建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年10月号〉

祝・竣工 上ノ国ダム 特集

3年連続で集中豪雨

収穫・出漁直前の豪雨被害に農民と漁民ガックリ

上ノ国ダムが完成した上ノ国町は、平成6、7、8年に連続で集中豪雨に見舞われ、様々な被害を受けた。各年の被害状況を振り返って紹介する。

平成6年は、道南地方に押し寄せた大型の低気圧の影響で9月23日の朝から豪雨が降り続き、渡島、桧山の各町村に大きな被害を与えた。
この豪雨で、道々江差・木古内線の一部で土砂崩れが発生し、不通となった。午後3時20分に、神明と湯ノ岱地区で水かさが増し、危険になったため避難勧告が出された。避難勧告された地域は上ノ国川尻地区、中央区・中崎・大留地区、天の川・目名川沿線地区で、午後7時30分時点で定められた他設へ避難した住民は173人。
このときの住家被害は、湯ノ岱の中ノ沢川からの越水により、この地区が最も大きく、床上浸水が2棟、床下浸水が18棟となった。中央区・中崎地区では、排水路からの逆流により床下浸水が5棟。上ノ国の川尻地区でも川水が逆流し3棟と、中須田地区で1棟が被害を受けた。
前年が大冷害だったため、稲が順調に育ち、農家は刈り入れ時を心待ちにしていた矢先だったが湯ノ岱や宮越、新村地区を中心に約90haの田が水をかぶり、地元農家は肩を落とした。
また、水産業では、サケの捕獲施設など、天の川にある上ノ国漁協所有のサケ捕獲場の休憩所や、採卵所が転倒するなどの被害があった。のみならず、漁業者のサケ定置網にも被害を与え、これからが本格的なサケ漁という時期だっただけに影響は深刻だ。
この他上ノ国と湯ノ岱を結ぶ道々江差・木古内線で、湯ノ岱の砂利道付近が土砂崩れとなったほか、三ヵ所で水をかぶり、交通止めになった。このため、木古内のタクシー2台と貨物車1台の乗務員ら9人が立ち往生し、警察を通して救助を求める事態も発生。約3時間後には、全員が自力で脱出して事なきを得た。

JR江差線も不通となった。湯ノ岱地区の線路の土台が数カ所にわたってえぐられ、復旧に時間がかかった。JR海峡線も不通になり、親子レクリエーションで出かけていた早川小学校の子どもたちが帰宅できなくなり、青森での宿泊を余儀なくされた。
湯ノ岱や宮越地区を中心とした町道や林道にも被害があり、神明地区の橋が崩壊した。同地区の水道の取水施設も破壊し、21世帯が断水したため、給水車が出動した。
平成7年は、各地の月間降水量が千軒で608mm、石崎で342mm、江差で447mm、豊田で340mmを記録した。8月20日、28日の二度にわたる記録的な豪雨は、津軽海峡に居座った前線沿いに、相次いで低気圧が通過したことによるもので、前年の集中豪雨に引き続いて、各地に大きな爪痕を残した。
町内の河川の水量がなかなか退かず、また地盤も緩んでいたため、急傾料地や崖地などは、特に警戒を要した。
20日の被害状況は、町内各所で床上浸水、床下浸水、土砂崩れなどの被害が続発した。特に、石崎地区を中心に34戸が床上・床下浸水した。石崎地区は、石崎川の記録的な増水により、石崎イゲ沢川が満水状態となり、川水が排水溝を逆流。イゲ沢川河口付近の家屋7戸が床上・床下浸水の被害に見舞われた。中央区でも、排水不良で公営住宅15戸が冠水したり、床下浸水の被害が出た。
JR江差線は木古内−湯ノ岱間で土砂が流出したため、列車がストップ。幹線道路である国道228号でも、がけ崩れなどが各所で発生し、上ノ国町・松前町界の願掛沢付近で土砂崩れが発生し、一時通行止めとなった。
また夷王山・八幡野地区に大量に降った雨水が、町道八幡野一号線や国道228号に流出し、八幡野一号線の道路が一部決壊したほか、原歌・大澗地区の国道の法面が崩れ、一時通行止めとなった。このため、大澗地区住民に避難勧告が出された。
さらに夕方から降り出した大雨で、目名川に溢水の恐れが生じ、目名川周辺、中央区周辺の住民に避難勧告が出された。
最終的な被害は、床上浸水9戸、床下浸水25戸、農作物被害20.7ha、河川被害9ヶ所、道路被害8ヶ所、林道被害13ヶ所となった。

