〈建設グラフ1997年7月号〉

寄稿

水産食糧基地としての漁港の整備

■図−1 追直漁港(浮体式係船岸)

●浮体式係船岸の特徴
・PCコンクリートと鋼製フレームを合成したPCハイブリット構造です。
・係留の鋼管杭が波や風、流れなどによる揺れを制御します。
・連絡橋を取り付けた突堤方式となっており、本体の一部に蓄養水面が付加されています。
・浮体式構造であるため漁船のデッキと係船岸の高さが同じで漁船からの荷下ろしなどの作業が容易になります。
・蓄養施設の底板が昇降式になっているため、蓄養カゴ等の扱いが容易です。

■図-2 サロマ湖漁港(アイスブーム)

●アイスブームの特徴
・アイスブームは湖内の航路に設置しています。
・サロマ湖内・外の海水交流を妨げないため、杭とワイヤーで構成されています。
・流速の遅い区域はワイヤー、速い区域はネットワイヤーを張り、氷厚2.0m以上の氷盤を制御します。
・冬季間は杭と杭の間にワイヤーおよびネットワイヤーを張り流氷の流入を防止します。
・夏季間はワイヤーを外し漁船の出入りを確保しています。

 ■図-3-1 抜海漁港(蓄養施設)

●蓄養施設
蓄養施設とは、近年需要が増加しつつある活魚の安定供給と漁価の安定を図るため、市場に出荷する前に一時的に漁港内の水面で活魚を蓄養するための施設です。
抜海漁港においては、カレイ類、ヒラメ、ソイ、カジカ、タコ、ナマコ、ホッキ、ウニ類を対象とした24,000m2の水面を平成2年度より整備中です。

■図-3-2 防波堤標準断面図


〈特 徴〉

・外側を消波ブロックによる傾斜堤、内側にスリットケイソン堤を配し、従来の単一構造形式を組み合わせた新しい試みの海水交換二重防波堤構造を採用した。
・二重防波堤方式を取り入れることで透過率が大きくとれ、しかも、冬期波浪に対しても蓄養施設水面を許容波高以下に納めることができる構造である。
・外側の傾斜堤に芯壁(方塊)を設置することで、伝達波高の低減および漂砂流入の防止を同時に満足できる構造である。また、芯壁高(r=-2.0m)は水温が上昇した際(図3-2参照)でも、港外とほぼ同程度の水温に保つことが期待できる。
・漂砂は傾斜堤で大部分が防止でき、透過した場合でも二重防波堤間の比較的静穏域で沈殿を促進させ、蓄養施設水面への流入防止の効果であると考えられる。また、この二重防波堤間に堆積した砂は、作業船による維持浚渫によって容易に取り除くことが可能である。
・入射波のエネルギーの大部分を外側の傾斜堤で吸収するため、従来の単一構造と比較して、スリットケーソン堤背後の噴流が小さく見積もられ、生簀・篭に影響を及ぼすことはほとんど無いものと考えられる。

 ■図-4 寿都漁港(水産資源増殖型構造物)

表-1

新海洋秩序対応 自然調和対応 防災対応 水産食糧基地対応
新たな海洋秩序(200海里制定)に対応した拠点漁港 水産生物の生態系を保全、いわゆる水産協調対応の漁港 地震、津波災害などを防ぎ、かつ災害時対応の漁港 水産食糧の確保及び水産物供給対応の漁港
熊石漁港(3種)
青苗漁港(3種)
福島漁港(3種)
砂原漁港(3種)
追直漁港(3種)
羅臼漁港(4種) etc
様似漁港(3種)
江良漁港(3種)
福島漁港(3種)
元地漁港(4種)
寿都漁港(3種) etc
青苗漁港(3種)
福島漁港(3種)
砂原漁港(3種) etc
追直漁港(3種)
サロマ湖漁港(4種)
抜海漁港(4種) etc

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