建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2001年8月号〉

トピックス


全国治水大会で再現された生々しい東海豪雨の爪痕

苦悩する自治体の姿が浮き彫りに


 去る6月5日に、札幌市厚生年金会館で、平成13年度全国治水大会が開催された。当日は土木学会の新会長である丹保憲仁(前北大総長)氏や、全水連会長の陣内孝雄(参議)氏といった治水に関するオーソリティーが出席したほか、行政サイドからは青山俊樹国土交通省技監、昨年の東海豪雨により甚大な水害を受けた名古屋市の松原武久市長らも参加するなど、充実した顔ぶれによる実りある大会となった。


 今回の全国治水大会は、全国治水期成同盟会連合会、北海道、札幌市等の主催で開催された。当日は大会に先立ち、全国治水期成同盟会連合会の第53会通常総会が開かれ、今後の活動計画の報告承認などが行われた。13年度の活動方針は、「安全で豊かな国土基盤形成の実現を目指し、地域と一体となった治水事業の強力な推進」に決定。このために、14年度予算では治水事業・渇水対策・水辺環境の整備などの治水関係事業費を確保すべく、全国治水大会、地方治水大会、治水事業促進全国大会の開催、治水関係予算情報連絡室の設置、広報活動等を行うことを決定した。
 この総会では、放送大学学長で土木学会新会長に就任する丹保憲仁氏が「川と水利用」と題する講演も行われた。同氏は、都市における下水処理問題と河川利用の方法について、札幌市を例に挙げながら、処理した下水を再利用して再び下水道に用い、河川からは主に上水道用水として取水する方法を評価した。

国民の生命と財産を守る基本理念――――陣内全水連会長

 この後、いよいよ全国治水大会が開会された。
 大会では陣内孝雄全水連会長が主催者として挨拶にたち、「この北海道は、歴史や気候風土の異なる個性的な地域から成る広大な面積を有しており、豊かな自然と多くの資源に恵まれているが、反面、低湿地と軟弱地盤地域が多いために洪水被害を受けやすく、また活火山も多く、昨年3月の有珠山の噴火では、火山灰の堆積並びに泥流により大きな被害が生じた。被災者の方々に対して、心からお見舞いを申し上げたい」と、有珠山の噴火による土砂災害に触れながら、「わが国は、昨年秋に東海地方で発生した豪雨災害の例を挙げるまでもなく、毎年、全国各地で激甚災害と、一方では慢性的な渇水の被害に遭っている。こうした災害の実態を踏まえ、国民の生命、財産を守るという公共事業の基本理念が政府において十分尊重されるべきことは当然。連合会としては、災害のない安全で住みよい国土構築の実現のためにも、治水関係事業が強力に推進されるよう、平成14年度予算の必要額の確保に向けて、強力な運動を展開していきたい」と方針を語った。

治水施設整備を重点的に推進――――青山技監

 続いて、国土交通省の青山俊樹技監が、扇千景大臣の代理として祝辞を述べた。同技監は「わが国は、地形、気象などの自然的条件に加え、流域の土地利用が進んでいることから、水害が起こりやすい環境にある。また、近年、地球規模の環境変化によって大雨や大干ばつといった異常気象が各地で発生しており、21世紀の大きな問題となっている。このため、毎年のように集中豪雨や台風等により全国各地で激甚な災害が発生している」と、問題提起し、「昨年九月には、東海地方を襲った秋雨前線豪雨による甚大な被害が発生し、名古屋市などの都市機能は麻痺状態となった。一方、少雨化傾向を反映し、渇水が起こりやすい状況にもあり、各地で取水制限が行われるなど国民生活に大きな影響を及ぼしている」として、昨年の名古屋市の豪雨被害に触れた。
 そして「国士交通省としては、健康で豊かな生活環境と美しい自然環境の調和した安全で活力ある経済社会を実現するため、今後とも治水施設の整備を計画的、重点的に推進していく」と語った。