建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2003年9月号〉

特集・沖縄総合事務局の主な整備事業最前線

旧那覇港・泊港・新港の三港の一元化で誕生

沖縄の本土復帰から30年

那覇港湾空港工事事務所 那覇港

▲那覇港
那覇港の概要
那覇港は、離島県沖縄における生活物資の搬入を主とした流通港湾として、重要な役割を果たしている。港湾管理者は那覇港管理組合だが、その施設整備において、高度な技術を要する工事は沖縄総合事務局那覇港湾空港工事事務所が直轄事業として担当している。
那覇港は、那覇ふ頭、泊ふ頭、新港ふ頭、浦添ふ頭の4ふ頭に分れている。那覇ふ頭は九州や先島との航路の拠点、泊ふ頭は本島周辺離島との航路の拠点となっており、新港ふ頭は那覇港での取扱貿物の約70%以上を取り扱う那覇港の中心であり、関東や関西なごとの航路、北アメリカとの航路などの拠点となっている。浦添ふ頭は今後本格的に整備されるふ頭で、都市型海洋リゾート施設の整備も計画されている。
一方、これら4つのふ頭の一体化を図るため、泊大橋などのふ頭間臨港道路や、那覇港と那覇空港を結ぶ臨港道路の整備にも着手している。
那覇港の歩み
那覇港は、沖縄本島の南西端に位置し、東シナ海に面した歴史的にも沖縄唯一の要港だった。室町時代に成立した琉球王朝は、中国、朝鮮をはじめとする南方諸国との海外貿易によって栄え、県の貿易の拠点として発展して来た。当時の那覇港内の面積は約4万坪で、三重城燈台下より屈曲しながら陸地に湾入していた。s字形で三面陸地に囲まれ、西北方向に向かって開口していた。港口は非常に狭く、幅員がわずか70メートル 程度で、水深が浅く、地質はおおむね隆起珊瑚礁で、所々に岩礁が起伏しており、大型船の出入港は困難だった。
昭和年間に入ってからも、大戦までに2度の拡張工事は行われたが、第1桟橋に4,500トン級1隻と2,000トン級1隻、第2桟橋に2,000トン級2隻が接岸できる程度でしかなかった。
そして、大戦によって壊滅的な打撃を受けたが、昭和29年まで米軍によって港の各施設の再建が行われた。ところが高度成長期に入り、港の利用が活発になり、その結果として安謝地先(現在の新港ふ頭)への新たな港の建設という革新的な計画が決定し、政府の財政的援助にも後押しされて着々と整備が進み、昭和47年の復帰時点では、埋立地に建物が建ち貨物船などによる岸壁の利用も目立ちはじめた。
かくして、復帰後にはめざましい速さで港の整備が行われ、15年の間には第一線防波堤が概成し、これによって港内における航行船舶の安全性が高められ、また荷役作業も効率よく行われる様になり、港にも新たな活動が生まれるなど重要性がさらに高まってきている。
復帰20年目以降になると、コンテナ貨物も至る所に数多く積み重ねられる風景も見られ、また海洋性レクリエーションなども栄んになり、港は物流だけでなく人流の機能も期待されるようになった。
▲新港ふ頭地区パース図(国際コンテナターミナル)
▲新港ふ頭
ふ頭地区の概況
新港ふ頭は旧称安謝新港と呼ばれ、昭和40年代に旧那覇港・泊港の両港における港湾の取扱能力が限界に達したことを受けて整備が開始され、現在は東京、阪神、博多などの各定期貨物船や、外貨の大型コンテナ船など貨物を中心に利用され、平良港、石垣港の先島へも定期航路が開設されている。
将来的には、船舶の大型化や県内で展開される諸活動の活性化にともなう物流ニーズの多様化に対応しつつ、港湾荷役の安全性、効率性をより高めるための新たな港湾施設の展開や、長期的視点に立った既存施設の再開発を行い、物流基盤の充実を図る。
那覇ふ頭は、旧那覇港の一部で、15世紀に尚巴志王が琉球三山を統一して以来、日本を始め、海外諸国との貿易港として発展した。近代的な港としての整備は明治40年頃から始められ、第2次大戦前には1,500〜2,000トン級船舶4隻が係留可能となり、戦後は米軍により10,000〜20,000トン岸壁が整備された。昭和28年に、現在のふ頭部分が琉球政府に移管されて、現在の姿となった。
