食彩 Speciality Foods

〈食彩 2008.12.1 update〉

interview

生産者は前向きに気構え消費者と共に食料問題を考えたい(前編)

――「農」を通じて「心」を取り戻し「命」の大切さを再認識すべき

北海道農業協同組合中央会 会長 飛田 稔章氏

飛田 稔章 とびた・としあき
昭和22年 7月17日生まれ
昭和41年 3月 北海道立帯広農業高等学校卒業
平成元年 4月 幕別町農業協同組合 理事
平成10年 4月 幕別町農業協同組合 代表理事組合長
平成10年 6月 よつ葉乳業株式会社 取締役
平成10年 6月 農協サイロ株式会社 取締役
平成10年 7月 東部十勝農産加工農業協同組合連合会 副会長
平成11年 6月 十勝くみあい農機事業センター 取締役
平成12年 6月 十勝農業協同組合連合会 理事
平成13年 6月 北海道厚生農業協同組合連合会 理事
平成13年 7月 東部十勝農産加工農業協同組合連合会 会長
平成14年 6月 北海道信用農業協同組合連合会 経営管理委員
平成14年 6月 十勝地区農協組合長会 副会長
平成14年 6月 十勝酪農対策協議会 会長
平成17年 6月 北海道農業協同組合中央会 副会長
平成17年 6月 財団法人北海道農業協同組合学校 副理事長
平成17年 6月 北海道農業信用基金協会 理事
平成17年 6月 社団法人北海道酪農畜産協会 副会長
平成17年 6月 社団法人北海道酪農検定検査協会 会長(現職)
平成17年 6月 社団法人北海道てん菜協会 会長
平成17年 6月 財団法人科学技術総合振興センター 理事(現職)
平成17年 8月 社団法人北海道米麦改良協会 理事
平成19年 6月 北海道バイオエタノール株式会社 代表取締役社長(現職)
平成19年 6月 NHK経営委員(現職)
平成19年 6月 幕別町農業協同組合 組合長理事(現職)
平成20年 6月 北海道農業協同組合中央会 会長(現職)
平成20年 6月 財団法人北海道農業協同組合学校 理事長(現職)
平成20年 6月 社団法人北海道馬鈴しょ生産安定基金協会 会長理事(現職)
平成20年 8月 全国農業協同組合中央会 監事(現職)
平成20年 9月 財団法人都市農山漁村交流活性化機構 評議員(現職)
平成20年10月 財団法人日本豆類基金協会 理事(現職)
北海道農業協同組合中央会
札幌市中央区北4条西1丁目1番地北農ビル 10階
TEL 011-232-6400

 全道の農協を統括する北海道農業協同組合中央会は、文字通り農業者のための中央政府のようなもので、農業界の頂点にある。それだけに生産者を支援するため、政府との間に立ち、また輸出攻勢をかけてくる国外関係者との攻防にも身を投じていかなければならない。世界的に食料危機が現実の問題となる一方、輸出国からは市場開放要求の圧力が加えられているが、それに対抗するには資源小国であり、食料弱者である日本には何が必要なのか。農業界のトップに立つ飛田稔章会長に伺った。
――会長の略歴と、農業との関わりを伺いたい
飛田 明治33年に祖父が幕別町に入植したのが始まりで、終戦時に父が中国から復員した後、昭和22年に私が第一子として生まれました。小学生の頃は、畑には巨大な柏の根が至る所に放置されていた時代です。動力の主力は馬で、祖父と父が馬を引きながらそれらの根を除去していました。そうして畑を少しずつ広げていったのです。そして昭和41年に高校を卒業し、本格的に農業に携わりました。  しかし、時代の流れとともに産業構造も変化していく中で、一時は農業のように経済効率が悪い産業は、国際的に分業すべきとの世論も起こり、重工業に比重を移して農産物は輸入すれば良いとする時代もありました。農業はそうした様々な時代背景の中で、常に主産業の陰で振り回されてきたとの印象があります。食を得る重要な産業でありながら、一年一作という効率の低さから、他産業に比べて地味で目立たず、農業者自身も国の考え方もそのイメージできました。  細川連立内閣の時のGATTウルグアイラウンドでは、米については関税化せず、代わりにMAの数量を拡大する特例措置を合意させられ、自民党政権に交代したら、関税品目とする代わりにMA数量を若干抑制(77万t)する取扱いとなりましたが、結局国内では米あまりの状態となってしまいました。私たちは、そうした情勢に支配されながら従事せざるを得なかったのです。  農業高校で学んでいたときは、努力をすれば経営が成り立つものだと教師から教えられてきましたが、私が就農した当時には、管内の農家は約2万5,000戸だったのが、今ではわずか6,600戸にまで減っています。  ただ、遊体農地は全国的には15%くらいで、北海道は2%程度ですから、耕作面積が減ったわけではありません。本州農家の平均面積は1.3haに対し、北海道は20ha、十勝は39haとなっています。したがって、農業形態は本州農家の8割近くが兼業で、北海道は逆に9割が農業を主として生計を立てています。この規模ですから、兼業での営農は無理で、専業自立経営でなければできません。  日本はその狭い国土でいかに生産していくかが課題で、こうした国情では大陸との競争にはとうてい対抗できません。オーストラリアなどは、一戸で3,400haもの規模ですから、牛乳にしても単価が20円から30円で経営できるのです。それほどの格差をコスト競争で克服できるものではありません。北海道では、80円でようやく経営できるという状況です。  だからこそ北海道の農業協同組合のように、金融も医療も共済も併せ持った総合組織の役割は非常に大きなものとなります。アメリカには、日本と違って専用の金融機関はなく、農業団体が持つ機能は購買と販売のみです。え
――生産者団体による支援が必要になりますね
飛田 海外との競争のためには、商社の代わりに農協がなければ対抗できません。商社も競争しなければならないのですから、安値競争をするのは商社の責任ではありませんが、ただ、農業とは自然を相手にする産業ですから、豊作の時もあれば凶作の時もあり、その上で国民に供給していかなければならないのです。  したがって、協調して助け合い、協力し合わなければ持続できません。そのために農業界が形成され、生産者団体というものが存続してきたのであり、それが日本の農業の伝統でもあるのです。  とかく日本の農業協同組合の存在は批判されますが、それは経営力が高まった組合員が農協から自立できるようになっているのに、あくまでも農協が拘束し、搾取しているかのように誤認されていることが原因です。  個々の組合員には、自立できるほどに経営力を高めて欲しいとは思います。ただし、我が国の自給率は、それら自立農家による自主流通だけでは決して向上しないでしょう。農業協同組合という組織的な供給体制を基盤とし、いかに生産性を上げていくかを前向きに考える姿勢を、各組合員が持たなければなりません。その努力をアピールし、発信していくのが中央会や連合会としての役割だと思います。
(以下次号)

北海道農業協同組合中央会 ホームページはこちら
HOME