豊浜トンネル

豊浜トンネル復旧工法

地質調査結果報告

1)地質
@ 崩落地周辺に分布する地質は新第三紀・中新世の火砕岩類(尾根内層)であり、下位からユニットT〜Wに4区分される。ユニットT・V・Wは成層構造の発達した水冷火砕岩類であるのに対し、ユニットUは成層構造の不明瞭な水冷破砕溶岩および水冷破砕岩である。
A 地層の走向、傾斜はN45゜〜70゜W/20゜〜30゜NEを示し、緩く北側(海側もしくは余市側)に傾斜する。
B 踏査、ボーリング調査で確認された亀裂は東西、北東−南西方向のものが卓越する。ただし、崩落面付近の壁面内で認められる亀裂のうち壁面のうち壁面に平行な亀裂の連続性は乏しい。また、ボーリング孔内で確認される亀裂の頻度は極めて少なく、開口量も少なく連続性に乏しく、壁面への開口化や顕在化は認められない。
2)岩石・岩盤物性
@ 他地区同種地質の物性値と比較して、圧縮強度、超音波伝播速度、単位体積重量等の関連に有為な差は認められないが、破壊ひずみが小さい傾向にあり、その破壊形式は脆性的である。
A 調査の結果、一軸圧縮強度で70〜100kgf/cm2、圧裂引張強度で7〜10kgf/cm2、圧縮破壊ひずみは0.1〜0.3%である。また、変形係数は10,000〜15,000kgf/cm2である。
B トンネル背面の岩盤は安定しているが、表層部の一部に物性値(RQD)の低下もみられる(0〜0.5m以下、B−8号孔では1.0m程度)。
豊浜トンネル崩落事故調査委員会審議報告
(1)現道の安全性
1)今回の崩落地背面の状況
 大規模崩落は発生間隔が長く、その発生を予想することは極めて困難である。一般的には亀裂の開口化の状況などが、崩落発生の可能性を判断する指標となる。この観点から亀裂に注目すると、今回の崩落崖背後の斜面内には、連続性の悪い亀裂がボアホールカメラで一部確認されたが、これらの亀裂は現状では斜面内に内在するにとどまり、現地確認の結果でも、顕在化して開口化するなどの現象は認められない。
2)その他の岩体の状況
 現道斜面においては、明瞭な開口亀裂が認められる箇所があり、比較的規模の大きい岩体崩落が懸念される。このような岩体としては現道の余市側上部の岩塊A−1、崩落壁面内の余市側の岩塊B−3、崩落壁面の古平側に隣接した岩塊C−3〜C−3′、旧道と現道の合流点の山側上方の岩塊D−1″が認められ、その状況は以下のように評価される。

A、B :亀裂が開口している。
C〜C′ :上部に亀裂は認められるが、岩体背面全体に及んでいる現象は確認されない。
D :2本の亀裂が確認されるが、根足となる部分の剥離は少ない。
3)表層剥離性崩落の状況
 Aゾーン(A−1〜A−3)、Bゾーン(B−1、B−2)で時期は特定できないものの、比較的最近崩壊したことが明瞭な剥離跡、および旧崩落跡と推定される窪地形が多く見られる。
4)落石の可能性
 B−1の上部やC−1、C−2に礫の浮き出しの著しい箇所が認められる。

(2)崩落の要因
 1.地形・地質
1)地質構造
 地表地質踏査、ボーリング調査によって把握した亀裂系統と既存資料に基づく広域割れ目系の比較により当地域の亀裂系の特徴を把握し、地形との関連性を考察した。その結果と崩落地の方向性、壁面の形状などを比較し、今回の崩落との関連性について検討する。
2)オーバーハング地形
 崩落地周辺地域について、オーバーハング地形とこれに関連した崩落の事例調査を行い、両者の関係から今回の崩落とオーバーハング地形についての関連性について検討する。
 2.岩石・岩盤物性
1)岩質
 岩石試験に基づく特性(破壊強度、弾性係数、破壊ひずみ、破壊特性、顕微鏡下の微視的構造)、ボーリングおよび原位置試験による岩盤内亀裂状況等から当該地域の岩石・岩盤物性の特性の今回の崩落の関連性について検討する。
2)風化・変質
 崩落壁面の観察、岩石顕微鏡による鏡下観察、X線分析等の結果から、風化・変質の特徴、その影響範囲等を把握し、今回の崩落との関連性について検討する。
 3.気象・地象
1)地下水
 崩落壁面および近傍斜面に観察される結氷・湧水状況およびボーリング調査で確認される湧水状況(湧水量、被圧の有無)から地下水の分布と特性(被圧の有無)、これらの特性と亀裂・風化帯との関係から、今回の崩落との関連性について検討する。
2)凍結融解・氷結
 当地域の気温状況から凍結深度、凍結融解状況および崩落直後(凍結時期)における湧水の結氷状況(場所・規模)から寒冷期における岩盤斜面内での割れ目水圧の作用する可能性を考察し、今回の崩落との関連性について検討する。
3)温度変化
 岩盤内の温度差は変位差を生じ、亀裂を進展させるが、その影響度は短期的には日変動、長期的には年変動の大きさに支配される。崩落後の日気温変動から、地盤中の温度変化の影響範囲を推定し、今回の崩落との関連性について検討する。
4)地震
 一般に、震度5以上の地震動で被害が顕在化すると言われる。過去の地震記録から当該地が受けた地震動を推定し、その結果から当地域の斜面への地震動の影響の可能性について検討する。
 4.トンネル掘削
1)斜面の安全性
当トンネルは竣工後、12年を経過しその間、実施された点検、道路パトロールなどの結果から、トンネル覆工の異常の有無、状況に関する情報の収集を行った。その結果から、覆工背面地山への影響の可能性について検討する。
2)ゆるみ
 ボーリング調査による覆工背面ゆるみ領域の規模を把握する。
応急復旧工法の検討
基本的条件
@ 豊浜トンネル崩落事故調査委員会」で得られた知見を踏まえ、表層剥離性崩壊と落石に対し安全な構造とする。
A 崩落部の斜面は、オーバーハング地形となったことから、押さえコンクリートによって地形を形成し、トンネル構造とする。
B 専門家による斜面の定点観察を行うほか、岩盤の挙動を計器観測する。
C工事の安全性を確保しつつ、可能な限り早期供用を目指す。
計器観測
復旧工事中および応急復旧後の岩盤の挙動を把握するため計器観測を行う。


計測の内容

計測項目 計 器 数 量 特   記
(1)地山挙動 地中変位計 4箇所 30m−6点式−2箇所
20m−6点式−2箇所
変位量測定
(2)地山〜押さえ
コンクリート
の密着度
継目計 2点 変位量測定
(3)斜面挙動 3Dゲージ 3箇所 変位量測定
(4)地震時挙動 強震計 2箇所 3成分/1箇所
本復旧工法の基本的な考え方
1.本復旧工法は長期的な防災安全性を確保しうる工法とする。
2.本復旧工法は現道復旧案と迂回ルート案のそれぞれについて調査、検討する。

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