現在は、軽工業品、金属機械工業品などの貨物の取扱いを中心としているが、将来的には各施設の老朽化、陳腐化した岸壁の再開発を行い、周辺離島拠点として再編・整備を行う。
浦添ふ頭は、今後予想される貨物量の伸びに対応し、特に砂・砂利、セメント、雑工業品などの外貿、内貿貨物を取扱うふ頭として整備するとともに、親しまれる港づくりのために人工海浜、マリーナ、緑地、国際交流施設等を一体的に配置することで、沖縄県の国際化に貢献し、那覇市直近の海洋性リゾート空間の形成を図る。
泊ふ頭は、旧称泊港と呼ばれ、本島北部地域(山原)や久米島、座間味島、渡嘉敷島などの周辺離島との連絡港として発展し、戦後に米軍による改修を終えて、昭和29年に那覇市に移管された。現在は、陳腐化したふ頭の再開発を行っており、効率性、安全性、快適性の高い港湾空間の形成を図リ、離島定期船と大型旅客船の発着する交流の場をめざしている。
泊大橋は、那覇、泊、新港の3つのふ頭を結び、港湾取扱貨物の背後地との集散、ふ頭間の連携を円滑にするとともに、主要国道58号の混雑緩和を目的として建設された、臨港道路の一部だ。那覇港のほぼ中央にあたる泊ふ頭の入口をまたぎ、市民の親水空間としてのカラー歩道、展望バルコニー、パネル高欄を整備するとともに、パノラマの景観は県内でも名所の一つとなっている。
浦添第一防波堤は、外海からの荒波をさえぎり、港内の静穏を保ち、安全な船舶の航行や港湾荷役を行うための施設で、防波堤支端部は水深-30m以上と大水深となっていることから、現行の構造形式では経済的に不利となること及び、潜水作業の困難性等総合的判断から、より経済的、合理的な新しい構造形式が検討され、消波ブロック被覆上部斜面堤(斜面部スリットタイプ)に決定されている。しかし、現状では確立された設計手法がないことから、波力等の現地観測を行い、模型実験等各種の検討結果を踏まえつつ今後の手法改善を行う予定である。
▲コンテナ専用岸壁
コンテナ専用岸壁
コンテナ化の進展により、那覇港におけるコンテナ貨物量も年々増加している。特に近年は、海運の世界的傾向である船舶の大型化や、輸送コストの削減など、多様化する物流ニーズに応えるため、コンテナ貨物に対応した港湾施設を備えた県内初のコンテナ専用岸壁(-13m)を新港ふ頭地区に建設し、平成9年度より1バースを供用開始している。
那覇港をとりまく自然条件
那覇港の気候は、暖かい黒潮の影響を受け、海洋性の亜熱帯気候に属している。平均気温は真冬で16〜18度、年平均気温は22度で鹿児島よリ約5度も高く、湿度はおおむね70%を越える。また、東南アジア季節風帯にあり、冬は北よりの季節風が通り抜ける。雨量は、年平均2,000mm程度で、台風の常襲地帯であり、年間に平均4つの台風が接近する。とりわけ、地理的な位置から発達期にある強大な台風がよく襲来する。
那覇港における波浪は、台風及び冬期季節風によるものが特に厳しくなる。また、地盤は、基盤となる島尻層の上にサンゴの破片とシルトが混じった軟弱な地盤も見られる。
港湾構造物に着生するサンゴ
沖縄を取り巻く海の美しい景観や豊かな生産資源を生み出しているのは、サンゴ群落で、那覇港内においても色とりどりのサンゴが自然着生し、観光にも一役買っている。港湾の整備は時としてこの自然資源の一部を減少させつつ行わざるを得ない状況にあり、一時は消滅も危惧されたが、環境保全に努めたことで、現在すべての防波堤に設置している消波ブロックにサンゴが自然着生し着実に回復している。
那覇港臨港道路空港線 沈埋工法による海底トンネル工事
那覇港湾空港工事事務所 沈埋トンネル
沖縄の社会資本整備に貢献する企業
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