28日には、海岸部を中心に住家一部破損が3戸、床上・床下浸水は70戸にも及んだ。
この日は、20日の豪雨に続いて台風7号から変化した温帯低気圧の影響で、27日夜から28日未明にかけて、再び大雨となった。このため、町内各所で床上浸水、床下浸水、土砂崩れ、道路決壊などの被害が続出し、20日の記録を上回った。
相次ぐ大雨によって、小砂子地区の町道小砂子市街線沿いの急傾料地の法面崩壊、路肩欠損などにより、住宅1戸が一部破損、床下浸水1戸の被害が発生したほか、小砂子簡易水道の導水管、配水管も破損するなど大きな被害が出た。急傾料地の多い汐吹地区でも、土砂崩れにより一部破損した住宅が2戸、床上浸水3戸、床下浸水2戸の被害が発生。また石崎川も再び記録的な増水で石崎イゲ沢川、寺ノ沢川付近の住家16戸が床上浸水、42戸が床下浸水の被害に見舞われ、小砂子から木ノ子地区にかけて相次いで避難勧告が出された。
道道石崎松前線は、各所で道路決壊が発生。町道早川線も、早川四号橋が小砂子川の濁流で破損し、通行不能となった。
この結果、9月1日時点での被害状況は一部破損住家3戸、床上浸水20戸、床下浸水50戸、農作物被害32.32ha、河川被害9ヶ所、道路被害25ヶ所、橋梁被害3ヶ所、崖崩れ13ヶ所に上った。
8年は、8月23日早朝に、活発な前線を伴う低気圧の影響で道南地方を中心に強い雨が降り、6年の9月、7年の8月に続いて海岸部を中心として、各地で大きな被害をもたらした。
23日午前零時から9時までの総雨量は、石崎で157mm、江差町で125mm、松前町千軒で83mmを記録し、とくに石崎では午前7時から午前8時までの一時間に82mmの激しい雨が降った。いわばバケツを引っ繰り返したような勢いである。
当時は、奥尻町に深い爪痕を残した北海道南西沖地震の直後であり、また松前沖や渡島大島周辺を震源地とする地震などによって地盤が緩んでいたので、特に急傾料地や崖地、中小河川の近くは、かなり危険な状態にあった。
23日の豪雨により、町内各所で土砂崩れ、河川の氾濫、床上浸水、床下浸水などの被害が続出した。国道228号も土砂崩れや冠水が各所で発生、羽根差、扇石、大澗など数箇所で道路が寸断され、一時通行止めになった。
また、道道石崎松前線も二股橋六号橋間(5.5km)で土砂崩れが発生し、通行止めに。町道小砂子市街線でも、石崎側2ヶ所で土砂崩れが発生し、小砂子地区は数時間にわたって孤立状態になった。

急な斜面が海に迫る海岸線の各地区では、大量の土砂や泥水が汐吹寺ノ沢川、滝ノ沢川などの中小の河川や排水溝に溢れて国道228号下の住宅地に迫った。町道汐吹扇石線、扇石・木ノ子線の道路が大量に水を含んだ土砂で埋まり、床上浸水、床下浸水の被害に見舞われたほか、崖崩れなどが頻発した。
また、前年8月に続き、早川中学校体育館の裏が崩壊して土砂が体育館内に流入し、使用不能となったほか、滝沢小、上ノ国中、早川中の三校が臨時休校した。上ノ国高では2時間、早川小は午前中に授業が打ち切られた。
河川の氾濫も相次ぎ、小安在川、岡ノ沢川、孫八沢川、イチイノ沢川などの流域の田畑が冠水。農作物に大きな被害をもたらした。小砂子、石崎、木ノ子、寅ノ沢の各水道施設でも、取水池が目詰まりして、一時断水したため、一部給水が行われた。
9月2日時点での被害状況は、一部破損住家2戸、床上浸水2戸、床下浸水43戸、農作物被害28.13ha、河川被害22ヶ所、道路被害22ヶ所、崖崩れ11ヶ所などとなっており、被害総額は3億4,000万円に上った。

上ノ国町長 工藤 昇
「上ノ国ダム竣工に寄せて」
上ノ国町に初めての湖が誕生しました。
湖は本町を流れる目名川に建設された総貯水量373万トンの上ノ国ダム竣工によって誕生したものです。
本町の目名川は、中流域からその流れを地下に隠し、再び途中から流れが出現する伏流川として知られ、サケ・マスの孵化養殖事業のほか、下流域では田畑の耕作に必要欠くことのできない水源として重要な役割を担って参りましたが、一方では、急流河川であることから、洪水被害が絶えず、また、渇水期には作物の生育に大きな影響を及ぼし、農家の皆さんは水の確保に毎年悩んできました。
こうした背景のほか、隣町の江差町では、市街地の拡充等に伴い毎年夏場の水道用水に不足を来し、本町からの分水によって、切り抜けている状況にありました。
この状況を打破し、本町と江差町の住民皆さんの生活の安定を図るとともに、隣町との絆をより深く強めることを期して、上ノ国ダムは洪水調整、灌漑用水と水道用水確保等の供給を目的とする多目的ダムとして構想され、昭和55年に予備調査を開始し、昭和60年には実施計画調査を開始、平成元年度建設事業に着手、いま22年余にわたる工期を経て上ノ国ダムは、竣工の時を迎えました。
町としても今後、展望台や駐車場、休み場など、周辺整備を進めたいと考えています。
ダムは、生活や産業の可能性を大きく広げるとともに、自然の中で静かにたたずむ湖は地域の人々に「ゆとり」と「癒し」の空間を提供することとなるでしょう。
皆さんも一度家族で訪ねてみませんか。
流域の洪水や水不足の不安を解消3月に最高水位97.90メートルに到達
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