interview

羽田沖合展開で新着陸山手線なみ3分間隔に

港湾整備は技術改革と再開発が不断のテーマ

運輸省第二港湾建設局長  川嶋康宏氏

――羽田空港の沖合展開事業の整備状況について伺いたい
川嶋
いま急ピッチで新しいC滑走路の工事を進めています。今年夏までにハード部分を仕上げ、慣熟飛行を経て、来春には供用開始の予定です。ビッグバード(ターミナルビル)の前と後に滑走路が揃うわけです。その後、平成11年までに新しいB滑走路を整備する段取りになっています。昭和59年に第1期工事が始まり、現時点でおおむね全体計画の3分の2が出来つつあります。こうして沖合展開事業が進み、羽田空港の利用客は年間1億を超すと予想されています。
また、10年度末には京浜急行も乗り入れる予定になっています。離着陸回数も飛躍的に増大します。現在の年間21万回が新C滑走路の供用開始によって23万回になり、最終的には25万5千回まで増えます。風向きにもよりますが計算上は最大3分間隔の離発着が可能になります。
本年度から第7次空港整備5か年計画がスタートしましたが、地方空港の整備が比較的順調に進んでいるわりには、大都市圏の空港整備が遅れています。実際、羽田空港も発着枠の制限があり、現状では頭打ちの状態です。

――沖合展開事業の今後の課題については、どのように考えていますか
川嶋
平成9年の新C滑走路、11年の新B滑走路の供用開始に向けて、予定どおり完成させることが最大の課題です。ほとんどの国内路線がここに入ってきますので、25万5千回の期待に応えたいと思っています。

――ところで首都圏第3空港が話題になっていますが
川嶋
第3空港については航空局でいろいろと検討されていますが、基本的には海上空港の方向性となっています。東京湾の中か外かは別として、海の上となれば私たちが管轄している範囲になりますので、協力していくつもりです。
東京湾の横浜側や千葉側など、それぞれ関係自治体の思い入れはあるようですが、現在は構想・調査の段階です。いずれにしろ海上空港の方向付けで検討するということです。

――空港所在地の大田区は空港とのアクセスを気にしているようで、京浜急行のJR蒲田駅までの延長を希望していますが、その可能性は
川嶋
空港整備事業は基本的に空港の敷地内と外とで完全に分けており、敷地内のアクセス基盤、例えば京浜急行が乗り入れるトンネルの駆体工事は公共事業費で整備しますが、空港の外側は京浜急行で整備されるので、電鉄会社の考え方次第というより他はないですね。


――茨城県常陸那珂港の事業展開はどのような状況ですか
川嶋
昨年6月、運輸省が『大交流時代を支える港湾』という長期構想を立てました。いま、アジアの中でシンガポール、香港、釜山などは日本の港より取扱い高が増大しています。また、国内をみても苫小牧、秋田、新潟、仙台などのように国際航路を持ち、地域から直接海外と交流するケースが増えています。
運輸省の長期構想は、そうした現状を踏まえ、直接海外と交流し国際競争力をつける港を整備する方向性を明確にしているのです。国際的なハブポート(拠点港湾)と言って、香港やシンガポールに負けないくらいの、大型船が入港できる港、中枢的な国際港湾と称していますが、これは三大湾にプラス北部九州の4か所の配置を考えています。
常陸那珂港については、これらを支える中核国際港湾と位置付けています。世界で最も大きな船も来るが、ハブポートほどまでは入港しない。中枢と中核の違いをラフに言えば、中枢は大型船の入港がデイリーに近いのに対して、中核はウイクリーかせめて週2回の頻度になるものと思います。
この中核国際港湾は全国で8か所程度の配置を想定しています。北海道では、苫小牧か石狩湾新港、そして仙台、新潟か富山、常陸那珂、清水、広島、南九州、沖縄などです。いずれもハブポートを支え、なおかつ世界と結び付いている港ですね。
そのほかに、重要港湾の中から直接海外と交流できる拠点港湾として函館、小樽、酒田、八戸など全国20か所程度を考えています。

――大型船の接岸に対応できる港の水深はどのぐらいになりますか
川嶋
コンテナ埠頭としては水深15mがメルクマールになっています。これまでパナマ運河を通過できる船の最大をパナマックス型と呼んでいましたが、その水深は14mでした。
しかし、最近はオーバーパナマックスと言って、水深が15m、船の幅もかつての30数mが40m程度になっています。これは、コンテナを横に16列積めるスペースなのです。個数(20フィートコンテナ換算)にすると5千から6千個のコンテナを運ぶわけです。そうした大型船が全体の船腹量の2割を占めるまでになっています。

――そうなると、どのくらいのバースが必要になりますか
川嶋
2010年を目標とした東京湾港湾計画の基本構想では、東京湾、水深15mのバースを20バース程度を想定していますが、これに対して常陸那珂港は2バース程度のレベルで配置します。今年3月に、2010年を目標とする港湾計画が了承されたので、これに沿って整備事業を推進していきます。
常陸那珂港は地理的条件も良く、東京湾に入らなくとも、外側から陸路で回せるし、北関東方面の貨物を直接集めて運べるというメリットがあります。計画では完成時にコンテナ貨物で年間1,300万トン推計しています。

――それは単に増大する需要に対応するということでしょうか、それとも政策的に国際港湾を整備するということなのでしょうか
川嶋
半々といえますね。例えば、東京湾で取り扱うコンテナ需要は2倍になると予測されています。したがって世界的な趨勢になっているオーバーパナマックス型に対応できなければ、シンガポールあたりでわざわざ日本向けに積み換えをしなければならずこのため、1日、2日のロスが生じます。ひとつのコンテナに数億円相当の商品が入っているわけですから、産業界の経済的負担は相当なものです。


――宮城県内の港湾整備については
川嶋
宮城県では、塩釜に新しい14mのコンテナバースを計画しています。現在は掘り込み港湾に水深12mのバースしかありませんので、その前面に8年度から工事に着手します。仙台は外国貿易に対応した港としての整備を進めていくのが最大の課題です。石巻では外港整備を推進しています。

――港湾の整備はよく際限がないといわれますね
川嶋
結局、海上輸送における技術革新の問題があるわけです。例えば、神戸港には21バースがあり、災害で全部倒壊したといわれますが、その中で12mのコンテナ埠頭は既に空きバースになっていたのです。横浜でも空きバースが生じています。つまり12mで3万トン程度の船ではビジネスにならないため、5万トン、6万トンのようなオーバーパナマックスになってきているわけです。それに合わせて技術革新に追い付いていかなければならないので、残った空きバースには再開発が必要となるわけです。
これから、東京湾の大井埠頭で13m、8バースを15m、7バースに造り替えます。ですから、技術革新に追い付きながら、既存施設の再開発によって地域の活性化につなげることが大切です。その点、大井埠頭は既存バースの有効活用で機能強化を図るモデルケースになるものと思っています。

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