滝沢ダムへ

〈建設グラフ2001年6月号〉

特別企画 滝沢ダム -自然災害を土木技術でどこまで減らせるか-


潤いを未来に・荒ぶる川の恵みを求めて


滝沢ダム建設事業

 滝沢ダムは、荒川の左支川、中津川に建設される多目的ダムで、荒川水系総合開発の一環として整備される。事業の日的は、洪水調節、用水の安定化と環境保全、新規の水道用水確保、発電と多目的になる。
 洪水調節は、ダム地点における計画高水流量1,850 立方メートル/sのうち、1,550 立方メートル/sの洪水調節を行い、荒川下流の高水流量を低減させる。荒川沿岸の既得用水の補給と安定化及び河川環境の保全等のための流量を確保する。新規利水は、東京都と埼玉県の水道用水確保のため、最大3.68立方メートル/s、皆野・長瀞水道企業団の水道用水として最大0.06立方メートル/s、東京都の水道用水としては、最大0.86立方メートル/s、合計最大4.60立方メートル/sの取水を可能にする。発電は、埼玉県に滝沢発電所を新設し、ダムからの放流水を利用して最大出力3,400kwの発電を行う。
 建設地は大滝村大字大滝字十々六木で、現地の地質概要は、中生代四万十帯(大滝層群)輝緑凝灰岩、粘板岩、砂岩、チャート等となっている。ダム形式は重力式コンクリートダムで、堤高140m、堤頂長約424m、堤体積約180万立方メートルで、集水面積108.6k平方メートル、総貯水容量 6,300万立方メートル、うち有効貯水容量は5,800万立方メートルになる。19年度の完成を目指している。
 事業は、昭和44年4月に、建設省が「滝沢ダム調査事務所」(秩父市)を開設し、実施計画調査に着手、昭和47年5月に「滝沢・浦山ダム工事事務所」となり昭和48年からダムサイト付近の工事用道路工事に着手した。その後、事業は昭和51年10月に水資源開発公団に承継され、工事が継続されている。
 ダム本体の施工は、平成11年4月27日に仮排水トンネルヘ転流し、本体掘削を開始。仮排水トンネルの規模は延長=615m、対象流量=115立方メートル/s、 標準馬蹄形2R=4.2m。 掘削は、掘削数量が約158万立方メートル(右岸約40万立方メートル左岸約107立方メートル河床・減勢工11万立方メートル)で、捨土運搬は全掘削量のうち、左岸ダム天端上部の約30万立方メートルを、土捨場へ積込み搬出し、それ以外は、河床部で積込み、押え盛土工事の用土として搬出転用する。
 原石山掘削は、ダムサイト左岸,約1q、標高差,約500mの地点で、ベンチカツト工法(ベンチ高H=8m)で砂岩を掘削。原石運搬には、場内立抗(φ≒4.7m,H=192m)と原石運搬トンネル(L=305m)を利用。
 ダムコンクリートの打設は、打設数量が約180万立方メートルとなるが、その際、合理化施工として、RCD工法とELCMを採用。
 RCD工法は、超硬練コンクリートをブルドーザで敷き均し、振動ローラーで締固める工法。施工は、数ブロックを同時に打設し、省力化、工期の短縮等を図る。また、ELCM(拡張レアー工法)については、従来のダムコンクリートは、おおよそ15mのブロック毎に打設していく柱状工法で施工されていたが、上下流を継目なしで、またダム軸方向へも数ブロックを同時打設する工法だ。締固めは内部振動機(バイブレーター)で行う。
 その他、セメントとフライアッシュの現場混合も行う。石炭火力発電所から生じるフライアツシュは、コンクリートに混和することで、単位水量の減少、水和熟の減少、長期強度の増進などが図れることから、従来よりダムなどマスコンクリートの混和材として用いられてきたが、セメントとの混合割合を季節によって変化させることで、より一層の施工性の確保を図る。