろがま
大型浴槽
(シャワ−付)
レンジ
フード型
給湯器
キッチン
システム
(流し台)
天井付収納
ユニット
(吊り戸棚)
洗面化粧台
10年度以前 41,140戸 13,842戸 19,314戸 22,827戸 21,286戸
11年度 301戸 1,432戸 728戸 740戸 702戸
12年度 320戸 1,944戸 1,443戸 1,429戸 1,385戸 3,302戸
13年度 260戸 1,728戸 1,339戸 1,297戸 1,322戸 3,214戸
14年度 207戸 1,955戸 1,427戸 1,374戸 1,390戸 2,958戸
合計 42,228戸 20,901戸 24,071戸 27,667戸 26,085戸 9,474戸
高齢者向け優良賃貸住宅の供給
高齢者向け優良賃貸住宅については、高齢者の居住の安定確保に関する法律(平成13年法律第26号)に基づき、国及び地方公共団体と連携を図りつつ、昭和40年代から50年代前半に供給された比較的大規模で居住環境からみて高齢者の居住に適する団地を対象に供給し、一定以下の所得の人に対しては家賃負担を軽くする措置がとられている。
主な改善内容は、台所設備の改善(キッチンセット、レンジフード型給湯器)、浴室設備の改善(大型浴槽化、給湯器の設置)、居室の床段差解消、洗面化粧台、便所・玄関に手摺の設置、大型洋風便器に取り替え、建具の出入口幅・高さの改善、緊急通報・安否確認サービスの実施、二重天井化など。
平成15年3月末時点において、24団地(南神大寺、西ひかりが丘、善行、上和田、本郷台駅前など)で高齢者向け優良賃貸住宅の供給を行った(表4)。
表4
年度 11年度 12年度 13年度 14年度 合計
発注戸数 83戸 154戸 392戸 384戸 1,013戸

主な整備事業

シティコート山下公園
ビーコンヒル能見台サウスヒル 7番館・8番館
アーベインビオ川崎(旧川崎大宮団地)

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