〈建設グラフ2001年1月号〉

特集 建設省 北陸地方建設局


北陸地方建設局の河川行政と治水整備

越のくにの復活をめざす

通船川付近の浸水状況(新潟市) 北陸自動車道IC付近の浸水状況(新潟市)

 北陸地域は、新潟県、富山県、石川県、福井県と、山形県、福島県、長野県、岐阜県の一部から構成される。日本海国際交流圏の形成や国土のリダンダンシー(緊急時の代替性)の要としての役割、豊かな自然と共生した質の高い生活の実現など、今後の北陸地域が求める新たな地域発展のための可能性を有している。このため、今後の地域づくりは、こうした時代潮流や現況、地域資源、また日本海国土軸構想などを踏まえ、長期的、広域的視点から行う必要がある。
 そこで、北陸地方建設局は、平成6年度から「北陸地域の社会資本の将来構想策定委員会」を設け、北陸地域の将来あるべき姿と地域づくりに関する意見、提案を受けて、将来像に向けてのグランドデザインを描いてきた。そして、今後の施策や事業の展開にあたっての指針として、「越のくにづくり」を取りまとめた。
 「越のくに」とは、現在の北陸4県にあたる越前・若狭(福井県)、加賀・能登(石川県)、越中(富山県)、越後・佐渡(新潟県)を指しており、古代、律令時代前の北陸地域の総称である。「越のくにづくり」は、こうした歴史的一体性を、再び北陸地域の将来方向として復活させるものと言える。
 しかし、現実を見ると、急流河川がもたらす水害や土砂災害、中山間地域における急速な活力低下、世界有数の豪雪に代表される気象条件などの厳しい現実を抱えており、中山間地域の過疎化、自然災害への対応、また雪といった克服すべき課題がある。
 そこで、北陸地方建設局河川部は、治水・砂防など国土の安全性向上という面から、「越のくにづくり」のための条件整備に貢献している。

◆わが国有数の豪雪・豪雨地帯

 管内の概要をデータで見ると、管内総人口は、約1,250万人。直轄管理河川は12水系15河川で、管理延長は615kmに上る。7山水系で砂防事業、9箇所にダム、3海岸で海岸保全事業を行っている。
 北陸地域の気候は、年間平均降雨量が、全国平均1,700mmに対して、北陸は平均2,500mmを超えており、かなり降雨量の多い地域と言える。特に山間部では、北アルプスの険しい山岳地帯で4,000mmにも達している。
 積雪は、積雪日数が1年間のうち50日〜100日に上り、約3ヶ月は雪で覆われていることになる。最も積雪量の多い山間部では、377 cm にまで達し、日本の中でも非常に雪深い地域である。
 一方、海岸部でも最大積雪深平均値50cmを越え、内陸の平野部では、100〜200cmとなる。

◆急峻な山脈から流れる急流河川

 北陸地域の地形は、北アルプス・中央アルプス・南アルプスに当たる飛騨・木曽・赤石山脈など3,000m級の秀峰が連なっており、河川は日本を代表する大河・信濃川を抱えている。信濃川は、川の長さが367kmにも及ぶ、わが国最長河川である。
 信濃川の河川水の総流出量は、猪苗代湖の4杯分に相当する。流域面積は、新潟県の面積に匹敵し、わが国では3番目だ。1年間に流れ出る水量も、信濃川と阿賀野川が1、2位を占めている。こうしたことから、水が豊かな地域で名水の産地でもある。
 その理由は、雪解け水などにより、冬期間や春先の流出量が多いことにある。4月の利根川と比べると、約5倍に上る。それでいて管内の河川は概して勾配が急で、標高0mから200m間での河川延長は、利根川が220kmであるのに対し、常願寺川や黒部川などはわずか20kmしかない。常願寺川の最急勾配地点では1/60、黒部川は1/95という状況だ。それだけに、水害が起こった場合は威力も規模も桁違いで被害も大きく、治水の重要性が特に高いと言える。