建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2006年9月号〉

interview

大工業都市・名古屋を周回し交通渋滞緩和に貢献する名古屋環状2号線

掘割区間における裏型枠工法や鋼管矢板単独壁逆巻き工法の採用でコストダウン

中日本高速道路梶@中部地区 名古屋工事事務所 所長 野口 英正氏

野口 英正 のぐち・ひでまさ
昭和58年4月日本道路公団 入社
平成12年7月本社 保全企画課 課長代理
平成15年7月中部支社 企画調査課 課長
平成17年9月現職
中日本高速道路(株)中部地区名古屋工事事務所は、名古屋環状2号線東部・東南部の整備を行っており、市街地での施工であることから、コスト削減対策はもとより、住民対応などにおいても施工現場では様々に工夫している。同事務所で総指揮をとる野口英正所長に、施工状況や施工技術などについて語ってもらった。

――事務所の事業・業務についてお聞きしたい
 野口
現在、施工を行っているのは、名古屋環状2号線東部・東南部区間の高針ジャンクションから名古屋南ジャンクションまでの12.7qを担当しています。それ以外に3ヶ所のジャンクションを担当しており、清洲ジャンクションは、環状線の北西側に位置する名古屋高速清洲線と接続するジャンクションで名古屋高速の開通に合わせてフルジャンクションになります。
南側に位置する東海ジャンクションは、名古屋高速東海線と伊勢湾岸道路を接続するジャンクションです。また、東名高速道路と愛知万博開催に合わせ開通した名古屋瀬戸道路を接続している日進ジャンクションは、市内方向へのランプを整備します。
――工事の進捗状況は
 野口
3箇所のジャンクションの状況ですが、清洲ジャンクションは名古屋高速道路清洲線の開通に合わせて施工する予定で、舗装と施設工事が残っており、約80%の進捗率です。日進ジャンクションの市内方向は、愛知県が名古屋瀬戸道路の用地買収に着手したばかりでまだ着工しておりません。名古屋高速東海線と接続する東海ジャンクションは、今年度から着工する予定です。
▲植田インターチェンジ付近
▲有松インターチェンジ付近
▲鳴海インターチェンジ付近
――名古屋高速道路と接続する箇所が多いのですね
 野口
名古屋高速道路は、すでに南北と東西に1本ずつあり、環状線がその交差点を囲むような形となっています。東西の路線は南北の路線に比べ交通量が比較的少なく余裕がありますが、南北の路線はセントレア(中部国際空港)や名古屋港と市内を結んでいるため、非常に交通量が多くなっています。そのために南北にもう一本の名古屋高速清洲線・東海線を整備する計画になっています。
これに合わせて、東名阪自動車道と接続する清洲ジャンクションを、伊勢湾岸自動車道と接続する東海ジャンクションを整備します。
次に、名古屋環状2号線東部・東南部区間の計画ですが、縦断図を見ると、地形が起伏のある丘陵地帯であり、基本的に谷の部分は橋梁構造で、丘陵部分は、掘割構造で計画しています。総延長に占める橋梁構造の割合は約3割、掘割構造が約7割という構成です。高速道路4車線と、一般国道4車線の合計8車線を整備し、それの外側に環境施設帯と地先道路を整備する計画です。
工事の進捗状況は、有松インターチェンジから名古屋南ジャンクションにかけては、掘割構造や高架構造の本体工を施工しており約70%の進捗率です。植田インターチェンジの周辺でも同様の進捗状況となっています。 それ以外の区間については、ほぼ全線において準備工が完了し、掘割区間では土留め工の施工を、橋梁区間では基礎工の施工をしており進捗率としては約10%です。全線では、約25%の進捗があり今年度中には土留め工、基礎工を完了し進捗率を35%にする計画です。開通は22年度を目指しています。
――周辺の道路網の整備状況は
 野口
高針ジャンクションから植田インターチェンジの南に位置する県道名古屋岡崎線までの2.5kmは、すでに一般国道302号が開通していますが、名古屋岡崎線から名古屋南ジャンクションにかけての10.2kmは、高速道路と同時整備する計画です。
▲仮設遮音壁
――施工はどのような手順で進められていますか
 野口
工事の工程は、準備工として安全仮囲いを設置して工事用道路を作り、その後に、橋梁部の場合は基礎を施工してから橋台や橋脚を構築します。そして、上部工を架け、最後に環境施設帯や遮音壁の整備をします。 掘割部では、同様に準備工を施工した後、柱列式連続地中壁工法による土留めを施工し掘削を行ないます。掘削が完了した後、本体の鉄筋コンクリート構造物を構築し、最後に環境施設帯や遮音壁を整備します。
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――都市部での施工となると、十分な環境対策も必要ですね
