食彩 Speciality Foods

〈食彩 2008.11.14 update〉

寄稿

厳しいロシア関係漁業と沿岸漁業の振興

根室支庁産業振興部水産課 課長 川又 龍二


【管内の概況】
 根室支庁管内は、北海道の最東端に位置しており、北東部はオホーツク海に、南部は太平洋に面しています。北方領土を除いた海岸線の長さは約479qと全道の約16%を占めています。(北方四島の海岸線は、約1,348qになります。)
 面積は、約8,529ku(北方四島を含む)で全道の10.2%を占めています。北方四島を除いた面積は約3,498kuと、鳥取県の広さとほぼ同じです。
 管内には、知床国立公園や野付風連道立自然公園など雄大で神秘的な4ヶ所の自然公園があり、平成17年7月に知床が世界自然遺産に、11月には野付半島・野付湾、風連・春国岱地域がラムサール条約登録湿地に登録されており、タンチョウ、シマフクロウ、クマゲラ、オジロワシなど数多くの天然記念物の格好の生息地となっています。
 管内の人口は、平成17年国勢調査によると総人口は84,057人となっており、平成12年と比較すると、2,436人の減少、市町別にみても、中標津町がわずかに増加しているほかは減少しています。
 人口密度は24.4人/kuで、全道平均71.8人/kuに比べて半分以下となっています。
 管内の気候は、年平均気温が5℃〜7℃と冷涼であり、オホーツク海域については冬期間流氷に閉ざされることが多く、厳しい寒気に見舞われます。また、春から夏にかけて海霧におおわれることが多く、霧日数は年間100日前後にも達します。

【根室の水産業】
 管内の漁業は、北洋サケ・マス、サンマ、スケトウダラ、ホタテガイ等を主体とする漁船漁業、秋サケを主体とする定置網漁業及びコンブ、ウニ、アサリ等を主体とする採介藻漁業からなっており、道内漁業生産の約2割程度を占める一大生産地帯となっています。
 根室はかつて、北洋漁業の基地として栄えてきましたが、国際的な漁業規制の強化によって、沖合漁業の縮小を余儀なくされ、現在では、ロシア政府との政府間・民間交渉等によって、ロシア200海里内では「さけ・ます流し網漁業」や「底はえ縄漁業」などが行われており、また北方四島周辺海域では貝殻島こんぶ漁業のほか平成10年から「北方四島周辺海域安全操業」が開始され、ホッケ、スケトウダラ、タコを漁獲しておりますが、これら海域での操業条件は燃油価格の高騰もあり年々厳しくなる傾向にあります。
 このような中、ロシア水域等における操業の安定的な継続はもとより、前浜における沿岸漁業の振興が重要な課題となっていることから、水産資源の維持・増大に向けた増殖場の造成や魚礁の設置など、漁場の整備を積極的に進めているところであります。
 また、管内においては、サケ・マスを始めとして、ウニ、ホタテガイ、ニシン等の種苗生産放流が行われているほか、マツカワなど新たな栽培漁業対象種の試験事業なども積極的に進められています。
 一方、国民の健康と豊かで安全な食生活の指向が高まる中、今後とも安全で良質な水産物を安定的に供給する役割を担っていくため、衛生管理型漁港の整備や地域ハサップの推進、さらには、水産物の高付加価値化、加工流通対策などを積極的に進めています。

▲野付地区地域水産物供給基盤(新所ノ島)増殖場造成工事(特定) 施行写真 ▲野付地区地域水産物供給基盤(新所ノ島)増殖場造成工事(特定) 完成写真

【根室の漁港・漁場整備】
 漁港・漁場の整備については、道が「水産物の安定供給の確保」、「水産業の健全な発展」を図ることを目的に策定した漁港漁場整備長期計画に基づき整備を進めています。
 管内には、漁港が22港(ほか分区2港)と重要港湾根室港(根室港区、花咲港区)が配置されておりますが、漁港整備事業については、現在9漁港(うち国直轄4港)において漁港漁場整備長期計画に基づき総合的且つ重点的な整備が進められています。
 近年は、食の安全・安心に対する関心の高まりを背景として、管内の主要漁業であるサケやホタテを対象とした衛生管理型漁港づくりが積極的に進められており、羅臼漁港の全天候型埠頭や深層水の取水施設のほか、落石、歯舞、標津、尾岱沼の各漁港においては清浄海水の取水施設や屋根付き岸壁等の整備に着手しています。
 この内、平成20年度に北海道が実施している管内の漁港整備事業(公共)は5港で約12.6億円となっています。
 一方、漁場の整備については、これまで定着性の高いウニ、コンブ、アサリなどを対象とした増殖場の造成、カレイ、スケトウダラ、ホッケなどの魚類を対象とした魚礁の設置、タコの増殖を目的とした産卵礁の設置などを実施しています。
 特に、野付湾内の新所ノ島でホッカイエビの産卵藻場の維持・増大を目的とした護岸整備を実施しており、道内の漁場整備事業において他に例のない特筆すべき施設であります。
 平成20年度の漁場整備事業(公共)予算は、根室海域地区(太平洋)で実施している広域漁場整備事業が5件で約3.9億円、野付地区で実施している地域水産物供給基盤整備事業が3件で約2.4億円、合計8件で約6.3億円となっており、厳しい予算環境の中で前年比約122%の事業予算を確保することができました。
 水産業をめぐる情勢は、燃油価格の高騰や魚価の伸び悩みなど、一段と厳しい情勢にありますが、根室地域は全国有数の漁業生産の基地として、また国民に対する水産物の一大供給基地として重要な役割を担っています。
 今後とも管内水産業の更なる発展のため、沿岸漁業の振興を基本として、水産資源の持続的な利用と安全で安心な水産物の供給などについて地元市町や漁協、その他関係団体とも連携しながら、各種事業の効率的な実施に努めていくこととしています。


HOME