建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2003年3月号〉

沖縄総合事務局の主な整備事業最前線

沈埋工法による海底トンネル工事

那覇港湾空港工事事務所 沈埋トンネル

那覇港臨港道路空港線

▲沈埋トンネル区間
1999年5月に、那覇空港の新ターミナルが供用開始され、新しい沖縄の空の玄関として機能し始めたことから、それに伴い、今後とも取り扱い貨物量と人々の流人出の増大が予想される。そのため、港湾・空港関連交通の輸送体系の整備が不可欠となっていまる。
そこで計画されたのが、那覇沈埋トンネルだ。これは4つのふ頭を一体化し、那覇港と那覇空港を結ぶことで、背後園との円滑な輸送体系を強化する。また、市内の動脈となっている国道58号などの慢性的な交通渋滞解消のため、西海岸道路の一区間としても計画されたもので、県内初の海底トンネルとなる。
那覇港沈埋トンネルは那覇ふ頭港口部を海底トンネルで横断し、波の上地区と那覇空港を8函の沈埋函で直結させる延長約1.1kmの自動車専用道路トンネル。国内初の新工法も積極的に導入しており、今後の沈埋トンネル技術の発展にも寄与するものと注目されている。
沈埋函の構造と特徴
沈埋函は、函体を鋼殼(上床版・下床版・側壁・隔壁)で製作後、鋼板間に高流動コンクリートを打設する鋼・コンクリートー体構造とした構造形式。鋼殼本体を防水鋼版及び鉄筋代わりの構造部材として活用するため、鉄筋が不要となる。
せん断力に対しては、ウェブとコンクリート、ずれ力に対してはシアコネクタとダイヤフラムで抵抗させる。製作に当たっては、コンクリートの打設は、海上での浮遊状態で行う。もちろん、腐食対策も行っており、函体内部の鋼版が車道部に露出するため、耐火対策も行っている。
各工程について紹介する。
▲沈埋トンネル
▲沈埋函の曳船
▲沈埋函の据付(1号函)
1.仮設工
沈埋函係留施設工
本土で製作・回航されてきた沈埋函鋼殼を係留し、高流動コンクリートを浮遊打設して、完了後に仮置き。沈埋函の出来形計測、艤装品の取付けを行うため、係留施設の整備を行う。
代替航路浚渫工
代替航路浚渫工は、沈埋トンネル施工の際に、現在供用中の那覇水路の切り回しが必要となるため、代替航路浚渫を施工する。浚渫区域は供用中の那覇水路と一部隣接しているため、作業には浚渫船団の待避を伴う。
2.沈埋函製作
沈埋函製作は、鋼殼については本土工場内で鋼殼パネルの原寸取りして加工後、ブロック製作を行う。
その後、ヤード組立場でクローラクレーンを用いて大組立作業を行い、沈埋函鋼殼本体を製作する。
バルクヘッド工は、曳航・沈設時に函体内へ海水が入るのを防ぐため、函の両端にバルクヘッドを取り付けるもの。このバルクヘッドは、鋼板だけで沈設時の10〜20mの水圧に耐えられるよう、高い耐圧性と水密性が確保されている。また、マンホール、監視用孔などの艤装品が取付けられている。
ゴムガスケット工は、工場で一体を製作し、鋼殼製作場所に搬入、端面部に設置する。その後、防護材を取り付け、ゴムガスケットを保護する。
3.回航
台船積込みは、本土において製作された沈埋函(鋼殼)を半潜水式台船に積込み、現地へ海上輸送。台船への積込み方法は、スキッドアウト方式。
回航は、鋼殼製作場所で台船に積込んだ鋼殼を主曳船(7,000ps級)で那覇港まで回航する。回航に際しては、気象・海象を十分調査した上で、避難対策を策定し、細心の注意を払っている。
4.沈埋函製作(沖縄)
鋼殼進水・係留については、本土より回航した半潜水式台船を那覇港内で沈め、鋼殼を進水・浮上させた後に係留桟橋まで曳航し、係留する。作業に当たっては、監視船を配備し安全性を確保する。
高流動コンクリート工としては、係留桟橋において、沈埋函鋼殼内部に高流動コンクリートを浮遊打設する。1函当たりのコンクリート量は約11,000F/函で、部材別の打設順序は、打設によって生じる函体の変形が最小となるようにする。
二次艤装工は、沈埋函の沈設に必要な議装品の取付けを行う。艤装品の内訳は函内艤装品として支承ジャッキ、函内通信設備など。一方、函外艤装品は、ウィンチタワー、ポンツーンなどだ。