 野口
市街地を通るので、環境対策としては、高機能舗装や、遮音壁の設置はもちろんのこと、それ以外にも掘割構造では開口部があるので、音が地上に漏れないよう特殊吸音ルーバーを設置します。そのほか、高架構造では、一般国道302号の走行音が橋の裏側で反射してしまうため、それを防ぐ裏面吸音板を設置します。
また、工事中も様々な配慮をしており、工事箇所の周辺には安全仮囲い設置や、低騒音・低振動型の大型施工機械の使用、散水車による埃対策も行っています。
また、将来の遮音壁を先行して設置し、工事中の騒音対策を行なっています。
この様に工事による周辺地域への影響を最小限に抑える他、万一に備えて着工前後に家屋調査や電波障害、井戸枯れなどに関する調査も行なっています。
また、工事説明会を地区単位で開催していますが、タイムリーに住民の方々に地区の工事状況や計画をお知らせするため「工事ニュース」を工事の進捗にあわせてその都度周辺地域に配布しています。できるだけ住民の方々に分かり易いようイラスト入りで表示しています。また、この沿線で4ヶ所の事業pr館を常設しており、将来の完成予想の模型や事業説明パネルを展示しています。1箇所当り1年間に約1,000人の方々にお越しいただいており、事業の理解のために有効に機能していると思います。
この他、「ぐるり」と題した名古屋環状2号線東部・東南部に関する情報冊子を定期的に作成し、新聞の折り込みで周辺の地域に配布しています。全区間の工事の状況・計画が分かる内容になっています。
▲「工事ニュース」と「ぐるり」
――工事コスト削減について、どのように取り組んでいるのでしょうか。
 野口
名古屋環状2号線東部・東南部は約7割が掘割構造であり、事業費の大きなウエイトを占めるため、掘割構造においてコスト削減対策の検討を重点的に行ないました。その結果、土留め工法として裏型枠工法と鋼管矢板単独壁逆巻き工法を採用することにしました。
いままでの在来工法では、構造物の構築に必要な型枠の施工に足場が必要となるため、構造物から約2m離れた外側に柱列式連続地中壁を設置します。
裏型わく工法では、柱列式連続地中壁をコンクリート構造物の側面に接する位置に施工し、外側の型枠を柱列式連続地中壁が兼ねることにより、在来工法に比較して、余分に掘削する必要がなくなり、型枠の施工面積も縮小することができます。
また、インターチェンジ部では、分合流のランプ分の幅員が標準部と比べ広くなるため、h鋼を使用する柱列式連続地中壁の代わりに剛性の高い鋼管矢板を土留め工として採用し、鋼管矢板を側壁本体としてそのまま使用する設計としました。
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――すべてをコンクリートで覆ってしまうのではなく、土留めに使用した鋼管をそのまま本体構造物の一部として利用するという発想ですね
 野口
そうです。インターチェンジ部では、幅員が広くなるため、切り梁やそれを支える中間杭が多く必要となりますが、鋼管矢板単独壁逆巻き工法では、構造物の頂版部を先に施工するので、これが切り梁の代わりになり、裏型枠工法より経済的になります。頂版部の施工後に掘削機械や作業員は、その下に入ってさらに底版部まで掘り下げていくことになります。
――頂版部を先に作るわけですね
 野口
そうです。一般的には、一番下の底版コンクリートを打ってから側壁を打ち、最後に頂版を作るのですが、施工順序を逆にするという発想です。標準部では、裏型枠工法を基本に採用し、インターチェンジ部では鋼管矢板単独壁逆巻き工法を採用することが、コスト削減の大きな柱の一つになっています。
――最近の交通事情と地域の将来展望について伺いたい
 野口
施工区間の地域情勢を見ると、沿道地域である天白区と緑区は、市街化が進んでおり、人口増加率が過去10年間で名古屋市全体では約3%増ですが、これらの地域は約10%増加しており、車の保有台数もそれを反映して非常に伸びています。さらに、名古屋港の貨物量の増大、セントレアの開港、伊勢湾岸道路の全通により名古屋圏南部地域から市内への流出入が増加しており、地域の交通状況はかなり渋滞が発生しています。
名古屋環状2号線東部・東南部や清洲ジャンクション、東海ジャンクションが完成すれば、名古屋都市圏への通過交通が低減され渋滞緩和や沿道の環境改善、また、セントレア・名古屋港へのアクセス改善に大きく寄与するものと考えており、一日も早い完成を目指したいと思います。

名古屋環状2号線の整備に貢献する精鋭企業群
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