食彩 Speciality Foods

〈食彩 2008.11.14 update〉

寄稿

地域水産物のブランドと水産物の安定供給体制づくり

〜広がるブランド化の取組みと水産基盤整備事業の着実な推進

渡島支庁産業振興部水産課 課長 山本 和人

渡島管内の概況
 渡島支庁管内は、北海道の南西部、渡島半島に位置し、日本海、津軽海峡、そして太平洋・噴火湾の3つの海域に囲まれており、南西部の松前町から、津軽海峡、太平洋を経て北端の長万部町まで、約410kmの非常に長い海岸線を有しています。
 総面積は3.936kuで全道の約4.7%を占め長崎県(4,096ku)に匹敵する広さがあり、平成17年の人口は約44万9千人で全道の約8%を占めています。また、函館市など2市9町からなっており、函館市には管内の約3分の2にあたる29万4千人が住んでおり、隣接する北斗市及び七飯町を含めた函館圈には管内全体の人口の約83%が集中しています。

水産業の概況
 管内は古くから水産業の盛んな地域であり、函館はかつて北洋漁業の基地として栄えてきました。現在も日本海から津軽海峡にかけては、いか釣り漁業、うに・あわび漁業、こんぶ養殖業など、太平洋海域では定置漁業やこんぶ養殖業、すけとうだら刺し網漁業など、噴火湾海域ではほたてがい養殖業、すけとうだら刺し網漁業、えぴかご漁業など、地域により特徴のある漁業が営まれています。
 平成18年の海面における漁業生産は、数量が19万7千トンで全道の約15%、金額は465億円で全道の約17%、漁業経営体数は4.269経営体で全道の約4分の1を占めており、道内有数の漁業生産地域となっています。主な魚種はホタテガイ、スルメイカ、コンブ、スケトウダラで、これら4魚種で管内の生産額の約7割を占めていますが、このほかにもマグロ、ヤリイカ、ヒラメ、ミズダコ、マダラ、ホッケ、カレイ類、サケ、サクラマス、トヤマエビ、ホッキガイなど季節に応じて多くの魚種が水揚げされています。

渡島管内の水産物のブランドづくり
 これらの水産物は、渡島管内はもとより道内外へ送られているほか、ホタテガイなど一部の魚種はEUや中国などの外国に輸出されています。また、最近では、ゴッコ(ホテイウオ)など、これまであまり流通にのらない魚種も広く知られるようになり、各地で地域水産物のブランド化を図る取組みも広がっています。
 コンブでは「白口浜真昆布」は献上昆布として知られています。また、前浜産のマコガレイ、カキなどに「海峡育ち」という統一名称を付けた取組みもあります。戸井産の「戸井活〆マグロ」は東京の築地で高い評価を受けており、恵山の「海峡根ぼっけ・バキバキ」は鮮度の良いホッケとして評判です。また、八雲の遊楽部川由来の鮭を使用した「遊楽部熊鮭」は地元漁業協同組合青年部の手作りによる鮭の山漬けとして好評です。
 現在、松前産のマグロや噴火湾産のアカガレイなども検討されており、こうした水産物のブランドづくりを今後とも支援し、地域振興につなげていきたいと考えています。

地域水産物の安定的な供給体制の整備
 また、水産物のブランドづくりの一方で、地域水産物の安定的な生産、供給体制づくりも重要となります。
 渡島管内では、水産資源の減少が懸念される中で、スケトウダラやマガレイ・ソウハチの体長制限など資源保護の取組みやサケ・マス、ヒラメ、マツカワ、ウニなどの種苗放流が行われています。
 また、水産基盤整備事業では、現在、第2期漁港漁場整備計画に基づいて、水産資源の持続的利用と良質な水産物を効率的に供給する体制を整えることを目的として、漁港や漁場の整備を計画的に進めており、水産物の生産、流通に一体性を有する範囲を圏域として設定し「選択と集中」による効率的・効果的な事業の推進に努めています。
 渡島支庁管内の平成20年度の水産基盤整備事業は、漁港施設の整備に関する事業が21地区で44.6億円、漁場施設の整儀に関する事業が16地区で14.6億円の予算により事業を進めています。
 このうち、水産資源の維持・増大と水産物の生産流通機能の強化を目的として、地域水産物供給基盤整備事業により、漁港の整備が12地区、漁場の整備が2地区で行われています。また、水産物の生産・流通の拠点づくりを推進する広域漁港整備事業により、漁港の整備が5地区、増殖場の整備が1地区で行われており、沖合に展開して広域の漁場を大規模に整備する広域漁場整備事業については13地区で行われています。
 漁港の整備については、漁船の出入港時の安全性、漁獲物の陸揚げ作業の効率化を目指して、航路・泊地の浚渫、防波堤、岸壁の整備を行い、港内の水深や静穏の確保に努めるほか、鹿部漁港などでは漁獲物の陸揚げの際の衛生管理の強化を目的として屋根付き岸壁の整備を進めています。
 また、漁場の整備については、ホツケやスケトウダラ、カレイ、ヒラメ、タコ等の沿岸資源の増産を目的として沖合の未利用海域に魚礁漁場の造成を行っているほか、ヤリイカの増産を目的とした産卵礁の設置、マコンブやウニの増産を目的として地先の未利用海域に大割石等による囲い礁の設置により漁場の造成を行っています。
 今後とも、地域の水産資源の生産力の向上と水産物の安定的な供給体制づくりを着実に推進するとともに、地域水産物のブランドづくりなど付加価値を高める取組みを支援していきたいと考えています。


HOME