建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2003年3月号〉

interview

特集・早期整備に期待 一般国道1号 第二京阪道路

緑立つ道の先に関西の明日を見る

構想から30年 いよいよ供用開始へ

国土交通省近畿地方整備局 浪速国道事務所 八木茂樹 所長

八木 茂樹 やぎ・しげき
昭和 35年 10月 10日 昭和 生まれ、大阪府出身
昭和 61年 3月 東京大学大学院卒
昭和 61年 4月 1日 日本道路公団審議室技師
昭和 61年 7月 1日 日本道路公団札幌建設局札幌工事事務所
平成 元年 4月 1日 日本道路公団企画調査部企画課(道路局有料道路課実務研修)
平成 2年 4月 1日 日本道路公団東京第一建設局建設第一部企画調査課
平成 3年 8月 1日 日本道路公団東京第一建設局計画部計画第一課
平成 6年 11月 1日 日本道路公団東京第一建設局横浜工事事務所調査課長
平成 8年 11月 1日 日本道路公団東京第一建設局建設第一部企画調整課長代理
平成 11年 2月 1日 日本道路公団静岡建設局静岡工事事務所藤枝工事区工事長
平成 12年 5月 16日 建設省道路局高速国道課長補佐(併)国道課長補佐
平成 13年 1月 6日 国土交通省道路局国道課長補佐
平成 14年 4月 1日 近畿地方整備局浪速国道工事事務所長
関西は、大阪を中心に京都、奈良といった古都や、工業都市・神戸など歴史と個性ある地域が軒を接しているが、地形的な理由からそれぞれが孤立し、各々が不況に沈み込んでいる。そうした孤立と不況打開に向けて、大きな期待が寄せられているのが一般国道1号第二京阪道路で、「緑立つ道」と命名された幹線道路だ。構想からおよそ30年という歳月を経て、いよいよ今春に供用開始を待つ段階となった。この緑立つ道が関西圏にもたらす未来は何かを、特集する。
――関西の道路事情は
八木
関西は、経済圏が京都、神戸、大阪に分かれて、それぞれ独立しています。それぞれが独立して、それぞれの特徴や独自性が育まれてきました。京都は京都であって大阪ではなく、神戸は神戸であって、やはり大阪ではない。交通においても、大阪と京都の間には大山崎があり、地形的な制約となっています。さらに周辺には、奈良もありますが、これも生駒の山に囲まれて、やはり独立しています。この点が、平野である関東とは大きく異なるところです。
そうして、地形的にも地域的にも独立した性格が、それぞれ育まれてきたわけですが、一方では、自然環境が地域間交流を阻害してきました。したがって、地域間の交通量は多いのですが、交通網としては非常に弱いのです。大阪と神戸などは、海岸沿いのルートが結ばれていますが、それも背後に山が迫っているので、逆にルートはこれしか無いというわけです。もしもこうした状況で、またも大地震が発生すれば、ルートは絶たれてしまいます。
近年は、大阪に元気がないと言われて久しいわけですが、それを打開するためには、やはり周辺都市との連携を高め、往来を容易にするよう交通網の整備が必要です。大阪周辺の地域でも、どうすれば人が集まりやすくなるか、あるいはそれぞれの町の連携を良くできるかを必死に考えています。
そこで、湾岸沿いの環状道路を強化することが計画されたわけです。そして、いずれは淡路島も含めて、大阪湾環状道路を構築しようという構想もあります。すでに、明石までは繋がりましたが、それ以外ではまだ繋がっていません。
一方、内陸側では、播磨から第二名神を通って大きな環状道路を整備していくことになりました。それが一般国道1号第二京阪道路です。この道を、「緑立つ道」と名付けています。これによって人や物の流動性が良くなり、さらには知恵の流動性も良くなります。
――関西に新しい動脈ができるわけですね
八木
大阪は、43号線の公害訴訟もありましたが、これは高度成長期の時に造られたものでした。第二京阪道路は世紀が代わって、21世紀に造る道路ですから、43号線の反省も踏まえて、計画当初から環境に配慮した構造になっています。自動車の交通機能としては、自動車専用道路が6車線で、両側の一般道路は2車線から4車線という規模になります。
それ以外にも、環境施設帯を両脇に約20mずつ設けて、そこに地域のサービス道路や自転車や歩行者のための歩道を設けます。何しろ、高速道路のない地域に造るわけですから、地域にとっては異質な印象を受けるでしょう。そのイメージを緩和するために、環境施設帯を、最初から確保した計画というのは、おそらく近畿では初めてのケースではないかと思います。20世紀の道路づくりには、それがありませんでした。
――高架だけでなく、半地下の構造になるところもあるのですか
八木
半地下の部分もあります。そのため、丘陵地帯も通るので、道路自体はあまり高低差を設けることはできませんが、なるべく元の地形を損なわない構造にする計画です。
――21世紀の日本の道路整備における見本になりますね
八木
そうであれば良いと、思っています。大阪というのは、経済的に非常に発展した結果、人が集まってスクロールしてきた地域ですから、大規模の道路がなかったのです。街区も密集し、乱雑なところが多い。最初に都市計画があって広がってきた街ではなくて、人が住むようになったために、後追いでまちづくりをしてきたわけです。今日でも、まだそれに全く追いついていないところが多いのです。
そうした地域性ですから、こうした道路を新たに通して、これと併せて沿道のまちづくりを進めていければ良いと思います。そのまちづくりのために、環境施設帯を存分に活用してほしいと思います。
――国道ではありながらも、沿線の自治体が、道路管理者のような意識を持てれば理想的ですね
八木
確かに、整備・維持管理は国として行いますが、いずれはこれから地元とも話し合うつもりです。こういう性格の道路ですから、地元自治体で管理していただければと思う気持ちもありますね。
車両の通行機能ばかりではなく、この道路がまちづくりの核、軸線になれば良い思います。例えば、地下スペースに共同溝や、地下河川を整備することも考えられます。何しろ、大阪の門真周辺は、古くは蓮根畑だったのです。それほどの湿地帯でしたから、今日でも雨が降れば、かなりオーバーフローとなるところがあるのです。それを解消するためにも地下河川その他の都市施設などを収納するなど、車を通すだけではなく、まちづくりの軸線となるように整備しているわけです。
――これだけの大規模事業となれば、実現にまでこぎつけるのは大変だったのでは
八木
そうですね、最初の都市計画はこの事務所ができた昭和43年頃のことです。その頃はまだ、環境施設帯のスペースなど、十分に見込んではいなかったのです。
その後、都市計画を変更した結果、現在のようなシステムを構築して、このような構造に直したのです。その間、半分とはいえ、ようやく開通できるところまでこぎつけました。
地元で計画説明をしても、43号線の訴訟の経験から「第二の43号が出来あがってしまうのではないか」と、結構心配されました。図面で「そうではなく、こういう道路なんだ」と説明しても、実物を見ないと、なかなか納得いただけないことがかなりありましたね。
――工事の進捗状況は
八木
工事自体は、いよいよ最後の詰めの段階です。正確に言えば、今春の供用開始を予定しています。3月16日から23日にかけては、管内で「世界水フォーラム」が開催される予定で、その他にもいろいろとイベントがあるものですから、間に合わせなければなりません。

特集・早期整備に期待 一般国道1号 第二京阪道路

京都府久御山町〜大阪府枚方市間平成15年春開通
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