5.海上工事
トレンチ浚渫は、沈埋函据付部の断面を、延長約720mにわたってグラブ式浚渫船により施工する。また、トレンチ浚渫は航路を横断して行うため、浚渫区域を複数のブロックに分割して施工することによって、一般航行船舶の航路を確保する。
沈設工においては、沈埋函は仮置場で二次艤装した後、沈設地点まで曳航する。沈設方法はタワーポンツーン方式を採用。バラストタンクに海水を注水し、ウインチタワーからの遠隔操作で所定位置に沈埋函を着底させ、引寄せジャッキで既設の沈埋函に引寄せて、水圧接合により接合。
函底コンクリート工は、沈埋函沈設後に、基礎砕石と沈埋函函底との空隙50cmに水中コンクリートを充填して、基礎との一体化を図る。充填材の強度は現地盤程度のものを使用する。
埋戻し工は、函底コンクリート打設後に、沈埋函の浮上に対する安定を確保し、落下物により函が損傷するのを防ぐのが目的。
▲トレンチ浚渫 ▲沈設港 ▲函底コンクリート工 ▲埋戻し工
6.函内工事(トンネル設備工)
バルクヘッド撤去は、2段階の工程で行う。一次撤去では小規模撤去を行い、給排気及び給電設備を既設函から新設函へ接続する。また工事用車両の通行路を確保し、その後に二次撤去によって、すべてのバルクヘッドが撤去される。
剛結合工としては、沈埋函と両立坑間、沈埋函同士を剛結合させる。接続部は、ゴムガスケットによって仮止水を行い、その後、止水鋼板と連結鋼板を取付け、コンクリートなどを打設して剛結合とする。

7.立坑
地中連続壁工としては、土留工法は施工性・経済性を考慮して、円形状の地中壁連続工法を採用する。また、止水対策として、島尻泥岩層(dl.-60.0m)まで根入れすることによって、止水を確保する。
内部掘削工としては、地中連続壁の構築後に、その内部を掘削する。掘削はd.l.-20.4mまで行う。円形の地中連続壁は、偏土圧が作用しないよう慎重な掘削が要求される。
立坑の下部構築工事は、内部掘削が終了後に最下階部のb3f底版から順次上方へ順巻きで施工する。上部構築工では、立坑の上部は換気塔上屋として機能し、換気機、除塵機、消音機、高圧電気室などが設置される。

8.掘削部
土留形式は控え直杭式とし、ドーナツオーガー工法により施工する。なお、空域制限内での作業となるため、前面鋼管矢板は継杭式とする。
掘割部掘削工においては、土留完了後、掘割部をバックホウとグラブ浚渫船を併用し、所定の深さまで掘削する。
景観・環境への配慮について
換気塔は、陸上部に露出する唯一の構造物であることから、内部機能を十分に確保しつつも、沖縄の海の玄関口にふさわしい、シンプルかつシンボリックなデザインを採用。沖縄の気候を象徴する強い光と、爽快な海の風を印象づける外観となっている。
また、立坑の換気方式は、立坑集中排気縦流式で、トンネル内に発生する自動車排気ガスを、換気塔に設置している換気機から、除塵機に通すことにより、排気ガスに含まれる有害物質の二酸化窒素(no2)及び一酸化炭素(co)の濃度を、計画値で設定されている環境影響評価指数以下に希釈する。それを地上32mの高さとして排出することで、周辺環境への影響を軽減させる。
さらに、換気塔施設の公共性を考慮し、環境に還元しやすいエコマテリアルやリサイクル材などを積極的に導入する予定で、敷地内の緑化にも努めることで、極力環境に配慮した施工に努める。

▲沈埋函くさび接合方式
新工法の紹介
新しい継手構造〜ベローズ
那覇港の沈埋函では、途中に設けられるベローズ継手が可撓性部となり、地震時にべローズ継手自らが変形して、沈埋函の変位を吸収することにより、函本体の軸力及びモーメントを低減させる。また、施工誤差(浮遊打設による変形等)の影響を受けにくく、変位吸収能力、大変位発生時の止水性に優れている。
材質は鋼殼本体と同様に溶接構造用圧延鋼材(SM490Y)を使用し、設置位置は立坑接続部から2〜3m離れた沈埋函本体内に設置する。
沈埋函くさび接合方式
当工法は、従来の最終継手となるVブロック工法を開発・発展させた工法で、キーエレメントと呼ばれるくさび形の沈埋函の自重と水圧により既設沈埋函に密着させ、止水を実現させる工法。沈埋函自身が最終継手を兼ねるため、工期短縮及びコスト縮減が可能となり、他の沈埋トンネルでは見られない世界で初めての新工法だ。
旧那覇港・泊港・新港の三港の一元化で誕生 那覇港湾空港工事事務所 那覇港 沖縄の社会資本整備に貢献する企業
HOME